第十六話 決死の作戦 灰燼に帰す
工業ゲーはなんでこんなにおもろいのか
執筆してる時間なんてまるでないな!
来たる12月1日はドラクエモンスターズでるしな
更新です。
ジョーが教えてくれた。
光ってめちゃくちゃ速いものらしい。
ジョーのいた世界を一瞬で飛び回れる程速いものだと。
闘技場に一筋の光が駆け抜ける。
「先手必勝!」
『試合開始直後、ノアがグレイブに突撃していったぞぉ!』
『すごい速さです』
教えてもらったとはいえ、光速まで出せてるわけではないが、それでも目で追うのもやっとの速度になっている。
ノアはグレイブに殴りかかる。
セリクがリーリエを殴ったときと同じく、身体能力強化による腕力の強化である。
試合開始直後の攻撃に反応が遅れ、グレイブは胸の前でとっさに腕を交差させて、ノアの拳を防ぐ。
グレイブの腕がミシミシと悲鳴を上げる。
「くっ!」
しかし、ここでグレイブの魔法が発動される。
『グレイブに殴りかかったノアが壁まで吹き飛ばされてしまったぞ!』
『いったい何が起きたのでしょうか』
「あだっ!」
身体能力を上げているノアにダメージはないが、一番恐れていた状況になってしまった。
グレイブが口を開く。
「頭が高い」
ノアの体が重くなる。
身体能力強化の魔法が無ければ、地面に叩きつけられていただろう。
(動けなくはないけど、やばいな)
ノアはついさっき控室でジョーが話してたことを思いだす。
「グレイブさんの重力の魔法は、人を地面に叩きつけ石畳を割るほどの威力があります。距離を取られて一方的に魔法を使われたらまず勝てないでしょう。魔法を使用される前に先手必勝で決めましょう」
(こうなった場合ってどうするんですか!? ジョー先生!)
「あ、ノア君まずってない?」
「ああなったらどうすんだジョー?」
「え? 僕が聞きたいんですけど」
控室からノアの試合を見ている英雄たちはすでに帰ってきたノアを慰める準備を始めていた。
『ノアの動きが鈍くなってるぞぉ!』
『とても強力な魔法ですね』
『ここでノアが光で弓を作り出したぞぉ!』
ノアは体がきしむような重力下で無理やり弓を引き絞り、グレイブに放つ。
不規則、されど規則的に数本の光の筋がグレイブへ向かう。
グレイブは焦ることもなく新たに魔法を発動する。
「吸い込め」
グレイブの頭上に黒い球体が出現する。
球体に光の矢を吸い込まれていく。
光の矢だけではなく、砕けた床の破片やノアの体をも引き寄せる。
(うわ、なんだ? 引っ張られるっ!)
当然、グレイ本人は吸い込まれない。
術者本人が吸い込まれてたら世話ないもんな!!
(? ……体が軽くなった?)
体を引き寄せられながらノアはとある結論に至る。
「なるほど、魔力量かそんな器用なことができないのかは知らないけど、同時に使うことはできないんだな!」
ノアは光の軌跡を残し、グレイブに近づく。
「シャインメイク。憧憬のおn……おげっ!」
『おおっと! グレイブに突撃していったノアが地面に叩きつけられたぞ!』
『何とか立ち上がりましたね』
『また光の矢をグレイブに放ったぞぉ!』
「学ばないな英雄。吸い込め」
再び現れた黒い球体が、またしても矢を吸い込む。
――ここだな。
ノアは引き寄せられる力に逆らうことなく、空中に身を投げる。
「!? ……何考えてんだ!」
黒い球体へ吸い込まれそうになるノアを見て、グレイブはすぐに魔法を解除する。
「そこに吸い込まれたらどうなるかわかんないけど、殺し禁止だからな」
すでにグレイブの近くまで迫ったノアは吸い込まれる勢いのまま、右手に光の斧を生成し、グレイブに振りかぶる。
天を貫く光の柱。
それは逃れ得ぬ鉄槌。
『決着ぅ! 一回戦第三試合を制したのは[みんなの大将]ノアだぁ!』
『見てるこっちもヒヤッとする試合でした』
俺の二つ名やっぱりダサくね!?
