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第二話 冒険者登録

〈鍛錬:ランニング10kmが完了しました。報酬として敏捷1が与えられます〉

 10km走り終えたのは、始めてからおよそ1時間後のことだった。


 持ってきていた水筒の水を飲みながらステータスを確認する。

 敏捷の値は確かに12から13へと上がっていた。

 レベルが低くて元の値が小さいとはいえ、この変化は結構大きい。


 ちょっと家から遠くに来てしまったな。

 人混みの少ない方へ走っていた関係で、家からどんどん遠ざかってしまった。


「まあいいか」

 俺はそう言いながら、ステータスの鍛錬メニューを開く。

 家まで帰るがてらまた走ってやろうという魂胆だ。こんな簡単にステータスが上がるならずっとやり続けてやる


「あれ?」

 鍛錬メニューを見てみると、ランニングの項目が灰色になっており触っても反応しなくなっていた。


〈剣の素振り1000回を開始しますか? はい/いいえ〉

 他のメニューはできるようだ。

 俺はとりあえずいいえを選択し家に帰る。



「にしても、なんで鍛錬できないんだろうか」

 家に帰ってきた俺は、そんなことを呟きながらご飯を食べる。

 いいえを選択した剣の素振りはランニングのように灰色になっていなかった。


 連続で同じ鍛錬はできないとか? それか時間経過で復活するのか……。

 とりあえずご飯を食べたら食後の運動がてら素振りをするか。




〈鍛錬:剣の素振り1000回を完了しました。報酬として技術1が与えられます〉

 途中、休憩などを挟みつつおよそ2時間ほどで完了した。



「……連続なのがダメなわけじゃないのね」

 鍛錬メニューを確認すると、素振りとランニングの二つが灰色となっていた。



「これは帰ってきてから考えるか。時間経過で戻るのかもしれないし」

 俺はひとまず『修行』について考えるのを止め、冒険者ギルドに向かう。

 腰には剣を引っ提げており、戦うことが出来る装備にしている。




「こんにちはー」

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

 冒険者ギルドに入り、受付に向かうと黒髪の美人なお姉さんが対応をしてくれる。


「冒険者登録に来ました」

 成人の儀を経て、俺はようやく冒険者として登録できるようになった。

 同じ境遇の奴は多く、俺が来た時点では受付に結構列が出来ていて待たされることになってしまった。今日はよく列に並ぶ日だ。


「かしこまりました。この書類に必要事項を記入後、実技試験となります。試験料5000ギルがかかりますが大丈夫ですか?」

 そして、受付のお姉さんも分かっていましたよ。と言うようにすぐさま登録のための書類を出して説明を始める。


「ええ、大丈夫です」

 そう返事をしてから、書類に必要事項を書いていく。


 名前・年齢・レベル・希望する役割・得意とするスキルと、冒険者のリスクを理解し同意するなど。

 この辺についてはあらかじめ知っているので、スラスラと記入していく。


「はい、書けました」

「確認します。……シュウ様ですね。希望する役割は剣士とのことですが、その他の役割はできますか?」

「いいえ、できません」

 その後もいくつかの確認を経て、話が進んでいく。


「――それでは実技試験となります。あちらの13番と書かれている部屋の中が訓練場となります。中に居る職員にこの紙を渡すと直に案内されると思います。

 ……それではシュウ様、頑張ってくださいませ」

「ありがとうございました。フィアさん」

 首から下げられている名札を見て確認した名前を言いながら、お礼を言ってその場を後にした。




「こんにちはー。冒険者登録の実技試験を受けに来ました」

 俺はそう言いながらフィアさんに渡された紙を訓練場に居た職員の人に渡す。


「わかりました。こちらへ付いてきてください」

 付いて行く。


「ガザードさん、彼が次の受験者です」

「よろしくお願いします」

 職員の人に案内された先に居たのは、いかにも近接系って感じのデカい剣を担いだ筋骨隆々の逞しい肉体を持つおっさんだった。


「おうよろしくな。まあそんな緊張すんなよ? 登録試験なんて最低限ゴブリンとかの雑魚モンスターに後れを取らないか確認する程度のもんだから。

 いつでも掛かってきな」

 別に緊張してないが。

 俺は腰に引っ提げていた剣を抜き、構える。



 ……隙が見えない。明らかにレベルが違う。

 だが、待っていても埒が明かないので距離を詰め、剣を振るう。


 ――ガキンッ


 おっさんが持っていた剣で容易く防がれてしまう。

 だが、おっさんは反撃する気がないようで、それ以上は何もない。


 くそ、打開策が全く見えねえ。ゴブリンとなら何度か戦ったことがあるが、こうも絶望的な相手じゃなかったぞ。

 本当にこれでゴブリン相手の戦闘力が見れんのか?

 そんな疑いの気持ちが芽生える。


 だがまあ、疑ったところで何も始まらない。


 俺はもう一度、おっさんに斬りかかる。


 ――ガキンッ


 結果はさきほどと同じように防がれる。


 わかっていた。俺は防がれると同時に剣を手放し、身体を屈めて殴りかかる。


 ――だが、俺の必死の奇襲はおっさんの剣を持っていない方の手で軽く止められてしまう。


 ――カランカラカラカラカランッ


 剣を落とした音が響き渡る。

 くそ。


「お前凄い攻撃的なやつだな」

「俺の負けです……」

 全く歯が立たない。そもそも勝つ必要のある試験じゃないだろうが、どう動いても勝てる気がしなかった。


「あぁん? 俺とお前で勝ち負けを決めるってなったらそりゃ俺が勝つだろうよ。これはあくまで最低限の戦闘力を見る試験だからな。

 お前の剣筋はそんな悪くなかったし、ゴブリン相手くらいなら大丈夫なんじゃねえか? おーい、この少年合格なー!」

 おっさんはそう言って職員の人に声をかける。


「ありがとうございました! 俺、これから強くなります!」

 俺は落とした剣を腰に納刀し、おっさんに礼を言った。



「――合格おめでとうございます。それでは、シュウさんの冒険者カードを発行しますね」

 職員の人に案内された先の窓口で説明を受ける。


「冒険者カードにはあなたの等級・名前・年齢が記載されています。これは持ち主の魔力を流すことでしか文字が表示されない特殊なプロテクトがかかっていますので、身分証明書としてもお使いいただけます。

 現在のシュウさんの等級はF等級です。冒険者としての等級は依頼を達成することで上がっていくので頑張ってください」

「はい、ありがとうございます」

 俺は言いながら渡された冒険者カードを受け取った。



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