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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
一年後

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第56話:無法地帯

―― 一週間前。


 フォンダトゥールが小屋のベットで横になっている。目は虚ろになっており、アイレが何度も見たことのある命が消える前の瞳。


「……フォンダトゥール」


 フェアはフォンダトゥールの手を強く握りながら声をかけていた。隣にはアイレ、グレース、ルチル、アズライト、インザームの姿も。


「寿命には勝てないね……最後は皆と一緒に、昔を思い出すようで楽しかったよ」


「何にもしてやれなくてごめんね……」


「フェア。――最後の予知が視えたよ」


「どういう……こと?」


 純粋なエルフには特殊な能力が備わっている。ルチルやシンドラの転移魔法のように人間では使えない魔法のようなもので、フォンダトゥールは

未来や過去、千里眼といった予知能力が存在する。


「彼女はどこかとても大きな国に縛られているね……これは……レムリだとおもうよ」


「レムリが!? どこにいるの!?」


「どいうことだよ!? レムリはどこにいるんだ!?」


 レムリの名前にアイレは驚いて声をあげた。


「……助けを……もとめて……る……」


「フォンダトゥール! ……フォンダトゥール!!!」

 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 時間は現在に巻き戻る。アイレ、フェア、グレース、騎士団長のコポルスカはプンクヴァを抜けようとしていた。


「いや~長かったね~。足が棒になっちゃったよ」


 グレースが手を頭の後ろに回しながら、気だるそうにタメ息を吐いた。


「油断はするなよ。ここからは何があってもおかしくない」


「ええ、アイレの言う通りだわ。東はもう……いつどこで敵が現れるかわからない」


「――もうすぐ着くぞ」


 先頭を歩いていたコポルスカがアイレ達に警告した。プンクヴァを抜けるまでは案内する義務があると、部下を入口で待機させ、一人で先頭に立って歩いている。

 その時、フェアが何かに気づいた。


「誰かくる!」


 その言葉にアイレ、グレース、コポルスカはすぐさま戦闘態勢を取った。すると小さな少女が、一生懸命に走っている。何かに追われているようにも見える。


「止まれ! 警告だ!」


 コポルスカの大きな声が洞穴に響く。


「――た――すけ――て」


 人一番耳が良いフェアがいち早く少女の言葉に気づく。その後ろには少女を追いかけている二人の男の姿が視えた。


「追われてる。おそらく人間。魔力は大したことない」


「俺がやる。――神速ディヴィーツ


 アイレはその言葉と同時に右手と左手にダンジョン武器を出現させると、コポルスカの横を物凄い速度で通った。


 少女を守るように立ち塞がると、人相が悪い男二人が剣を手に現れた。


「なんだぁ? おめぇ?」


「そいつはオレ様の奴隷だ! どきやがれ!」


 男達は茶色の布切れのようなぼろぼろの服に血がついており、剣にはまだ乾いていない血がついている。


「こんな小さな女の子を奴隷とはどういうことだ?」


「ああ? いいから黙ってそいつをよこせ!」


 少女はアイレの後ろに隠れ、涙を流して怯えている。


「その剣についてる血は誰のだ?」


「そいつの母親だ! てめぇも同じ目に――」


 男が言葉を吐き終わる前に、アイレは首の頸動脈を切り裂いた。悲鳴をあげながら血を流して膝をつく。


「――ちき――しょ」


 もう一人の男は反応してアイレに反撃しようとしたが


「遅いんだよ」


 すぐさま、もう一人の男の心臓を一撃で突き刺すと、剣を振って血をはらった。男二人が絶命をするのを確認すると、少女に手を差し伸べた。


「もう大丈夫だ。何があったか教えてもらえるか?」


 コポルスカはアイレの素早い動きと無駄のない動きに驚愕していた。


「お母さんが……わたしをまもって……ひとりで逃げて……」


「落ち着いて。もう大丈夫だから」


 追いついてきたフェアが、少女を安心させるため膝をついて目線を合わせると、頭をゆっくりと撫でた。


 少女の名前はアニー。この先にあるモジナという街に住んでいる。

 半年前に突然魔王軍が現れ、領主や権力者を一斉に殺害。その後、街は無法地帯になってしまったとのことだった。犯罪は横行し、ほとんどの市民が身の安全のために

部屋に籠ってるという。


 アニーは母親と二人暮らしだったが、食事すら満足に取れなくなった。いつしか家に押し入るように現れた男たちに奴隷として身の回りの世話をさせられていた。

 東へ逃げようと脱走を試みたが、バレてしまい母親がアニーを守って怪我しているという。


「予想通りだな。権力者達がいなくなれば法律もへったくれもない、無法地になるのは目に見えてた。ヴェルネルの奴ら、そんなこともわからないのか」


 グレースが歯を食いしばるように、ぼろぼろになった少女を気遣いながら激怒していた。アニーと自分の生い立ちが重なってみえた。


「アニーちゃん。あなたのお母さんは私たちが必ず助けてあげるわ」


「ああ、急ごう」


「待て。俺もついて行く」


 ずっと黙っていたコポルスカが口を開いた。


「どういうことだ? あんたはレグニツァに戻らないとだめだろう」


「南がどうなっているのか、俺には調べる必要がある。――それに」


 コポルスカは続けて


「そんな話しを聞いて黙って国に帰ることはできない」


「はっ。おっさん気に入ったぜ」


 コポルスカは大きな笛を吹いて部下を呼び寄せると、アニーに東へゆっくりと歩くように指示をした。すぐに使いがくるので、東の国で安心して待っていろ、と。

 それからアイレ達は急いで山を抜け、モジナという街へ向かった。


 幸いなことに街はすぐ見える場所にあった。4人は油断しないように警戒しながら城壁の近くまで来たが、門兵はおらず

なんだか不気味な雰囲気がした。


 入口から悪臭が漂い、人の気配はない。地面には物が散乱しており、時折血のようなものが地面にべったりとついている。


「ひでぇな」


「ああ。予想以上だ」


「……そこの酒場にアニーの母親がいるはずだわ」


 4人が角を曲がったとき、血だらけの男が右手に剣を持ち立っていた。髪の毛は短く、軽装の茶色と黒の布切れを着ている。背丈はアイレと同じぐらいか。


「貴様! その武器を捨てろ!」


 コポルスカが剣を構えて男に警告した。 



「何だお前たちは?」



 血だらけで振り向いた男はアイレがよく知る人物。



 この世界にきて初めての仲間。


 シェルだった。

 





 

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