「あんた、イかれてるな」
グレイブが立ち上がりノアに近づいてくる。
「そこまでしないと勝てなかったんだよ。そんなに強いなら冒険者やればいいのに」
「……もう魔物はいないだろ? 英雄さん」
「ふふっ、それもそうだね」
『三回戦の影響で会場がボコボコなので一旦会場の整備のために軽く休憩をとるぞ! 来たる四回戦に向けて心の準備しとけよ!』
『楽しみです♪』
ノアが【慈愛の恩寵】による回復を終え、控室に戻ると愉快な仲間が駆け寄ってくる。
「全く、大将は無茶するな」
「あれしか勝つ方法無かったんだよ、そもそも身体能力強化なければ立てもしなかった」
「最初なんで殴ったノア君が吹き飛ばされたの~?」
「触れた対象か、自分の近くの人の重力の向きを横にしたんじゃないですかね?」
「多分そうかな気づいたら壁で普通に焦ったよ。先手必勝決まらなかった時の対処法なんて考えてなったから……あれ? ヒカリさんは?」
「神様ならさすがにスタッフに怒られて観客席に行ったぞ」
「やっぱり怒られたかぁ」
ノアはパンと手を叩き話題を変える。
「さっ、次は鶏肉の試合だね」
「いったれ~」
「師匠をボコってきちゃってください」
「鶏肉ならいけるだろ、ちゃちゃっと倒して来い」
鶏肉に対して仲間たちは激励を送る。
まあ、他人事だから適当ではあるけど。
「お前らなあ……あと俺トリフィムな」
久しぶりに名前訂正されたわ。
鶏肉に激励が届いたかは不明だが、トボトボと入場ゲートに歩いていく鶏肉を見るに多分届いていない。拗ねてる犬みたいなってる。
相手は優勝候補だ。そうなる気持ちもわからんでもない。
まあ、鶏肉が勝てないなら多分俺ら誰も勝てないんだよな。
『さあ! お待たせしました! 一回戦第四試合を始めるぞぉ!』
『待ってました♪』
『さあ選手の入場だぁ!』
『最初に入場したのは、今大会で最も熱い漢! 【ファイアードミニオン】トリフィム・グランバトンだぁ!』
トリフィムはバンダナをきつく縛り、襟を正す。
その瞳は一点を見据え、堂々たる入場である。
『さあ、さあ! 来たぞ大本命! フリードの冒険者ギルドマスター、フィクス・ブライトの入場だぁ!』
『ものすごい歓声です』
『優勝候補のこの男にトリフィムがどこまで食らいついていけるか! 観客の皆さんは瞬き禁止だからな!』
かつてはドラゴンとして立ちはだかった男。
それを知る者はノアたちと国王陛下しかいない。
それが今回はドラゴンではなく、一人の魔法使いとして、優勝候補として、鶏肉の前に立ちはだかる。
会場は完全にフィクス色に染まっているが、鶏肉も当然負ける気など無い。
「よろしくお願いしますね。トリフィムさん」
「仲間に勝って来いって言われてるんだ、勝たせてもらうぜ」
『会場も試合はまだかと今にも爆発しそうだぁ!』
『私も早く見たいです♪』
『じゃあ、さっそく始めるぞぉ! 一回戦第四試合』
『試合開始ィ!』
「ファイアーボール・ソルダート」
開始直後トリフィムが火の玉を大量に生成し、弧を描くようにフィクスに放つ。
『トリフィムが動いたぞぉ!』
『ものすごい数の火の玉がフィクスさんに向かっていきます』
「毎度のことながらものすごい数ですね」
「まだまだ、ファイアーボール」
弧を描くようにフィクスに向かうファイアーボール・ソルダート。
それに加えて、直線的にフィクスに向かう通常のファイアーボール。
総数およそ1000個。
この常人ではありえない魔法の数を、鶏肉は平気な顔で繰り出す。
「これは……弟子の魔法でも使わせてもらいますか」
フィクスの目の前に、千の手を持つ巨大な石像が生成され、迫りくる火の玉をその手で弾く。
「ジョーの魔法、ギルマス普通に使ってるな」
「使えるの知らなかったんですけど……」
「トリ君がんば~」
控室から試合を見る英雄たちは実にのんきなもんだ。
『あの数の火の玉を全て弾き落してしまったぞ!』
『でも、石像の方も崩れてしまいましたね』
『トリフィムが動いたぞ!』
「ファイヤートルネード」
フィクスの周りに火の玉が生成される。
それがフィクスを取り囲むように回りだす。
「みてみて! あの魔法初めて見たよ?」
「トリさんも隠してた魔法あったんですね」
「鶏肉の魔力量あっての技だな」
火の玉の渦の中、冷静に状況を分析するフィクス。
「生かさず殺さず、動きを封じたわけですか。ただこれだとあなたも近づけないのは?」
