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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
クルムロフ城

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第90話:一撃

 そして話は現在に戻る。

 アイが突然現れると「全員殺した」という言葉を発した。地下でという言葉の通りであれば、アイレはアズライトたちのことだと理解した。

 まさかそんな簡単にやられるとは思わないが、感情がなく淡々とした物言いが、その真意を物語っているように感じる。

 ヴェルネルは意識を失ったのか、それとも魔力がすべて無くなってしまったのか、一向に起き上がる気配がなかった。


 そしてカルムはいつになく嬉しそうな顔で、アイレに向かって声をかけた。


「ヴェルネルは死んだ。仲間も、お前たちもこれでお終いだ。だが大人しく捕まれば、”すぐ”命は取らないでやる」

「”すぐ”だと? どうせいつか殺すと言ってるようなもんだな」


 アイレは鼻で笑いながら答える。頭の中では、ヴェルネルが生きているのか、アズライトたちはどうなっているのか、そのことでいっぱいになっている。

 カルムはふたたび嬉しそうに、


「それはお前ら次第だな。大人しく捕まれば、それともここで無駄死をするか」

「捕まえて、シンドラのところに連れていくのか?」

「さあどうだろうな」


 カルムは、あえて濁した言い方をした。シンドラに口止めされているのか、レッグの言葉からも何も情報は得られていない。

 もしこの城にシンドラがいなければ、かなり無駄な時間を過ごしていることになる。それならいっそ、大人しく捕まることで、何か聞き出せるかもしれない。

 神速ディヴィーツの無茶な連続使用で、身体中がズキズキと痛む。

 目の前には、カルムと大勢の魔法使いたち、レッグとアイが睨みを利かしている。やはり、一旦引いておけば……。


 チラリと横目でフェアに視線を変える。満身創痍まんしんそういだが、その眼は死んでない。

 それはアイレと同じ、諦めない心を持った正義の眼だ。

 覚悟を決めたように、ふっと少し笑みを浮かべて、


「――あいにく俺は諦めるってことを知らないんだ。最後の最後まで、足掻かせてもらうぜ」


 ふたたび、アイレは剣を構えた。それに呼応したように、フェアも杖を構える。お互いに魔力は残り少ないが、それを感じさせないほど気力が充実している。

 カルムはどこか気に食わないといった様子で、


「バカどもが、大人しく養分になればいいものを。――アイ、レッグれ!」


 はいはい、と面倒くさそうに、レッグがアイレに飛び掛かる。段々とそのスピードも上がっていて、一対一ですらアイレも苦戦しそうな勢いだった。

 短剣で返す暇を与えられないほど、蹴りの連続攻撃を仕掛けてくる。アイレは避けるので精一杯で、その顔は焦りで歪んでいる。


「アイレ!」


 フェアが、レッグに向かって魔法を放とうと杖を構えたが、そんなことはさせないと、アイが魔法を詠唱する。

 それは長年生きてきたフェアでさえも、何の言語を話しているかわからないほど早口で、まるで呪文のようだった。


 すると、ここの柱の裏からも、アズライトたちがやられてしまった龍の化け物が現れた。低空を浮遊して、身体をくねらせている。

 巨大な蛇のようなその体躯たいくで、フェアに襲いかかる。


「な、なんなのよこいつ!?」


 突然現れたその龍に驚きながら、すぐ隣の柱に隠れるが、突進をやめずに柱は破壊されてしまう。

 ドォォンという音と共に、石が砕け散る。鋭い爪が、フェアの肩をえぐり取った。


「きゃあっ!」


 その勢いで、後方に吹き飛ぶ。カルムはその様子を眺めながら、少しだけ胸を撫で下ろした。


「どうなることかと思ったが……、どうにか間に合ったな」


 誰にも聞こえないほど小声で、どちらかというと、その視線はレッグとアイに向けられていた。


「ねぇ、余所見してる暇なんて、ないよッ!」


 レッグの攻撃は止むことがない。短剣で受けきることもできずに、アイレも手足を使って防御しているが、ガードの上からでも攻撃が痛い。

 骨がきしみ、このままでは身体が動かなくなってしまう。


 そして、フェアは……一体何が起きたんだ?


