第一章エピローグ2 一期一会を何度でも
これにて完全に一章完結になります。
第二章は構想はあるけどまだ何にも書いてないし、溜めてから出したいからしばらくSSを何本か出して、ある程度書くまでお休みです~
この話書いてて作者は自分で泣いた。
あとがきにいろいろ書いたから是非。
これは独りだった人間が独りではなくなるという
ただそれだけのストーリー
ノアたちがフリードに着いたのはドラゴンとの決着の次の日の夕方だった。
まあ、決着の後メルの森で一泊キャンプしたからだが。
疲れ果てた面々はその場で解散した。
王様に報告に行くノアとフィクスは口裏を合わせるため打ち合わせするついでに、グラリスの墓参りに行った。
トリフィムとエニはそのまま自分の家に直帰した。
かつての戦争の名残、城壁付近に建てられた見張り台の上に人影が一つ。
聞こえるのは酒場で騒いでる叫びにも似た声、道の端で歌っている白髪の女性の歌声。
終末のような夕陽が街を染め、髪を揺らす風が柔らかく頭を撫でる。
懐かしいこの感じ。死ぬことしか考えてなかったあの頃の自分を撫でてくれてる気がした。
この世界では、魔物に襲われることが普通の生活だった。
一人で外に出ちゃダメ、冒険者の邪魔をしちゃダメ、冒険者の死を悲しんじゃダメ、魔法をむやみに使ってはダメ。
魔物に襲われないように、死なないように、日々不安に駆られながら生活しているそんな空間。
これがほんとに平穏な世界だったのだろうか。
紅く染まった空を見上げる。鳥たちが自由に飛び交い風に乗せて歌声を奏でる。
きっと平穏に生きてるんだろうな。
今ならあそこまで飛べるかもしれない。
背後からどこか懐かしい声が聞こえた。
「そんなところで背伸びしてたら落ちちゃうよ?」
ジョーは振り向き目を見開く。
そこには、ジョーをこの世界に飛ばした。
いいや、ジョーの命を救った恩人がそこにはいた。
「久しぶりだね。っていってもこっちじゃ10年くらいたってるのかな?」
ヒカリはにっこりと笑いながら首をかしげる。
「なんでここに?っていうかなんでこっち側の世界にいるんですか?」
「靖一君、話し方変わった?」
「……今はジョーって名前です。話し方変わったのはお互い様じゃないですか? あなたもそんな落ち着いた感じじゃなかったですよね」
「ふふっそうだね。あの時、ジョー君学生だったからあの話し方のほうが親しみあるかと思ったんだ。見た目はあの時と変わってないね」
「この世界に来た時若くなって、そこから10年たちましたからね。それでなんでこの世界に?」
「……ねえ、ジョー君。もう大丈夫? 飛び降りたいって思わなくなった?」
「……え?」
「私がこの世界に来たのはドラゴンのミスもあるけど、神様の掟を破ってたのがバレちゃったんだ」
「掟……?」
「生きている生物に関わってはいけない」
ジョーは無言のままヒカリを見つめる。
「実は私が見つけることができた、自殺しようとしてる人を助けてたんだ。今回ジョー君にやったみたいに異世界に飛ばしたり、元の世界に戻してあげたりってね」
「それがバレて神様じゃなくなったと?」
「ほんとは存在ごと消滅なんだけど、悪いことをしてたわけじゃないってことで、ただの人間として生活させてもらえることになったの。だから、一番最近に出会った君の所へ来たってわけ。私のミスもこの世界だしね」
ヒカリの顔から微笑みが消え、真面目な表情になる。
「ほんとは君に会うつもりはなかったんだ。あの時死んでしまいたいくらい辛いことがあったんでしょ? そんなの思い出さない方が絶対に楽しいじゃん。でも、高いところで背伸びしてる君を見かけたから声を掛けずにはいられなかった。ごめんね。嫌な事思い出したよね」
しばらくの沈黙の後、ジョーが口を開く。
「僕は、平穏な世界に飛ばしてくれとお願いしました」
「うん」
「いざ来てみれば、大陸のあちこちで戦争してるし、気がついたら魔物が襲ってくるし、おまけにめちゃくちゃ若くなってるしで大変でした」
