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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
一年後

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第63話:転移魔法とファベルの考察

 エルフは、稀に特殊な魔法を習得できる場合がある。それは先天的な理由が関係しており、努力でどうにかなる問題ではない。血縁関係なのか

それとも生まれ持った才能なのか誰も解明はできていない。

 フォンダトゥールの予知能力、ルチルとシンドラの転移魔法がその系統にあたる。


 ルチルの転移魔法は大きく分けて三種類「あなたの元へ(アドレイション)」「飛んでいけ(オルヴォワール)」「みんなでいこう( スデプラセ)


 「あなたの元へ(アドレイション)」は、生涯契約を結んだ人物の元へ無制限に移動できるという魔法。ルチルはアズライトと契約を結んでいるので、

アズライトがルチルを呼び、ルチルがそれを了承することで転移の窓を開くことができる。


 「飛んでいけ(オルヴォワール)」は、ルチルが対象者に魔法を飛ばすことで、ある一定の距離かつ、ルチルが頭の中で正確にイメージ出る場所に強制的に飛ばすことができる。

 ダメージはないものの、一方的に戦闘不可場所(エリア)まで飛ばすことが可能。インザームをアズライトの船に飛ばしたのがこの魔法である。


 かなりの正確さが求められる上に飛ばせる距離がそこまで広くはないので、使用には危険が伴う。イメージが正確にできない場合は魔法は消費だけされ不発に終わる。


最後に「みんなでいこう( スデプラセ)」ルチルの体調で多少増減するが、数キロメートルほどの人物の魔力を感じ取り、その対象者の近くに転移窓を飛ばすことができる。これは複数名を連れて行くことが可能。また、あらかじめルチルが魔力で場所をマーキングしておけば、短い時間ではあるが、人物がいなくてもそこに戻ることもできる。


 ルチルがオストラバ王国でヴェルネルとシンドラの元に転移窓を出したとき、エルフの集落のときがこの魔法である。また、窓をくぐる人数によって消費魔力が増えるため、途中で足りなくなると、その人物は次元の闇に消えてしまう可能性があり危険を伴う。


 まとめ。

 ①アズライトの元なら、ルチルだけはどれだけ離れていても転移できる

 ➁誰かを飛ばすのは、頭で正確にイメージできる場所に限る。また、距離も数キロメートルに限る。

 ③複数名で移動する場合は、人物の魔力を感知して転移窓を出すか、予めルチルが魔力で場所をマーキングしておかないと行けない。更に距離は数キロメートルに限る。


 何度も転移魔法を出現させているシンドラは相当な魔力を有していることになる。


 これがルチルの転移魔法のすべて。それを聞いたファベルが、


「素晴らしい……魔法ですね……。世界が変わってしまうほどの能力だわ。それが魔王軍も同じであれば、外壁なんてはないかもしれませんね」


 ファベルはただ素直に感動していたが、アズライトは少し不安だった。この魔法に関しては極力使わないようにとルチルに伝えている。


 アズライトもよっぽどの時でないかぎり、ルチルを呼ぶことはない。アイレにやられそうになったときは呼んだが。


「はい、ですが――」

「わかっています。他言はしませんよ」


 アズライトの言葉を予見して遮るようにファベルが被せた。そのまま続いて、


「では、私も知っていることを教えます。インザームの話しを総合すると……とんでもない事実がわかったかもしれません」


 インザームはこちらに転移してから事の顛末をすべて話していた。レムリ討伐作戦のことも、ヴェルネルの事も。エルフの集落のことも。


「そうですね……あなた達は五百年前の種族戦争については知っていますか?」


「……いいえ、わかりません」

「ワシは少しだけ聞いたことはあるが、ほとんど知らぬ」


「そうですか、では初めから話したほうがいいですね」


 ファベルは立ち上がると少し長い間をあけてから、語りはじめた。


「五百年前、この世界は今と比べものにならないほど荒れていました。魔物や魔族は世界中に溢れ、エルフとは似て非なるダークエルフという種族がこの世界を牛耳っていたのです。今のエルフが毛嫌いされているはその時代の名残かもしれません。長い年月が経過したことで、エルフが嫌われている記憶だけが残ったかもしれないですね」


「ダークエルフ……もしや魔王軍の一人?」


 アズライトはシンドラの姿を思い出した。黒い肌をしたエルフ。


「ええ、私も知っています。シンドラはダークエルフの唯一の生き残りなのかもしれません。魔族や魔物を別の世界から召喚したのも、ダークエルフだと言われています」


「オストラバ王国での魔物が召喚されたのも……それなら説明はつきます」


「五百年前は魔法と同じぐらい”科学”なるものが発達していました。今この世界で知っている人はほとんどいないのでしょう。そして、世界を支配していたダークエルフに対抗すべきと、世界中の人が魔法と科学を掛け合わせて作られたのが、オストラバ王国に封印されていた”鉄箱マリス”です」


