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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
一年後

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第54話:一年後

「んっ――美味しいっ――」


 グレースがレグニツァ城の王の広間で、ご馳走を食べながら満面の笑顔を見せている。


「あ、ああ……そ、そうだな? フェア」


「これ……おいしいねぇっ!」


 あまりの食べっぷりにアイレは少し引いていた。横にいるフェアに視線をよこすと、苺がたっぷりと乗ったパンケーキを

シロップ山盛りにして口にクリームを付けながら食べていた。


「スゴイネキミタチ」


「いやはや、よい食べっぷりではないか!」


 レグニツァ城の領主である、レシュノがアイレ達を眺めながら嬉しそうにした。魔王軍との争いがはじまる前は

温和な性格で争いごとに向いていないと言われていたが、いざ戦争になると類まれな才能を開花させ、一年もの間、魔王軍にこの城を空け渡す事はなかった。


 しかし、各国からの支援を受けながらも、絶え間ない戦闘でもやはレグニツァが落とされるのは時間の問題と言われはじめたとき、アイレ達によって重大な危機を乗り越えることができた。


 レシュノはアイレ達をレグニツァ城に招くと、歓迎の宴を開いた。無論、レシュノとしても、ただアイレ達を喜ばせたいわけではない。


「……レシュノ様、そろそろ」


 レシュノの隣にいる、騎士団長のコポルスカが耳打ちした。 銀色に輝く重厚な甲冑に身を包み、それに負けないようなガッシリとした体格をしており、凛々しい顔つきは

それだけで強そうに見れる。歳はまだ40代と若く、長い間魔王軍を退ける一翼を担っていた。


 ヴェルネルが魔王軍を設立してから1年間の間で、世界は大きく変わった。


 ヴェルネル自ら、魔王を倒したことは偽りであり、罠にかけられ殺されたかけたという真実の言葉を発した。さらに、その出来事に関係していた全ての人物に命はないと警告した。


 また、ヴェルネルは各国に対して宣戦布告を宣言した。世界の権力者たちに対して、国と城を空け渡せと要求した。正し、素直に明け渡した国に対しては武力行為はしないとも加えた。


 無論、どの国もそれに対して反論し、ヴェルネルに対して武力で対抗しはじめた。しかし、魔族に転生したヴェルネル叱り、セーヴェル、ユーク、イフリート、シンドラ

といった強者が次々と国を落としていくのを目の当たりにすると、素直に明け渡し者、魔王軍に与する国も現れた。


 さらにヴェルネルを信奉する人間も現れはじめ、魔王軍は一年間の間にその強さを確立していった。特に東のほとんどはヴェルネルの支配下となり

レグニツァが落とされてしまえば南も危うくなると言われていた。


 しかしながら、魔王軍の中でも残虐非道で有名だったユークを倒したことで、再び東への向かう道をアイレ達が示した。


「アイレ、フェア、グレースよ。そなた達はどこの国にも属していないそうだな? 今はどこも強者を欲しておる。 私のためではない、このレグニツァのために

仕えることは考えられぬか?」


 レシュノが先ほどとは違い、真剣な表情を見せた。グレースはそれでも一心不乱に食べ続けている。


「いや。無理だ。……いてっ」


 アイレが返事をすると、フェアが、ばか! といいながら頭を小突いた。


「嬉しいお言葉ですが、私たちはある目的をもって行動しています。この街の滞在もあまり長く考えておりません」


「ふむ。目的とは?」


「申し訳ありませんが、それは話すことはできません。今この世界で信じられるのは自分達だけなのです。ですが、私たちも魔王軍を根絶したいと思っています」


「ふむ……」


 フェアの言葉にレシュノは黙らざるえなかった。魔王軍の間者によるものなのか、権力者が次々と謎の死を遂げた国は少なくはない。誰が敵か味方か、もはやわからない。

 また、アイレ達は冒険者ギルドに所属しており、その上位陣は権力者と同様の発言力を持つ。そのため、あまり強気にも出れずにいた。


「……仕方あるまいな。――お主らがこのレグニツァ国に来たのは東へ向かうためであろう?」


「……仰る通りです。差し出がましいお願いですが、プンクヴァ通過の許可をお願いします」


 アイレ達がこのレグニツァに来たのは偶然ではない、東へ向かうために通らないといけないプンクヴァという山の下を削って出来た道を通らせてもらうためだ。

今はレグニツァが管理しており、許可のないものは誰も通ることができない。レシュノはそれを理解していた。


「……まるで勇者御一行じゃの。良かろう、コポルスカ」


「はっ」


「明日の朝、彼等をプンクヴァに案内せよ」


「承知致しました」


 コポルスカはあまりアイレ達を良く思っていないのか、少し不満そうな表情を浮かべていた。


「ありがとうございます。ちょっと……グレース!」


「んぐっ、うんまぃっなぁっ……」


 いつまで立っても食べ続けるグレースにフェアは注意したが、変わらないグレースに少し嬉しくおもえた。


 それから、アイレ達は客人の部屋に案内され、一晩泊めてもらえることになった。


「ふぅー。食べた~食べた~」


「そんなに細い体にどうして……入るの?」


「確かに……」


 フェアがグレースのお腹をぽんぽんと撫でたとき、後ろからアイレが同意した。


「……なんであなたも一緒なの」


「俺に言われても……まぁ、いいじゃん。ベットも三つあるし! お! ふかふかだぜ」


 アイレはベットの感触を確かめるように座すと、ぴんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねた。


「フェアちゃんは恥ずかしがり屋だねぇ~~~」


 グレースは勢いよくベットに仰向けにダイブした。


「……グレース。あなたは東に行かなくてもいいのよ」


「……ああ。そうだな。ロック達の仇は取ったんだ。もう危険な目に遭う必要もない」


「……あたしだってわかってるよ。ユークは操られていただけで、本当の意味での仇はヴェルネルだ。二人には悪いけど、あたしはヴェルネルを殺すまで一人でも諦めないよ」


 グレースは天井を見上げながら、ロック達を思い出した。絶対に仇を討ってやると、あの日誓った。


「……もし、グレースがヴェルネルを殺したとしても俺は止めない。それだけの事をあいつはしている」


「……私は……殺せるかどうか……」


 アイレはヴェルネルを殺す覚悟で止める気持ちがあった。それだけの罪を犯し続けている。だが、フェアは最後までヴェルネルを攻めきれないでいた。


 そんな葛藤をフェアが頭の中で処理していると、グレースのいびき声が聞こえ始めた。


「グレースはほんと、肝が据わってるというかなんというか……」


「彼女の良い所ね。二人だったらずっと沈んだ旅になりそう」


「そうだな。ロックの言う通り、うるせーがいいやつだ」


 アイレは笑いながらグレースの寝顔を眺めた。


「……ねぇ、アイレ。あの事、どう思う?」


 フェアは神妙な面持ちでアイレに再び視線を変えた。


「……わかんねぇ。でも……俺もそんな気がしてたんだ。うまくいえないけど、この世界にきてからずっと感じてたんだよ。言葉にはできないけど……

それに今まで間違ったことはないんだろう?」


「……ええ。でも……まだ信じられない」



「ああ……」




「レムリがまだ生きてるだなんて」


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