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あの頃、道玄坂で  作者: ちかな
15/16

平日、昼間の代々木公園

 最近の、彼とのほぼお決まりルートはこうだ。

夜に近い夕方に集合して一軒入り、調子が乗ってきたら二軒目に入り、割とベロベロか丁度いいほろ酔いくらいでお店を出て、この後どうする?とかの前置きを省きペリカンに足を進めている。というコース。

彼となら、こんな夜を何度でも繰り返しても飽きないし、良い、なんて思っていたもののやはりお金もかかる。お酒のせいで時折感情も迷子になる。

このままだと非常によろしくないと思ったので、「真っ昼間から公園でピクニックでもしないか」なんて馬鹿な提案をしてみたら、軽々OKが出た。


二日後、平日の代々木公園の昼下がりに私達はピクニックをした。

柄にもなく映えを少しばかり意識した卵の手作りサンドウィッチと朝一に焼いたブラウニーを持参した。それには彼も大絶賛してくれて、頼んでも無いのに、何枚も写真を撮っていて無邪気だった。母直伝の卵のタルタルは私には慣れ親しんだ味だったが彼にとっては「お店レベル」だったらしい。

昼とはいえ、10月後半の代々木公園は肌寒い。それでもさすがは代々木公園。平日のお昼過ぎでもバトミントンやキャッチボール、お散歩や読書をしている人達で溢れかえっていた。その中で私達は芝生の真ん中あたりにレジャーシートを広げ、サンドウィッチを頬張っていた。

お昼、明るい、限られたシートの中での行動範囲、近い。

私の胸の鼓動が、彼に慣れてきたなと思っていた私の勘違いを気づかせてくれたようだった。

辺りはすぐに暗くなった。薄暗い中、公園の街灯たちが順に点き始める。ふと辺りを見渡すと、もう私達の他には誰もいなくなっていた。

いつまでも隣でくっついていたくて、私から「帰ろう」とは言わないでいた。

それなのに、私のお腹が声をあげた。静かな公園の中で可愛らしく鳴り響いた私の空腹を知らせるその音に、彼はクスッと笑ってから大笑いした。私も恥ずかしさのあまり笑いが込み上げて、彼と一緒に笑った。

ひとしきり笑い終えてから、「何か食べにいこっか」と言ってやっとのこと公園を出た。


そしてまた、渋谷の居酒屋に向かったのだった。



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