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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
ヴルダヴァ

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第21話:二人の涙

「これが……私が見たヴェルネルとレムリの最後」


 フェアはそう言いながら悲しい表情を浮かべた。

 アイレは無言で大粒の涙を流している。


「インザームは……ヴェルネルとレムリを殺した罪を着せられ各国から追われる事になった。 私は小さかったし、信憑性を上げる為に

インザームだけを標的にしたんだと思う。それから私達は一緒に逃げながらも

ヴェルネルとレムリがどうして殺されないといけなかったかを調べた。たくさんの人を手にかけた結果この事実がわかった」


「インザームはずっとそんなつらい思いを……なんにもわかってやれなかった」


 アイレは地面を叩きながら涙を流して悔やんだ。

 ヴェルネルとレムリの最後とインザームの事を考えながら


「ヴェルネルとレムリを殺した理由がわかったとしても、私達だけで復讐する力なんてなかった。インザームは何度も私からも離れようとした。一緒にいたら狙われるからって

 でも、私はずっと離れたくなかった。ヴェルネルとレムリもインザームも……私の命の恩人で私の大好きな人達だったから

 それからインザームは私にお願いをした……」


「お願い?」


「禁忌とされる転生術を自分にしてほしいと、私に頼んだ。 インザームはドワーフだったから、生来魔法は使えない。 でも、転生術を行うと

今までの力を全て失って寿命も大幅に短くなる代わりに新たな能力を得る事ができる。魔法を使えるようにしてほしいと。

 インザームが転生術をしてほしかった理由は……あなたよ。アイレ」


「俺が!? どういうことだ!?」


「ヴェルネルは最後にアイレを頼むと私達に頼んだ。 私は……魔力の探知は得意だけど、インザームは危険だから迷惑はもうかけたくないと……。

勿論、私は何度も断った……それでも決意は固かった。 インザームはアイレがこの世界に来る時にすぐに駆け付けれるようにと

一人で魔法を勉強するために孤島で暮らすようになった。 ヴェルネルとレムリが初めてこの世界に来た時はあそこに転生したっていってたから」


「だからインザームは俺がゴブリンに殺されかけた時にいち早く助けにきてくれたのか……」


「それから……ヴェルネルとレムリの死後を見計らった様にエルフやドワーフは人間を脅かす敵だと命を狙われるようになった。だから私は人間のフリをしてずっと隠れて暮らしていた。

