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あの頃、道玄坂で  作者: ちかな
16/16

16日後

...彼との関係、何なんだろう。

セックスもする仲の良い男女の名称は、もう、ある。

皆さんご存知の通り。今考えると、英語に直したそのままだなと思う。


実のところ、そういう関係を続けられるほど私は器用な人間で無い。

都合の良いところだけ”割り切る”という行為が、自分には向いていない。


形が全てじゃ無いとは思っていたけれど、やっぱり私もまだまだ大人になりきれていない。

形にして初めて分かることもある。これは間違いではないから、やっぱり少しは形にしたい派なのである。

彼が、このままこの関係をこれからも求めるのであれば、それはまあ、そういうことだろう。

でも逆にもし彼も私と似た考えを持っているとしたら、それ以上の幸せはないのだろう。そう思うと、もういてもたってもいられなくなって、私は彼にこの関係の意味を聞いてみようと決心したのだった。


代々木公園後の居酒屋。

彼にその話を持ちかけようとしたその時だった。

「俺たち、ちょっと会いすぎだよね、最近」

彼からの思わぬ発言に困惑してしまった。


「それって、悪いことなの?」


彼は言った。

「もっと、ゆっくり進んでいきたいのかも。好きだからこそ、ゆっくりじっくり時間をかけて、君のこと知りたいんだ」と。


一見良いこと言ってるように見えて、全然良いものではない。

デート相手が言う「ゆっくり進んでいきたい」は、いわゆる脈なしに等しい、と私は捉えている。

何だかもう、これが最後な気がしてならなかった。お別れの日にピクニックするなんて。

大好きなピクニックと代々木公園にトラウマを植え付けられた気がして、何だか急に腹立たしくもなってきた。

私は、もう何も言うことができなくなっていた。


「次会う約束してたのが、半月後の俺の誕生日の次の日だよね」

「うん」


結構先のスケジュールだったけど、彼の誕生日当日の10月15日は、きっと彼の友達たちが祝うだろうから、その次の日の16日に、先約しておきます。と、彼から了承をえてスケジュールを食い込ませた日だった。


「次会うまで、ちょっと、我慢してみよう」

と彼が言った。つまり、次会うまで距離を置いてみようということだった。


さっきやっとのことで決心した私の心は見事に打ち砕かれたのであった。

もう会うことはないのかな。そう思って急にアホらしくなって私は思ってもないことを口にしてしまった。

「距離置いて、違うなと思ったらもう無理して会わなくてもいいし、連絡もしてこなくて良いから。付き合ってるわけでもないんだし。他の子と遊んだりしても良いんだからね。」

彼のどういう反応を期待していたのだろう。彼の口から出た言葉はたった二文字、「うん」だけだった。

視界が揺らいできてしまったので、軽く咳払いして拭った。それと同時に気持ちも切り替えて「友達モード」にシフトチェンジ。このシフトチェンジはあくまで自己防衛に過ぎない。

「お腹空いてない?ラーメン食べ行くけど、行く?」と誘って、可愛げのないごってり濃厚豚骨醤油の太麺をすすりに行った。

口がにんにく臭いまま、会うか会わないか分からない16日後の待ち合わせ場所などを軽く決めて別れた。


会わない間が重要、とかの話をよく聞くけれど、彼との連絡は1日に何回かするだけに減少していって最終的にほとんど連絡を取り合わないにまでなっていった。


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