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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
ルクレツィア国

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第76話:大切な仲間たち

 オクシノスの指先から強力な酸の魔法が飛び散った。それはリンの身体を覆いかぶせるのには十分な広がりをみせ、フェアとルチルはリンを守ろうとしたが、小型の蜂の攻撃を防いでおり、一歩遅れてしまった。


 リンは反射的に身体を縮ませ悲鳴をあげながらしゃがんだ――


魔法消滅マジックディスパリショーン


 横から、聞きなれた声で魔法が詠唱された。すると、オクシノスの酸はまるで存在していなかったかのように忽然こつぜんと消滅した。


「これは――」


 フェアの視線の先には、クリアが立っていた。見慣れたその姿に安心したのもつかの間、オクシノスはぎゃあぎゃあと喚くと、レムリ達を狙っていた大勢の蜂をクリアに襲わせた。


「気色わりーな」


 その言葉と共に、二本の鞭が蛇のように鋭くうねりをあげながら蜂を切り刻んだ。細かくなった蜂は空中で分解されながら体液を垂らしながら、金切声をあげて地面に落ちた。


「クリア! それに――フェローさん!」


 クリアとフェロー、そしてその後ろから加勢をはじめた数十人がいた。そのどれもが高い魔力を有している。おそらく冒険者。


「大丈夫ですか?」


「はわわわッ。死ぬかと思いました……ッ」


 クリアがしゃがみ込んでいるリンに手を指し伸ばす。震えながらリンはその手を掴む。


「おい、虫使い。シンドラはどこにいる?」


 フェローが前に出て、皮肉まじりにオクシノスを煽る。


「な、ななななな、虫使いですって!? ワタシは遂行な魔物使テイマーいよ!!!」


「虫でもテイマーでもタイマーでもなんでもいい、てめぇに興味はねえ。シンドラはどこだ?」


「アンタみたいなブスに指図される言われはないのよォッ! 戻ってきなさい! ビーちゃんッ!」


 オクシノスは手で何度か合図をしたが、ビーちゃんは現れない。


「ビーちゃんッ! 命令よッ!」


 すると上空からグレースを襲っていた蜂が落ちてきた。全身に矢が刺さっており、ピクピクと辛うじて動いている。

 その蜂の上のしかかるように、グレースが続いて落ちてくると、手にしていた矢で頭を直接打ち抜いた。


「ったく~、ぶんぶんぶんぶん羽音が耳に障る蜂だったわ~」


 額についているビーちゃんの返り血を手の甲で拭きながら、グレースがキョロキョロを周囲を見渡す。


「あれ? なんか、場違いだった?」


「ビー――――ちゃんッ!!!!!! アナタたちはもう、全員死にな――」


 グレースがとぼけた顔をしたあと、オクシノスが叫んだ。しかし、いい終わる前に、


「叫ぶな、羽虫野郎」


 フェローが魔力を通わせた鞭で粉々にした。オクシノスは人のそれとは呼べないほど細かくなると、ぼとぼと音を立てながら地面に崩れ落ちた。

 その姿を見て、リンはクリアに抱きかかえられるように気を失った。


「ひぇ~、やるね。お姉さん」


 グレースがフェローに賛辞を送ったあと、インザームがどこか半信半疑のような声で、


「……おぬし、フェローか? フェロー・スカーレットなのか?」


 と、眉を潜めた。すると、インザームに気づいたフェローは鞭を背中に直すと、コツコツと距離を詰めて、


「お久しぶりです、インザームさん」


 と、丁寧な言葉を添えて深々とお辞儀をした。キチッとしたフェローに、フェアは唖然として、クリアは口をあんぐりとあけながら、雷に打たれたような顔をしていた。

 それから、フェローは背中で眠っているレムリに気が付いた。


「その方は……もしかしてレムリさん?――生きていたんですか!?」


「うむ、ラコブニーク王国で捕らえられておったのじゃ。何のためにかはわからんが、まだ意識が戻らぬ」


「あの野郎ども……」


 フェローは唇を噛みながら、鬼の形相で吐き捨てるようにぼやいた。言葉の違和感に気づいたインザームが、


「知っておるのか? フェロー」


「捕らえられていた理由は……わかると思います」


 どこか悲しげな表情を浮かべながら、フェローは言い切った。


「フェローさん! あっちのほうで、まだ魔物が!」


 同行していたであろう冒険者の一人がフェローを呼ぶ。


「すみません、後でまた。――クリア、ついてこい!」

「はいっ師匠! すいません、彼女を――」


 クリアはグレースにリンを預けると、颯爽さっそうと去っていった。


「インザーム、知り合いなの?」


「綺麗だねえ、気が強くて好みだな~」

「ルチルっ あの人なんかこわい、けど好きっ」


 フェアがインザームの方に顔を向ける。グレースとルチルがフェローの後ろ姿を眺めていた。


「知っておる……が」


 インザームは眉をひそめながら答えた。



 一方、アイレとアズライト。


 ルクレツィアの中心部の時計台から少し北。


「で、こいつが六龍会……誰だっけ?」

 

 アイレが鼻についた返り血を親指でふき取りながら、とぼけた顔をしている。


「ヴァンヘイム・ルーザーと名乗っていたような、私も確かではありませんね」


 アズライトの下には、ヴァンヘイム・ルーザーと名乗った男の死体が倒れていた。その周りには、ルクレツィアの兵士がアイレとアズライトの強さに驚愕している。


「あらかた片付いたな。南のほうへ向かうか」

「ええ、そうしましょう。……彼らは大丈夫でしょうか?」

「あいつらなら大丈夫だ。仲間を心配することも大事だとおもうぜ」

「そうですね……」

 

 六龍会と名乗ったアーヴィン、ヴァンヘイム・ルーザー(姿かたちも能力も不明)、恐らくメンバーだったオクシノスを倒したことがきっかけになったのか、ホムトフの兵士は魔物を残してその場から徐々に撤退していった。


「彼女はいったい?」

「まさか……」


 南の遠くで魔物を駆逐しているときに、その先でフェローが狂気の笑みを零しながら、逃げ遅れたホムトフの兵士と魔物を切り刻んでいた。

 その横には小さなクリアの姿も。


「フェローだ、クリアもいる……シェルは……見えないな」

「中々に怖そうな人ですね」


「絶対それ本人の前で言うなよ」


 アズライトの一言に、アイレが鋭く止めた。


 それから一時間も立たずに、魔物は一匹残らず駆逐され、逃げ遅れたホムトフの兵士は捕虜として捕らえられた。アイレとアズライトは正門に戻ると、フェア達と合流した。

 その後、ガルダスの指示で、街の中心である時計塔に全員が集められた。

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