表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
エルフの集落

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/112

第50話:己の正義

 ヴェルネルの話を聞きながら、フェアはとある疑問と共に口を開いた。


「……ヴェルネル、その話はおかしいわ。あの時生きていたとしても30年以上の前の話なのにあなたはどうして歳を取っていないの?」


「……フェア。君はインザームに転生術を行っただろう? 生来ドワーフであるインザームから魔術を感じた。僕も転生術を行ったんだよ」


「どうしてそれを!? ……もしかしてあなた!?」


「僕はもう脆弱な人間ではない。魔族になったんだよ」


「ありえない!……転生術は本来、自身の生命力を使う事で種族を強制的に変化させる禁忌魔法だわ。その代償として大いなる苦痛と……そして大幅に寿命も短くなる。人間のあなたがそんな魔法に耐えられるわけがない。

魔法は不完全で成功せずに死んでしまうはずだわ」


「ああ、フェア、君の言うとおりだ。だが、簡単な事さ。足りなければ持ってこればいい」


 ここでアイレが何かに気づいた。


「……ヴェルネル、どういう事だ!」


 ヴェルネルは、ほんの少しだけ躊躇った様に小さな間を空けてから


「他人の命を魔法で変換させる事で僕は腕や足を元通りにさせた。そして魔族に転生した事で大いなる力を手に入れたんだよ」


「……ヴェルネル、てめぇ何を言ってるのかわかってるのか?」


「他人の命……人間にはそんなに多くの魔力や生命力はない……それに大勢の人間が消えたら誰もが気づくはずよ! ヴェルネル……あなたもしかして……」


 フェアの頭で全てが結びついた。ヴェルネルとレムリの死後、他種族撲滅運動が活発化した事に。そのままフェアは続けて


「エルフの命を使って転生術を行ったのね! それなら全ての辻褄が合うわ……。他種族撲滅を裏で扇動していたのは……あなた」


「……ああ。そうだ。人間の僕が魔族になるには途方も無い大勢の犠牲が必要だった。しかし僕が生きている事がバレてしまえば命を狙われる。その為に慎重を期して多く人間を扇動してエルフやドワーフ、生命力の高い種族を優先的に奪った。

だが、レムリは……皮肉にも誰よりも強かったレムリは並の犠牲では足りないんだ。もっともっと多くの命が必要なんだ。その為には大国を相手にするほどの力がいる。ここにいるセーヴェルやユーク、そしてイフリートはその為に蘇ってもらった。清く正しいレムリを蘇らせるんだ」


 ヴェルネルの言葉にその場にいるエルフ達は怒りを露わにした。


「あなた……何て事を……」


 その場で静かに聞いていたフォンダトゥールが口を開いた。


「ヴェルネル……お前のやっている事は許されない!」


「アイレ。確かに一時的な犠牲は多くなるかもしれない。だが、世界中の人間を犠牲にするわけではない、わかってくれ。それに僕は全てが終わればこの世界の平和の為に尽くすつもりだ。その為には今君臨している王族や権力者達は必要ない。僕が魔王となってこの世界を支配する事で永遠に訪れる平和が作られる」


「俺は元の世界でレムリの死を見届けた。誰よりもお前の気持ちはわかってるつもりだ。他人の命を犠牲にしてレムリが望むわけない!」


「望んでいてもいなくても、レムリは僕が蘇らせる。正しさでは何も救えない、裏切られるだけだ。僕は二度と失敗はしないとあの出来事で誓ったんだよ」


 その時、集落を囲っていたエルフが魔法を使えなくなる結界が轟音と共に弾け飛んだ。その場にいたヴェルネル達以外の人が驚きで声をあげた。


 直後、黒い転移窓がヴェルネル達の横に開くと女性が現れたヴェルネルと共に世界に復讐を目論んでいるシンドラである。

特徴的な黒い両耳と黒いドレスの様な服を着ている。右手にはオストラバ王国の地下で手に入れた小さな鉄の箱を持っている。


「少し手こずってしまいました」


「ありがとう、シンドラ。ちょうど君の話をしていた所だ」


 シンドラと呼ばれた女性からルチルを超える魔力を感じ取り、アイレは冷や汗を流した。ロック達は震える程の恐怖を感じた。フェアは直ぐにヴェルネル達が何故ここへ来たのかを理解して構えた。