 アイレが隙を見せた瞬間、レッグは渾身の一撃をアイレの脇腹に与えた。肋骨がさらにバキバキに音を立てて折れる。

 痛みで思わず口を開く、しかし。


「負けられねえんだよ!!」


 倒れることなく、そのまま神速ディヴィーツを詠唱して、高速で移動した。重力に耐えきれず、折れた骨が身体の中で動く。

 もしあばら骨が、肺に突き刺さってしまえば呼吸が出来なくなり死んでしまう。それでも構わず、レッグの顔に一撃を入れようとした。


「な、なに!?」


 レッグは、アイレを眼で追うことはできたが、身体はついていけない。自分の顔に短剣が突き刺さるところを、ゆっくりと眺めることしかできなかった。

 だが、その決死の一撃も、カルムが指示した魔法使いたちの攻撃によって防がれてしまった。


 レッグは風魔法で吹き飛ばされると、安全圏に脱出して地面を転がった。アイレの身体はもはや神速に耐えれる状態ではない。筋肉が断裂してしまったのか、もはや痛みを感じない箇所すら出てきてしまった。


「ち、ちきしょう……」


 腕をダランとさせ、倒れているレッグを眺める。


「バカが、油断をするなとあれほど言っただろうが」

 

 カルムの悪態を余所目に、レッグはゆっくりと立ち上がる。どうやら気に食わないようで、表情は明らかに不機嫌だった。


「もういい。アイ、こいつを殺してくれ」


 何もかもやる気がなくなったかのような抜けた声で、アイに頼んだ。はいはい、と軽く返事をした感情の薄いアイは

 ふたたび早口で呪文を発した。その声はとても不思議な不協和音のように、アイレの耳に届く。キーンとした耳鳴りが響いたあと、突然に龍が現れた。


「な、なんだこいつは……」


 今までいなかったはずの龍が、身体をくねらせて動いている。こいつか……。こいつがフェアを……。


 そして勢いよく、アイレに突進してきた――


「幻覚です!」


 広場を覆いつくすような、とても大きな声が響いた。アイレにとっては少し懐かしく、それでいて頼りになる声。


「目を覚ますんじゃ! 幻影解除イリュージョン・レバー!」


 てのひらから放たれた魔法は、龍が突進する前にアイレの体を包み込んだ。すると、ふっと、その龍は視界から消え失せる。

 目を見開いて驚いているところに、


体を止めろ、氷の矢ストップ・アイス・アロー!」


 綺麗な女性の声と氷の矢が乾いた音で空気を切り裂く。その矢はレッグとアイの足元に直撃すると、氷漬けになって動きを止めた。

 アイレはすぐに顔を向けると、そこにはアズライト、インザーム、グレースが駆けつけてくれていた。


「お前たち……」


 アイが少しだけ驚いたような声を出す。感情の起伏を出すのは、これがはじめてだ。


「事前に情報をフェローさんから聞いていなければ、私たちも死ぬところでした」

「うむ、あらかじめ解除魔法を仕込んでおいてよかったわ」

「ま、あたしは最初っからわかってたけどね~」


 いつもの陽気なグレースが、今のアイレにとって安心する。


「アイさん、でしたか? あなたの魔法は、いえ幻影は大したものです。ですが、タネがわかってしまえば問題ありません」


 アズライトが、いつものように冷静な言葉で相手を威圧する。アイはまた何ごともなかったかのように、


「ふうん、そうなんだ」


 面倒臭そうに、軽く答える。レッグの表情には焦りと少しだけ恐怖がまじっている。


「お前ら……」

「貴様ら! ただで済むとおもうなよ!」


 レッグのぼやきを遮るように、カルムが魔法使いたちに指示を出す。ヴェルネルの姿は、いつの間にか消えていた。


「――黙れ!」


 いつのまにか立ち上がっていたヴェルネルが、カルムの首をはねる。血を噴き出しながら、首は地面にころころと転がる。

 自分の目で、自分の体を眺めながら、静かにそのまま息絶えた。



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