 ファベルは沈痛な面持ちをしていた。まるで何かを思い出すような、そんな風にも思えた。


「あれは……何ができるんですか?」


「命と魔力を吸収して、様々な魔法を使用することが可能な魔法具。エルフの命を使って死人を蘇らせたのも鉄箱マリスの能力だと思います」


「アイレ達が言っておったのと同じじゃの。つまり、ヴェルネル達はそれを使ってセーヴェルやイフリートを蘇らせた。さらにはレムリを蘇らせるつもりなのじゃな」


「……ちょっと待ってください。ヴェルネルとシンドラがオストラバ王国から”鉄箱マリス”を奪ったのはセーヴェル達を蘇らせたあとのはず。そうすると初めから鉄箱マリスを持っていた事になります」

「ええ”鉄箱マリス”は――この世界に二つ存在したのよ」


「話を戻すわ。ダークエルフを倒すため人々は力を合わせて”鉄箱マリス”を作った。そして自らの命を犠牲にして様々な魔法でダークエルフに対抗した。更にはダークエルフから命と魔力を奪いとりながら

鉄箱マリス”は凶悪な力をつけていった――そして」


 ファベルは今までで一番長い間をあけてから、


「”鉄箱マリス”は恐ろしい魔法兵器となった。その攻撃でダークエルフは絶滅に追い込まれ、世界は平和になった。けれど、残された鉄箱マリスの処遇が問題になった。

当時の科学者と呼ばれた人たちは既に戦争で亡くなっていたため、もう新しく鉄箱マリスを作ることはできなかったのよ」


「なぜ、オストラバ王国に?」


「権力者の利権や金銭が絡み、鉄箱マリスは力の強かったオストラバ王国、そして鉄箱マリスの作成に貢献したグラドノが管理することになったのよ。悪用されないように秘密は厳守された。あなたが知らないのは実は無理もないわ」


「グラドノじゃと!?」


 インザームが声を荒げた。今まで思っていたことが全て無に帰すようなそんな恐ろしい考えが過る。


「……表向きは魔族からの謎の攻撃とされているけど、恐らくグラドノ街壊滅事件は鉄箱マリスによって引き起こされた。そしてインザーム、あなたからさっき聞いたセーヴェルが爆発したという話も恐らく違う」


 ファベルは続けて


「話をまとめると……おそらく鉄箱マリスはシンドラの手によってグラドノから奪取され、その証拠隠滅のために街ごと消された」


「魔族に攻撃されたわけでも、セーヴェルが爆発したわけでもない。鉄箱マリスのせいじゃとすると……なぜヴェルネルとシンドラは一緒におる?」


鉄箱マリスは奪った命と魔力を魔法に変換させる魔法具よ。グラドノ街壊滅には相当な魔力を使った。そして、鉄箱マリスの中身は空っぽになった」


 ファベルの言葉に、アズライトもインザームも何かに気づいた。ルチルも何かを考えているようだった。ファベルは更に続けて


「そのため最強と名高いヴェルネルとレムリの命と魔力を、鉄箱マリスに吸収させようとシンドラは考えた。それを悟られないようにするため、セーヴェルを隠れ蓑として利用して、人間を騙してレムリ討伐作戦を作らせた。それなら、一石二鳥だわ」


「ファベルの言う通りじゃと、なぜシンドラはヴェルネルを助けたのじゃ? 辻褄があわんじゃろう」


「おそらく……ヴェルネルが生き残ったことで作戦を変えたんじゃないかしら。レムリを生き返らせることを餌にして、大勢の命から魔力を奪うことができる」


「シンドラは鉄箱マリスを持っているのに、なぜ危険を冒してまでオストラバの鉄箱マリスを奪ったのでしょうか?」


鉄箱マリスに対抗できるのは鉄箱マリスよ。恐らく、脅威を取り除こうとしたんじゃないのかしら? 用途を変えれば、最強の矛と盾を持っていることになるわ」


「私がオストラバで調べた資料で、一人だけグラドノ街壊滅の目撃者がいると書いていました。魔法障壁で難を逃れたらしいと記載があり、もしかすると……それがシンドラなのかもしれません」


「じゃがそうなると、レムリを生き返らせることはシンドラの本当の目的ではない……」


「ダークエルフの生き残りとして世界に復讐……それが妥当でしょうね。もしかすると、世界を破滅させるほどの魔力を蓄えようとしているのかもしれない」


 その言葉にインザーム、アズライト、ルチルは今までにないほど恐怖に震えた。

シンドラはヴェルネルにレムリを生き返らせると嘘をつき、今もなお、魔力を蓄えているとしたら……と。


「ファベルさん、もう一つ……なぜあなたはそんなにも詳しいのですか?」


 アズライトがずっと気にかけていたことを聞いた。まるですべてを見てきたかのようなファベルの言葉がずっと気になっていた。ファベルはゆっくりと口を開いて、



「わたしは――鉄箱マリスを作った内の一人なのよ」

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