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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
一年後

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第53話:再び

 アイレ達はエルフの森の集落から、そう遠くはないどこかの山の平地に転移していた。アイレがフェアを担いで地面にゆっくりと下ろした時、フェアが目を覚ました。


「……ここは?」


「」


 次にインザームが、ロックとグレースを抱えて窓から現れた。


「インザームなの!? どうして!?」


「フェア。30年ぶりかの? 全然変わっておらぬで安心したぞ」


 グレースは気を失っていた。

 フェアはインザームに気づくと泣きながら抱き着いた。


「辛い……戦いじゃったの」


 次にアズライトがフォンダトゥールを抱え、ルチルと


「ルチル、治癒魔法を急いで頼む」


「わかったっ!」


 ルチルは優先度が高いとみて、フォンダトゥールから先に治癒魔法を詠唱した。フェアは魔法攻撃が得意で治癒魔法の才能はほとんどない。


「フォンダトゥール生きていたのね……それにあなた達がアズライトとルチル……?」


 フォンダトゥールををに治癒魔法をして、峠を越したとわかったら、すぐにルチルはロックの体に手を触れたが、異変に気付いた。


「俺より先に……こいつを頼むわぁ……」


 ロックはルチルの手を掴むと、震えた手でグレースに指を指した。

 グレースがほどなくして、目を覚ますと隣に倒れているロックに気づいた。血だらけで意識を失いかけている。


「ロック……。ロック! 目を覚まして!!」


「……グレース。ロックはもう助からない。治癒魔法に耐えるだけの力が……足りないんだ」


 必死にロックの体を揺さぶっているグレースに視線を落としながら、アイレが俯いた表情を浮かべた。


「いいから! 早くしてよ!!!」


 グレースは泣きながら周囲に助けを求めた。


「……人に迷惑かけんじゃねえよ……グレース……」


「ロック!! ……大丈夫だよ。絶対に助けて……あげるから」


「……へっ。ガキの癖にいっちょ前に気を遣えるようになりやがって……」


「いやだよ。ロック。嫌だよ! ひとりぼっちはもういやだよ……」


「……アイレ、グレースを頼む。こいつはうるせーがいいやつだ。間違った方向に……進まねぇように……」


「……ああ。約束する」


「ロック! 死なないで……」


「へっ。……いい女に泣かれて死ぬ最後なんて……最高じゃねえかよ……」


――ワイズ、ミット、フルボ。お前らと一緒だと思うと悲しくねぇな……楽しかったぜ


 ロックは最後まで気丈にグレースを気遣い、息絶えた。アイレが出会った中でも、漢気溢れる便りになる男だった。


「ロック……あああああああああああああ」


 グレースはロックの胸に倒れ込み泣き叫んだ。


 アイレ達はただ眺める事しかできなかった。







 ◇ そしてエルフの森の集落の出来事から、約1年が経過した ◇ 


 あの出来事を境目に、ヴェルネルは魔王を名乗り世に姿を現した。ユーク、セーヴェル、イフリート、シンドラと共に魔王軍を設立すると

世界の平和のために国の統一を掲げ、元勇者と呼ばれたヴェルネルは残虐な魔王となり、世界を恐怖に陥れた。


 ヴェルネル達はクルムロフ城を拠点としながらも、その恐怖を確実に拡大させていた。


 しかし、まだレムリの存在は確認されていない。



 東と西の境目に存在する、レグニツァ国。


 ヴルダヴァとベレニと同じく、石造りをメインとした家が立ち並ぶこの街は

綺麗な花と美味しい食事。比較的落ち着いた天候で観光としても人気だった。


 しかし、それもヴェルネルが魔王軍を設立してから大きく変化した。


 東のクルムロフ城を拠点としている魔王軍と戦う重要な拠点として攻撃を受けるようになったレグニツァでは、戦争が絶え間なく続いていた。


 各国からの支援も受けつつも、街は疲弊しており、ついに限界を迎えようとしていた。


「な、なんだこいつ! ちきしょう!」


 レグニツァ国の兵士が大勢の魔物と戦いながら、その中心にいる男に怯えていた。


「イカれてやがる……」


「歯ごたえがないなぁッ! 弱すぎるよ。君達ッ!」


 大きな鋏で切り取った兵士達の首を嬉しそうに眺めていた。その男の横には目玉の魔物や植物の形をした魔物を無数に従えている。


「ねぇッ。もうこないのッ? よわっちィなぁ……」


 男は切断した首をまるでおもちゃのようにくるくると回し始めた。


 兵士達の怒りと怯えの入り混じった声の後ろから、フードを被った女性が静かに男に向かって弓を構えた。

 

「――最速ラピッドの二つドゥアロー


 その手から離れた矢は、目にも止まらぬ速度で二つに枝分かれすると、風を切り裂く音と共に、魔物の体を突き破った。


「んッ? なんだ?」


 男は矢の方向に視線を向けた。兵士達の体をかきわけるように、矢を放った女性とは別に二人の男女が現れた。


「いいのか?」


「私達も手伝うよ」


「いや、”あいつ”だけはあたしにやらせてくれ」


 一人の女性が鋏を持った男の前に立ちふさがった。


「なんだお前? 偉そうにッ!」


 男は鋏を構えると、慣れた手つきで首を切断するために距離をつめた。



「黙れ、ユーク。」


 女性は小さく呟くと、矢のない弓を構えてユークに向かって放った。魔法の矢は半年前とは比べ物にならないほどの魔力に満ちてユークに直撃した。


「――ちッ!!!!」


 ユークはなんとか鋏を盾して耐え凌いだが、あまりの矢の圧力に体が後方に吹き飛ばれそうになった。


「死ね」


 その隙に女性は距離を詰めると、ユークの横腹に魔法で具現化した弓を突き刺した。


「ん――ぎゃああああああああああああ」


 ユークは痛みで鋏を落とすと、地面に転がりながら横腹を抑えてのたうち回った。女性は暴れたユークを固定するかのように、足で踏むと睨みつけた。


「痛いか? ロック達はもっと痛かったぞ」


「いてええええええええええ だ、誰だよお前ッ!!! 」


 女性はユークの口に矢を押し込んだ。少しだけ喉の奥に突き刺さり、ユークは初めて自分の血を少し飲んだ。


「あがあひゃくあfしあたちあ(お前はあの時の……)」


「二度と蘇るな。糞ガキ」


 そう言いながら、ゆっくりと矢を押し込むと、ユークが絶命するまで視線を逸らさなかった。

 ユークが死んだことで、魔物が手綱が消えたように我を忘れて暴れはじめた。


 それを見ていた女性の仲間の二人がゆっくりと口を開いた。


「――神速ディヴィーツ

「――凍てつく氷《ジュリーグラス!》」


 一人が両手を広げると、手に雷と炎の武器が宿った。それから兵士達の目で追えない速度で次々と魔物を駆逐した。

 もう一人の仲間が放った魔法は一直線に蒼い光と共にその道一体を氷漬けにして、魔物を一掃した。


「な、なにもんだこいつら!?」

「化け物だ……」


 兵士達はその強さに怯えた。


「ありがとう、アイレ、フェア」


「ああ、遂にやったな。グレース」


「終わったね……」



 アイレはダンジョンの武器の二刀の短剣を自由に出し入れできるようになっていた。フェアは半年前より髪の毛が伸びており

 生前、レムリが持っていた魔法の杖を所持していた。先端にレムリアンシードの宝石が輝いている。


 グレースは七色に輝いた弓を背中に直すと、空を見上げた。



――仇を取ったよ。フルボ、グレース、ミット、ワイズ。……ロック。

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