第二十話 その命の名は
今回二章最終話になります!
遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!!!!!!
□□□
お久しぶりですね。
命の総量について説明した時以来でしょうか。
まだ、ここを見ていたんですね。
少し、この大陸の地理について勉強しましょうか。
なんでって、私と違ってあなたこの大陸について全然知らないでしょう?
この大陸には大中様々な国が、大陸中央部にある広大な森を取り囲むように点在します。
その中でも、大国と呼ばれる国は主に5つ。
大陸北西部には、見渡す限りの砂漠に囲まれた、巨大なオアシスに寄り添う国、サ国。
大陸南西部には、古きを重んじ、魔法を拒絶した国、ラトラード。
大陸北東部には、海に隣接した水と豊穣の国、クラ。
大陸南東部には、花々が咲き乱れ、緑豊かな自然と大地の国、トーリア。
最後はあなたも知ってる国ですね。
大陸中央北部に位置する。霊峰ラコンのお膝元にある国、フリード。
余談ですが、かつてフリードでおきた戦争とは、サ国が、クラに資源を求め攻め込もうとした通り道にフリードがあった。
それだけです。
話が逸れましたね。
問題は国ではなく、大陸中央にある広大な森。
通称【入らずの森】。
ここでは約1年前に大量に新しい命が生まれてるのはご存じですよね?
さて、ここで問題。
そこで生まれた新しい命達はなんで人間を襲うんでしょうか?
――まあ、それもおそらく正解ですね。
正解なんてわからないですけど、結論として大量という言葉では表せないほどの命達は今、脇目も降らずに北上しています。
北には何があるんでしたっけ?
あなたは何者なんだって?
しつこいですね。
フリードに小説というものがあるのはご存じです?
そう。その小説に例えるなら、あなたは読者といったところでしょうか。
ああ、ほら見てください。人間たちの催しに決着がつきそうですよ。
抉れた地面。
吹き荒れる砂埃。
息を切らす二人の男。
『激しい攻防! 決勝戦に恥じない猛烈な戦いが繰り広げられているぞ!』
『お互いに疲れが見えてきましたね』
(お互い決定打に欠けますか)
「不敵っていう割には、こんなもんか?」
ヴィントは肩を揺らして呼吸をしている。
強がりもいい所である。
「不敵って自分で言ってないんですけどね」
なぜ不敵と呼ばれるようになったのか、魔物が大陸からいなくなってすぐに「1年後にフリードの強い人集めてトーナメントやるから」と軽く国王が宣言した日以降、ジョーと手合わせをしていたが、あの英雄のジョーが1回も勝てないという情報だけが独り歩きした結果である。
(あんまりこれ使いたくないんですけど……私が終わらせてしまった最強はせめて私が……!!)
『フィクスから黒いモヤがあふれてきたぞぉ! あれはいったい何なんだぁ!?』
『ステラさんとの戦いの時にも出ていましたね』
「まだ魔法を隠してたのか……!」
ヴィントは目を見開く。
その翡翠の瞳に映るは、背に黒銀の翼を生やし、額から螺旋のような角が伸びる男が。
その姿はまさに半竜半人。
「もうなんでもありなんだなあの人」
鶏肉はどこか遠い目をしている。
気持ちはわかる。
「背中に翼生えてるけど、あれ今まで経験したことない場所筋肉痛になりそうだよね~」
エニは特に驚きもせず訳わからんことを抜かしよる。
気持ちはわかる。
「最初からあれ使ってればよかったんじゃないですかね」
ジョーは少しむすっとした様子で試合を見ている。
気持ちはわかる。
「突っ込んでいいのかわからないけどさ……翼生えてるところの服ってどうなってんの?」
ええっとなんだ……ほら。
まあ、気にしないで試合見ようよ。
驚くのも一瞬、すぐにヴィントは攻撃に転じる。
さすがは上級冒険者。
「風域・嵐槍」
エニを貫いた魔法がフィクスを襲う。
「竜鱗」
フィクスの肌が黒銀に光りだし、ヴィントの技をまるでそよ風でも浴びるかのように受ける。
1年前、竜の体の時は全身を覆うことができなかったが、その何倍も小さい人の体となれば話は別だ。
そのままフィクスはヴィントに肉薄する。
「くっ」
ヴィントはとっさに翼を模した風を背に纏い、空中へ飛翔する。
――が。
「……翼生やしといて飛べないは嘘だもんな」
空中にいるはずのヴィントが空を見上げる。
その先にはすでに傾き始めた日の光を一身にあびる竜人が。
「……あんた100点だよ」
ヴィントは諦めたように目を瞑る。
自分のものでは無い牙を持った風に吹き飛ばされる感覚。
何かに背中が打ち付けられる感覚。
ヴィントが覚えてるのはここまで。
さっきまでの熱気が嘘かのように会場が静まり返る。
『……はっ! 実況を生業としてる俺があまりの情報量の多さについ無言で見入っちゃったぜ』
『あの姿はいったいなんの姿なんでしょうか』