それで……インザームから連絡が届いた。あなたががこの世界に来た時は魔法で信号をもらえるように。私は遠くにいたけど……急いでインザームの島へ向かった。

だけど、家には誰もいなかった。それであなたの魔力の痕跡を感じ取ってずっと後をつけていた」


「なんで俺をつけてたんだ?」


「あなたが本当にヴェルネルとレムリが言っていたアイレかどうかは私にはわからなかった。でも、あなたがシェルと……アクアに話してるのを聞いてそうだとわかった」


 インザームとフェアはヴェルネルとレムリの最後の願いであるアイレを守る事を目標に生きていたと言っても過言ではない。

 30年間の間、あの孤島で一人きりアイレを待ち続けた。


「インザームの部屋にたくさんの蘇生術の本が置いてあった。それってもしかして……」


「きっと……あなたを待っている30年の間にヴェルネルとレムリを生き返らせようとずっと魔術を研究していたんだと思う。

 蘇生術はこの世界で誰も成功した事はないし、そんな魔法があるとは……思えないけど……」


 アイレが巨樹から出て行った後に部屋に入ったのはフェアだった。


「インザームは……ずっと俺にヴェルネルとレムリの事を言わなかった。なんでなんだ? 俺だって何かの役に立ちたかった」


「たぶん……真実を教えればあなたがヴェルネルとレムリの仇を取りに行くと思ったんじゃないかな。 だから、あなたに言うのを躊躇っていた」


「そういう事か……俺を強くしてくれたのもヴェルネルとレムリの約束を守る為……」


 アイレは項垂れながらも、心を強くもちながらインザームの事を考えた。


「インザームはまだ生きてるんだよな? でも……ルチルっていうエルフに目の前でやられたんだ……」


「もし、死んでしまったら私はわかる。 転生術と同時にそういう契約を結んでいるから。 どこにいるかはわからない……きっとインザームの事だから

心配はいらないと思う。 あながた思うよりずっと強い」


 フェアの言葉を聞いて、アイレはまた目に光を灯した。

 アズライトとルチルを探せば自ずとインザームの居場所も判明する。


「後……もう一つ大事な事がある」


「なんだ?」


「30年前。魔族と魔物を束ねる魔王なんて存在しなかったのよ。 私とインザームであれからどれだけ調べても魔王なんていなかった。 きっとあれは人間が作り出した嘘。

それなのにヴェルネルとレムリは魔法を倒した英雄になった。 それも何か理由があると思う」


「イフリートが言っていた魔王の初誕生って言葉は真実だったってことか……。 ああ、もう何が何かわからなくなってきた」


 30年前に魔王は存在しなかった。それなのにヴェルネルとレムリは死後、魔王を倒した英雄となった。

 インザームはヴェルネルとレムリを殺した罪を着せられ、30年以上の間逃亡を続けながらアイレを待っていた。

 イフリートが言う魔王の初誕生は更に世界を混沌に陥れる予感もした。



「ヴェルネルとレムリを陥れたのは奴らはまだ生きてるのか?」


「私が知っている限りでは何人かはまだ生きてる。 でも、相当な権力者よ。 私達が行っても捕まるのがオチだわ

 それに……問題はインザームがヴェルネルとレムリを殺した事が真実だと思ってる人が大勢いるって事。 誰も私達の言葉なんて信じてくれない」


 フェアはインザームと二人で逃亡を続けながら、ずっと無実を証明しようとしていた。それを思い出しながらアイレに言った。


「それでも……俺は絶対にヴェルネルとレムリを陥れた奴らを許さない」


「私は……あなたの事は信用してない。でも、ヴェルネルとレムリの約束は守る。 それに、インザームは私の大切な人だから」


「ああ、俺だって君の事は全然知らないし、正直信用はしてない。でも、インザームの事を見つけるのに協力がいる」


「もし、あなたが足手まといだと思ったり、私に命の危険が及ぶようだったら。ヴェルネルとレムリの約束とはいえ見捨てるから」


 アイレはインザームの事を一番に考えた。ヴェルネルとレムリが死んでしまっていたという事実を聞いたショックは計り知れない

それでも、まずはインザームを見つけて助け出したいという気持ちが強かった。


「それは俺も同じだ。 ヴェルネルとレムリの……墓とかそういうのはないのか?」


「クルムロフ城の近くにあるのは聞いたことあるけど……インザームはそのあたりは近寄る事はできないし、私は……怖くて一度もいってない……」


 フェアもインザームも目の前でヴェルネルとレムリを見捨てた様な気持ちでずっと心を病んでいた。


「俺は君の事は全然知らない……でも、ヴェルネルとレムリはきっと君の事は大切に思っていたと思う」


「そう……」


 フェアはヴェルネルとレムリの事を思い出しながら、アイレを顔を見た。その目はヴェルネルと同じ瞳をしていた。


「あなたが話していたアズライトは……この世界でも有名な騎士のシュタイン家だから有名だから、どこに住んでいるかはすぐわかると思う」


「わかった。明日の朝……出発しよう」


 アイレはフェローの言葉を思い出していた。自分だけの強さを作れ。 と。

 このままアズライトとルチルを探し出したとしても、戦って勝てるはずないとわかっていた。

 それにいつ、イフリートや強い魔物が出てくるかはわからない。


 それまでにもっと強くならないといけないと心で誓った。


「じゃあ……私もここで寝るから」


 フェアはそのままフードを脱いだ。薄く少し汚れた白いシャツに

白いふとももがショートパンツを履いていた。金髪の長いロングにすらっとした足が見える。

 目鼻立ちはクッキリとしており、フェローとは違う美人だった。

 そして、アイレはそういえばフェアって何歳だ……?と思った。


 そして、アクアが使っていたベットで寝ころんだ


「ちょっと! こんな所で脱ぐなよ! って……お前自分の部屋は?」


「……私もあなたと一緒の鼾のうるさい部屋で寝てたのよ。 あんなとこ戻りたくもない。

それに、あなた大金もらってたでしょ? 私、全然お金なんてもってないし、これからよろしく」



「……ったく。 なぁ、これから一緒に行動するんだ。君とかあなたとか そういうのやめようぜ

フェア、でいいんだよな? それが名前だよな」


「……フェアビンドゥング」


「ふぇ、ふぇびんどぅんぐ?」


「お母さんが付けてくれた大切な名前よ。でも、フェアでいい。」


「……いい名前だな。フェア」


「……まぁね、てゆうか、ここまで話しておいてなんだけど、よく私の事信用してるね、全部嘘かもしれないのに」


 フェアはベットで壁を向きながらアイレに言った。


 アイレは小さな火のライトだけを残してベットで横になる前に

 フェアに無言で写真を渡した。

 ヴェルネルとレムリとインザームと、そしてフェアが写っているアイレの大切な写真。


「おやすみ。フェア」


「……おやすみ」


 フェアはずっと写真を眺め続けた。

 

 ずっと、ずっと、眠るまで、ずっと、ずっと涙を流しながら皆といた時を思い出して眠るまで眺め続けた。


 アイレもヴェルネルとレムリを想って静かに聞こえない様に涙を流しながら眠った。


 

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