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あの頃、道玄坂で  作者: ちかな
2/16

FIRST DATE

 19歳、フリーター。実家暮らしの私。

よく、大学は行かないでいいの?と、余計なお世話な質問をされるけど、大学には昔から行く気にはなれなかった。

何か好きなことの専門学校に通うのは、アリだと思っていたけれど、好きな事が多い私には、一つに絞ることができなかった。むしろ一つに絞ってしまったら自分の可能性を狭めてしまうのではないか。と、思い私はあえてフリーターという道を選んだ。

だってまだ若いのだ。何にでもなれる。

私の性格上好きな事しか続かない人間だ。

特にしたいことも、なりたいものも無いから、とりあえず大学に入っておこう。という同年代達の、未来が若干予想できてしまうような人生の選び方に私はある意味感銘を受けた。

 私は、代官山にあるワインバーで働いていた。

そこはとても面白い。

渋谷とは打って変わって、大体のお客さま達がブラックカードを持っているような場所だった。

そんな人達が日々集う場所で、私はせかせかほとんど毎日働いていた。

1日に3枚は名刺をもらった。

日々、何千万ものお金を稼いでいる人達が愚痴を吐いたり、ありえないような本当の話をお酒の力で赤裸々に話してくれるのが好きだった。

彼らは、色んな人生を見せてくれた。

大学になんかに行くより、私にはとっても勉強になる場所だった。


 こうしてバイト三昧の私はなかなか時間が割けず、出会ってから2週間後にしか約束ができなかった。

その間のLINEもアナログの彼に調子を合わせていた。

返信は遅かったが、そこがまた私の期待を上昇させた。

 やっとのこと怒濤の連勤を終え、渋谷の犬前に待ち合わせた。

昭和な気分になりたくて広末涼子の「まじで恋する5秒前」を聴きながら改札を出た。

彼からの「どこにいる〜?」の文字。

まじで恋してんだなあ。と思わんばかりの胸の高まり。

ふと前を見ると、そこには昭和の顔つきだけを残して髪を短髪にした彼がいた。

前の方が良かったな、と半ば思いながら

濃くも薄くもない顔つきを見て、でもやっぱり好みだと思った。

 これまた知る人ぞ知る外国人スタッフの元気な接客が売りの道玄坂にある居酒屋に入った。

案内されたのが、まさかのカウンター席だった。

でも助かった。

緊張と恥ずかしさで、彼のことを直視できなかったからだ。

とりあえず緊張をほぐそうと頼んだビールを一気に飲み干してしまった。

あ、やってしまったな、と思った。が、彼はそれを見て笑いながら「いいね〜」と言ってくれた。

焦った。私も、笑った。

 彼も同じ気持ちなのか。と、気づいたのは話す時に目の前のメニューの(マンゴーサワー)の文字を一点に見つめてややカタコトに話を振ってきた時の事だ。

渋い顔しているのに、意外と繊細な人。と思って、少し愛おしく思えた。

そこから軽く5杯くらいのんで、やっとお互い横を見て話せるようになったくらいで店を出た。

「どこ行こう?」と私。それを復唱する彼。

「一緒ならどこでもいいなあ」なんてあざとい言葉が出るほど自称酒豪の私にはまだお酒が足りていなかった。

「呑めればどこでもいいよー」

出したい言葉とは裏腹な、やや男気強い言葉が出てしまった。

またやってしまった。と思った。

すると彼が真顔で、「一緒にいれればなんでもいいや」と、まるで当たり前のことかのように言ってきたのだ。

「やられた」と思った。

 

 また私たちは、そこからふらふら歩いて気づいたら出会ったあのファミマの前まで来ていた。

「「とりあえずワンカンするか」」

まさかのハモリだった。

馴染みの9パーセントのチューハイを2缶買って、出会ったファミマ横の路地で乾杯した。

たむろ場所とだけあって仲間達が徐々に増えてきた。

「ワッサー」とかぶれごっこをしながら、ハンドサインを交し、やや冷やかされながらクラブに向かう仲間達を見送っていた。

私はその度、愛想笑いをして彼らの慣れたハンドサインにやや苦笑しながら彼の左腕に彫ってある大きなタトゥーに見惚れていた。




to be continued>>>!


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