「うん」
「それでも、地球では経験できないことや、親友と呼べるような友達もできて、充実した毎日を送れました」
ジョーが微笑む
「全部、この全部があなたに命を救ってもらったからできた事なんです。僕は、ずっとあなたにお礼が言いたかった。あなたへの感謝はあれど、あなたが謝ることなんて一つもありませんよ」
ヒカリが目を見開き、瞳に涙をためながら、ゆっくり言葉を紡ぐ。
「今日ジョー君に会って、初めて会った時とはかなり印象が違うと思った。きっともう大丈夫なんだろうな、ちゃんと生まれ変われたんだなと思った」
そこにはもう一つの太陽があった。
そんな涙も蒸発してしまいそうな柔らかい笑顔でヒカリは言った。
「ジョー君。いや、鈴木靖一君。あなたが生きるのを諦めないでいてくれて、ここにいてくれて、本当によかった……!!」
――だからこうして出会えたんだ。
「ところで……なんでジョー君はそんな奇抜な格好をしてるの?」
ジョーはフリードに帰って来てから家に帰ってない、帰り際にノアが上着を貸してくれて、パンイチに一枚上着を羽織っている状態だ。
「……触れてほしくなかったんですが」
「気になるよ」
「今日、いや昨日か。ヒカリさんが言ってたドラゴンと戦いまして……」
「ヒカリ」
「え?」
「ヒカリ」
ええ、この元神様こんなめんどい感じなんですか。
「ヒ、ヒカリが言ってたドラゴンと戦ってきたんですよ」
ヒカリはニコパと嬉しそうに笑う。
ジョーはあきれてため息をつく。
「それで、勝った?」
「勝ちはしましたけど、なんか素直に喜べない複雑な感じでした」
「すごいね。やっぱ君は主人公だ」
「仲間が強かったんですよ」
「今度紹介してね」
「ええ、必ず。ちょうどみんな集まってごはん奢ってもらえる時があるんですよ。その時に」
「やったね! ただ飯! お金の稼ぎ方わかんないし」
「そういえば、寝泊まりとかどうするんです?」
「……何も考えてない」
ジョーは俯く。
すごい表情で額に汗をにじませている。
ふーっとため息をつき、ジョーが口を開く。
「うちに来ますか?」
「そう来なくちゃ」
ヒカリは見事なサムズアップを見せる。
腹が立ってきたな。
「ドラゴンに会えますよ」
「はえ?」
「ふふっ、じゃあ帰りましょうか?」
「早く服着た方がいいよ」
「ですね」
見張り台から降り、二人はジョーの家、というかフィクスの家に向かう。
(師匠になんて説明しましょう……)
日がすっかり落ち、街灯の明かりだけを頼りに家に向かう。
そんな中ヒカリがとある疑問を口にする。
「そういえば私の力使えた?」
「ええ、禍々しい鎌出せました」
ヒカリは驚く。
「……私そんな能力持ってないけど?」
ジョーも驚く。
「え? じゃ、じゃあ僕が出せた鎌は何ですか?」
「知らないけど、この世界の魔法ってすごいね。なんでもできる」
「そんなことなくないですか?」
「鎌を出せたのに頭硬いねジョー君」
「はあ」
魔法の神髄とは『想像の具現化』である。
ジョーの死神のイメージが鎌だったためその鮮明な想像が具現化して鎌が出せたのだ。
教科書通りのことしかしてこなかったこの世界の人にはたどり着くことができない神髄である。
その夜。
ノアとの打ち合わせを終えて家に帰ったフィクスが「ガールフレンドなんてお父さん許しませんからね」と急に父親ムーブしてきて、ジョーが呆れていたのを、ヒカリは嬉しそうに眺めていた。
第二話の文と同じように書いたらエモいと思って構成寄せてみた。
これ読んだ後、二話読んでみてね。
この物語の主人公はノアではなく、ジョーです。
死神の名前をヒカリにしてみたり、グラリスに拾われたので、読者にはノアが転生者って思いこんでほしかったんですがどうでしたでしょうか?
鈴木靖一=ジョー・ベルウッド。
わお、なんて安直な……
評価感想お待ちしてます~