フィクスを取り囲む渦を炎を身に纏った熱き男が突き抜けてくる。
「!?」
フィクスはとっさに鶏肉の足元から岩の柱を出し、鶏肉を空中へ突き上げる。
『トリフィムが空中に投げ出されたぞ!』
『それにしても、彼はこれだけの魔法を同時に使って魔力切れを起こさないんでしょうか?』
そしてフィクスは、空中に岩の拳を生成し鶏肉に殴りかかる。
その日の服装を厚着にするか否かを決めるのは魔法使いである。
闘技場の温度が上昇する。
岩の拳が鶏肉に触れるとドロリと溶け出し、それが垂れた地面はジュっと音を立てる。
『すごい熱気だぁ!』
『魔法のバリアがあるとはいえ少し暑いですね』
『地面に着地したトリフィムがそのままフィクスに突撃していったぞ!』
フィクスは岩の壁を複数枚重ねて鶏肉の突進を防ごうとするが、鶏肉が触れるとすべて溶け、壁としての役割を成すことはない。
(これほどとは……)
「はあ、はあ……今の俺はめっちゃ熱いぜ?」
「そうみたいですね……」
フィクスが岩で槍を生成したり、岩の塊を放つがまるで通用しない。
『フィクスが様々な攻撃を仕掛けるが、全く意味を成さないぞ!』
『今のトリフィムさんは、まさに無敵に見えます♪』
(奥の手を使うしかないですかね)
鶏肉は熱を帯びたままフィクスに殴りかかる――が。
視界がズルっと下にズレ、そのまま地面に倒れこむ。
鶏肉、ドラゴンとの戦い以来の魔力切れである。
『……け、決着だぁ! まさかのトリフィムの魔力切れでの戦闘不能によりこの戦いを制したのはフィクス・ブライトだぁ!』
『トリフィムさんもナイスファイトでした♪ 熱い試合を見させていただきました』
地面に倒れた鶏肉には、闘技場の雑音の喧騒も何も聞こえない。
悔しさ、不甲斐なさ、様々な感情が渦巻き鶏肉を襲う。
そんな無音の世界にフィクスの声が響く。
「立てますか?」
鶏肉は上体を起こし、無言でフィクスの手を取り立ち上がる。
俯いたまま、ポツリとつぶやく。
「全く届かなかった」
「そんなことありませんよ。トリフィムさんの魔力が切れなければ、危ない所でした」
気休めを言われても鶏肉には届かず、ただ、負けたという結果だけが鶏肉を突き刺す。
「……誰になんて言われようと、どんなにバカにされようと挫けずあなたは進み続けてきました」
「?」
語りだしたフィクスの言葉に鶏肉は耳を傾ける。
「センスが無い? 簡単な魔法しか使えない? それでもあなたの目に見える努力と成果は誰かの憧れとなり、皆への刺激になったでしょう」
フィクスは鶏肉の肩に手を置き、微笑む。
「目指される人間がそんな顔しないでください。顔を上げ観客の声を聞いてください」
鶏肉の世界に音が戻る。
「かっこよかったぞトリフィムー!」
「トリフィムめちゃくちゃ強いじゃねえか!」
「ナイスファイトだったぞトリフィム!」
フィクスは「ね?」と微笑み、ゲートに戻っていく。
その背に向かって鶏肉は叫ぶ。
「次は勝つぞ!」
フィクスは振り返ることなく、手をひらひらさせてゲートの中に消えていく。
大歓声の中、鶏肉もゲートに戻っていく。
『さあ! 次はいよいよ二回戦が始まるが、みんな安心してくれ! 一回戦勝ち上がった人たちは【慈愛の恩寵】のなんでもござれな魔法により、疲労はもちろん、魔力も回復してるから、ピンピンの状態で戦えるぞ!』
『次はどんな戦いが見られるか楽しみです』
『じゃあ、二回戦の組み合わせを確認するぞ!』
二回戦、第一試合。
アイシー・フロストハート対ヴィント・ブリーズ。
二回戦、第二試合。
セリク・フォン対エニ・クラシス。
二回戦、第三試合。
ノア対ステラ・セイルズ。
二回戦、第四試合。
フィクス・ブライト対ジョー・ベルウッド。
『組み合わせはこんな感じだ!』
『シードの選手がどんな戦いをするのか楽しみです』
『じゃあ、さっそく二回戦第一試合、選手入場だぁ!』
鶏肉を慰めようと控室に向かったヒカリは途中スタッフに見つかり、試しに「私神様なんだぞ、めちゃすご偉いんだぞ!?」と言ったらバチボコに怒られて、とぼとぼ観客席に戻っていった。
熱いの鶏肉本体だけだから、周りは熱気がすごいだけ。
サブタイトル毎回悩むよな。
サブタイトルのために一話で一試合にしようかな
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