あの頃の私たち
彼と出会ったのは、道玄坂登りの知るひとぞ知るあのファミリーマート脇。
財布を無くして半べそかきながらさっきまでいたお店に電話をかける私に「大丈夫?」と、声をかけてくれたのがきっかけで、「彼」というか、「彼ら」と仲良くなった。
常にハイで、赤い目を擦って緑茶ハイをのんでいるような彼らには、私の何もかもを許して肯定してくれる。
そんな場所に思えた。
絶対何も大丈夫そうではないのに、「イッツオーケー」と海外かぶれをちらつかせながらヘラヘラしているのが彼らだった。でも、馬鹿なようで一番頭がいい生き方だと思った。
みんな、独自に自分の魅せ方を分かっているファッションやヘンテコな髪型をしていた。
馬鹿なようで、まさにジーニアスだ。
女とお金とお酒や葉っぱのことしか頭にない彼らのことが一瞬にして好きになった。
その中にいたのが彼だった。
「生まれてくる時代ミスったんじゃないの?」と思うほど昭和な顔つきとそこそこ伸びたロン毛を束ねていた彼は緑茶ハイを持って優しく私に微笑みかけた。
好みだった。
その日は、そのまま終電までみんなで路上でワンカンして帰った。
次の日、お酒で顔がパンパンな私がスマホに目をやった。
昭和の彼から「よければでいいんだけどLINEが知りたい」と、いつの間に交換したのかinstaのDMが届いていた。
パンパンな顔とは裏腹なお花畑の顔をした自分がさぞブサイクだっただろうと思う。
LINEを聞いてきた割には返信が1日に3回くらい行き交うぐらいの返信頻度で、これは脈なしだ。と思った。
ふてくされながら半分彼の存在を忘れかけたぐらいに、ようやく返信が来る。
でも、その内容はとても無邪気なもので返信が来るたび心躍らせた。
きっといつも仲間達とハイなんだろうと思った、そう思うともはや恋人ではなく、彼自身になりたいとまで思った。
返信、来ないな〜と数少ないLINEのトーク履歴の一番下を長押しして眺めていた。
ちょうどその時だった、彼から突然電話がかかってきて「全然返信返せなくてごめんね、俺携帯なくても生きれちゃう人間だからあんまり携帯見ないんだ。これでもあなたのために見るようにしてて、見たらすぐに返すんだけどね、
いつも遅くなっちゃてごめんね」と、特に焦った口ぶりなく言った。
やっぱり生まれてくる時代ミスったんだなあ。と思った。
そこもまた好みだった。
ようやく、 恋が 来た。
と、思った瞬間だった。
to be continued.!