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最強を殺したドラゴンを倒したいと思います  作者: 加加阿 葵
第二章 最強の称号、暗雲の予兆
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第十七話 力の差

 タロットカードのデスに殺されるねん


 更新です。


 


 闘技場に吹く一陣の風。

 砕け、粉々になった氷。

 地に伏す女王。

 沈黙。


『な、な、なんということだぁ! まさに瞬殺。二回戦第一試合を制したのはヴィントだぁ!』

『強すぎるの一言です』


「今の風……95点」


 スルヨの実況を皮切りに、思い出したかのように歓声が沸き上がる。

 

「あれ絶対勝てなくない?」

「ヴィントの前にエニはサブマスとだろ」

「トリ君、サブマスの弱点教えてよ」

「ジョー、サブマスの弱点知ってるか?」

「ノアさん知ってます?」

「……エニ頑張って来いよ」

「誰も知らないのか~」


 エニは頬を膨らませながら、小走りで入場ゲートに向かっていく。

 エニが入場すると大歓声が巻き起こる。

 人気者だなぁエニは。


「どうせ勝つだろうね」

「いざとなれば秘密兵器出すって言ってましたよ」

「いざとなる場面来んのか?」


『さあ! 対するは、一回戦の矛盾対決を制した[断絶剣]セリク・フォンだぁ!』


「一回戦で疲れてるんだ、お手柔らかに頼むよ」


 セリクはぼさぼさの髪を掻きながら、二コパと笑顔を見せる。


「や~だよ」


 エニは、セリクに向かって下まぶたを指で引き下げ舌を出す。


「まったく。これが英雄様かよ」


 呆れてたようにセリクは腰の二刀を抜き構える。

 

『両者準備は良いかぁ!? それじゃあ行くぞ!』


『試合開始ィ!』


 試合開始と同時にセリクが魔法を詠唱する。


『開始早々、王を護る盾を打ち破った大剣が現れたぞぉ!』

『早期決着を狙ってるんでしょうか』


「穿て」


 ハチャメチャな大きさの大剣がエニへ一直線に飛んでいく。

 初見であれば防ごうと考えただろう。しかし、絶対の盾を打ち破った剣を1度見ているエニの取るべき行動は1つだ。これがシードの特権と言えるだろう。


「もう見たよ、それ」


 エニは大きく横に飛び大剣を避ける。

 当然、セリクもエニが避けることは予想し、魔法を放ったと同時にエニに向かって走り出している。

 いや、避けさせたというべきか。

 一度見せた技を使うことによってエニの取るべき選択を狭めたのだ。

 

 ――しかし相手は英雄の1人なのだ。


「……油断したかな、こりゃ」


 走り出していたセリクの足に荊が巻き付いている。

 人は攻撃を仕掛ける時が一番無防備になるのだ。


「動くと痛いよ?」


 荊は次第にセリクの全身を包むように成長していく。

 腰ぐらいまで荊が伸びてきたところで、セリクは両手に握っていた剣を手放し、魔力による腕力強化をして力ずくで荊を引きちぎる。


「わあ、大胆~」

「おっさんにもプライドがあるんだ。そう簡単に負けてたまるかよ」


 セリクは手放した剣を見る。

 すでに剣に荊が巻き付きその姿は見えない。

 荊を千切り剣を回収することはできるだろう。それまで[森の魔女]がのんびり待ってくれていればの話だが。


(拾ってる暇はないな)


 思考するセリクにエニは追い打ちをかける。


「グロウアップ。魔食花ブレア!」


 人よりも大きい中央に口のある花が複数現れる。

 セリクの死角にも魔食花が現れているが、試合終了までセリクがそれに気づくことはなかった。

 

 根が足となり、セリクに向かって歩き出す。

 セリクは身体能力を上げ向かってくる花を迎え撃とうとしたが……。

 またしてもセリクの足には荊が巻き付いている。


「何度やっても無駄だぞ!」


 それを、引きちぎろうと荊に手を伸ばそうとしたところで、魔食花により持たれた己の剣がセリクの首筋に刃を立てる。


「ははっ、なんでもありかよその花は。降参だ」


 一対一という闘技場のシステムが故に死角への注意がおろそかになる。

 死角に現れた魔食花が、セリクの剣を拾い上げ攻撃したのだ。


 プライドでは埋まらない力の差がセリクとエニの間には存在した。


『決着ぅ! 準決勝へコマを進めたのは[森の魔女]エニ・クラシスだぁ!』

『やはり一回戦で魔法を見られていたのが効きましたかね』


「さっすが英雄さんだなぁ」


 セリクは返してもらった剣を腰に収めると陽気な声を出す。


「一回戦であの魔法見てなかったら避けようと思わなかったよ~」


「どうだかな。どっちにしても勝てなったと思うね。さあ、負けちまったから帰って仕事でもしますかね」


「ギルマスの試合見てったら良いのに」


「お、じゃあそうするわ。次の試合も頑張れよ魔女さん」


 セリクはひらひらと手を振りゲートに戻っていく。

 

 その背中には哀愁が漂っている。


 セリクを見送りエニは振り返り、セリクの魔法によって抉れた地面を見る。


 (あの大剣の威力やっばいね。当たったら普通に死ぬくない?)


『さあ、さっそく次の試合へ行きたいところだが、地面がとんでもなく抉れているので会場直す時間を取るぞ! 観客のみんなは今のうちに休憩してくれ!』


 エニが【慈愛の恩寵】による治療を終え控室に戻る。


「お疲れ様です」

「うん、ありがと~」

「よく勝てたな」

「相性が良かったかもね~ノア君は?」

「もう入場ゲートに向かいましたよ」

「次ノア君の試合だもんね」

「相手は何してくるかわからないけど、大将も普通に勝つだろ」

 


 予選で[星詠み]ステラと当たった人は後に語る。


 恐れるべきは暗い夜ではない、明るい夜だと。

 

 そして、命乞いはそれが来るまでに3回言えと。

 

 

 英雄たちは何も知らない。

 [星詠み]の実力を。



 ヴィントとアイシーの戦闘シーン考えるのめんどくさくなったわけではなくて、瞬殺を表現したかったんです。

 

 セリクあの魔法の大剣あたったらどうするんだろ……


 次話はノア対ステラ。ジョー対フィクス


 お楽しみ~


 感想評価お待ちしておるよ

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