『最後の一撃が決まり、観客席からもどよめきが広がってるのを感じるぜ。そして新たなる最強がここに誕生したぞ!』
『感動の瞬間ですね♪』
『すべての試合を危なげなく勝ち進んできたヴィント・ブリーズを倒し、フリード最強に上り詰めたのは! 冒険者ギルド、ギルドマスター[不敵]フィクス・ブライトだぁぁぁ!!』
思い出したかのように観客が湧き出し、フィクスコールが鳴り響く。
フィクスは翼を生やした影響で服が破れてしまい、魔法を解くと上半身裸になっている。
「親子で上半身裸になる趣味でもあんのか?」
「僕の場合はエニさんが悪いんですけどね」
「ごめんって~」
「あの時、俺の服の襟も切られたんだ」
「ね~ヒカリちゃん! トリ君とジョー君がいじめる!」
エニがヒカリに泣きつき、ヒカリは微笑みながらエニの頭を撫でる。
そんな和やかな空気に包まれた空間はこれから起こるとある事件により、その姿を絶望の空間へと変える。
『ヴィントとフィクスの治療が終わり次第、表彰式と歌姫リートによるスペシャルステージをやるぞ! それまでみんなはこの素晴らしい戦いの余韻にでも浸っていてくれ!』
『私は準備してきますね♪』
『リートさん今日は解説ありがとな! 観客のみんなも改めて、リートさんへのお礼と優勝者への賛美を込めて大きな拍手を!』
この時、拍手を送っているメチャ・イ・イヒト陛下のもとに見張り兵からとある報告がされる。
魔物の大群がこの決戦都市シュテルクストに向かっていると。
その数は数えきれず、視界に入る地平線すべてを埋め尽くすほどの数だと。
□□□
いよいよ始まりますね。ここが時代の分岐点でしょう。
答えになってないって?
読者ってどういう意味だって?
まあ、言葉通りの意味ではありますが、良い機会ですからお話ししましょうか。
私はこの世界を管理する管理者、あるいは観測者と呼ばれるものです。
まあ、言い方を変えればこの世界を創った神様ってことですね。
そしてこの世界の誕生から永遠と言えるような時間この世界を見ています。
ドラゴンが生きていた時間なんて実はちっぽけなもんなんですよ。
しかし俯瞰でずっと世界を見ているとですね、命達の会話は聞こえど、何を考えているかわからないのです。
腹に何を抱え、何を思いその行動をとったのかまるでわからないのです。
そう考えていた時、この世界に別の世界の命が飛ばされてきました。
この時、思いついたのです。
私も命を作ってその命の主観視点を共有すれば、何を考え行動してるのかわかると。
命の総量という絶対があるから気が付かなかった盲点でしたね。
生きてる生物に関わってはいけないという神様の掟も破ってませんし、完璧ですね。
今この世界で生きている命に姿形を合わせ、知識を与え、世界に生み落としました。
最初は、その命が大陸中を歩き回ってくれればよかったんですけど、急に命を模した獣たちが大陸に溢れてしまってそれが叶うことはありませんでした。
そして、私の創った命はとある人間に拾われ、今も活動を続けています。
まあ、当の本人はそんなこと気づかないですけどね。
今じゃ名前までつけられ、[みんなの大将]って呼ばれてるみたいですけど。
私の創った命の内面しかわかりませんが、人間が何を考え行動してるかがよくわかります。
他の命達もこんなこと考えて生きてるんですかね。
とまあ、分かりましたかね?
あなたはおそらくこの世界以外にも他の様々な世界を見ていますよね。
しかも、私と違い様々な命の主観視点を見れる。
うらやましい限りです。
それがあなたを読者と呼ぶ所以ですが、そんな自由な観測者は今まで見たことないですね。
私も世界を見る読者側のつもりでしたが、あなたみたいなのがいると私は作者ってことになるんですかね。
自分が生み出した命……もうこの世界に則ってノアと呼びましょうか。
私はノアを主人公として最近のこの世界を見てきましたが、いろいろな命の主観視点を見られるあなたからは別の人物が主人公だったりするんですかね。
まあ、お互い何者か置いておいて、せっかくここにいるんですから一緒にこの世界の行く末を見ましょうよ。
これは命の物語ですよ。
トリフィムのあだ名を地の文でまで使うことによってノア視点を強調してました。
実はノアだけ見た目の説明とかしてないのも、あくまでノアの主観視点だからです。
ジョーや他の人物の心の声などは読者である、あなた視点です。
作者的にはノアが主人公の物語。読者的にはジョーが主人公の物語です。
あなたは他の世界も見てますよねって言葉はこの作品ではなくて、別の作品も読んでるよね?ってことです。こいつ!読者に直接語り掛けてくるぞ!!!
次回から最終章「螺旋の時代」が始まります。
もう少しお付き合いいただければ幸いです。
命の総量なんてわけわからん設定にしたのいまだに後悔してる。
あらすじの命の物語の伏線も回収できたよな?