「アイレ、フェア、君達はレムリにとって大切な存在だ。出来るだけ殺したくはない。だが、ここにいるエルフ達はレムリの為に犠牲になってもらう。それにここにいる人間達もそれなりに魔力が高いようだな」


 ヴェルネルはロック達を吟味するように眺めた。結界が破られた事でエルフ達は魔法を使えるようになっていたので、それぞれが魔力を漲らせた。


「さっきから聞いてりゃ好き勝手いいやがって、要はてめぇは好きな女が殺されたから復讐がしたいんだろう。それをあたかも正論の様に言い換えてるだけだ」


 ずっと黙っていたロックがヴェルネルを見ながら激怒した。


「……黙れ―」


 ヴェルネルはそう言うとダンジョン武器を持っているアイレを超える速度で動いてフルボの腹部を帯刀してる剣を誰にも見えない速度で抜いて突き刺した。


「がぁっ――――――ロ、ロック……」

「口だけでは誰も救えないんだよ。僕は身に染みて理解している」


 フルボは血を吐きながら小さな悲鳴を上げそして死んだ。それを遠くで見ていたグレースが誰よりも早く大きな叫び声と共に魔法の矢を具現化して

ヴェルネルの頭を狙った。


「―よくも!!!!!!!!!!!」


「……魔法障壁マジックバリヤード


ヴェルネルは囁く様に高密度の魔法防御を頭の一部分にだけ展開させた。グレースの矢は空しくも簡単に防がれてしまった。


「フルボ!!!」

「お前!!!」

「よくも!」


 その出来事を皮切りにロック、ワイズ、ミットは叫びながらヴェルネルに突撃した。いつもは冷静なロックでさえも我を忘れている。アイレとフェアもヴェルネルがフルボを殺した事ではで目の色が変わり

魔力を漲らせた。やるしかないとエルフ達も詠唱を始めた。


「おっと! 魔王様はやらせないよッ! この武器を試したかったんだッ!」


 ユークはヴェルネルを守る様に前に出るとロック、ワイズ、ミットの全員の剣を受け止めてはじき返した。ベレニの素手の時と違い、巨大な鋏の様な武器を構えている。


 イフリートは空を飛び、咆哮と共に姿形を変えた。人間の姿だったイフリートは巨大な化け物になった。


「ふむ。私も全力を出そう! かかってこいエルフ共!」


 魔力を張り巡らせエルフ達に炎の玉を複数投げつけた。シンドラだけはただ一人佇んでいる。


「ヴェルネル!!!!!!!!!」


 その直後、ヴェルネルに対して目にも止まらぬ速度でアイレは距離を詰めると短刀で突き刺そうとした。ダンジョン武器を持っていて体中がビリビリと光っている。左手には炎がメラメラと漲っている短剣もある。


「……驚いた。アイレ、そんなに強くなっていたのか」


「てめぇ!!! よくもフルボを!!!!」


 ヴェルネルはアイレの渾身の一撃を軽々と青い剣で受け止めた。アイレは怒りに震えており、もしヴェルネルが止めなければ死んでいたかもしれない。


「彼は無駄死にではない。レムリと永遠の平和の為の必要な犠牲だ」


「黙れ!!! 俺達は……わかってるだろ! 命がどれだけ尊いものなのか! それをお前は……そんなにも簡単に!!」


「わかってるからこそだ!!!!」


 ヴェルネルもアイレに激怒しながら死んでもおかしくない剣速で強く切り返した。アイレはそれを防ぐとヴェルネルの心臓を狙って突き刺した。が、それを更にヴェルネルも防いだ。


「アイレ!!!」


 フェアがアイレの援護に入ろうとした時


「あら、男同士の戦いに女が入るのは野暮よ」


 セーヴェルがフェアの前に立った。


「セーヴェル!! あなたがしている事は本当の正義じゃない!」


「あなたに理解してもらおうとも思わない。私は永遠に訪れる平和な世界で妹を蘇らせる」


 アイレとヴェルネル、セーヴェルとフェア、イフリートとエルフ達、ユークとロック、ワイズ、ミット


 命を懸けた戦いが始まった。

いつも見てくださる方、ありがとうございます!

初執筆でここまで毎日投稿できているのはあなた様のおかげです!

完結まで頑張りますので、どうか宜しくお願いしますm(_ _)m


評価、応援、ブクマ面白いと思ったらお願いします(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