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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
ヴルダヴァ

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第17 話:終わりと始まり

 外から奇妙な轟音がヴルタヴァの街全体を襲った。


 金属音のような聞いたこともないような不快な爆音が鳴り響く。当然その音はアイレとシェルとアクアにも届いた。


「――な――な!―んだ―この音―は!?」 アイレがまず叫んだ


「――わ―わか―らない!」「――――す―ごい――音」


 その轟音は10秒間ほど続くと人間の悲鳴に突如変化した。

 アイレとシェルとアクアは武器を取ると直ぐに宿の外へ向かった。


 そしてすぐにその正体がわかった。

 月夜が少し欠け小さく明かりを照らしながら静寂に包まれていたヴルダヴァの街は

大勢の魔物が何処からともなくおしかけていて、更に建物には赤い炎が立ち昇り街を恐怖に照らしていた。


 人間達は魔物から逃げ回りながら悲鳴あげている。


「何で街の中に魔物が!?」「凄い数……」


「わからない……とにかくできる事をしよう」


 シェルとアクアは困惑していたがアイレの言葉で二人は少し平常心を取り戻した。

 3人はそれぞれいつものように戦闘態勢を取った。


 まず、アイレは目の前にいるゴブリンと見たこともない犬の様な魔物を二刀の短剣で切り付けた。

 すかざず、シェルが止めを刺すとアクアが間髪入れず援護するように魔法を詠唱し続けた。


「なんな――んだよこれはぁ!」

 

 アイレは叫びながら切り続けた。シェルとアクアもそれに続いた。


 魔物は次々と溢れるように現れて建物も破壊するように目的無く動いているようだった。 炎は依然立ち昇り、街は破壊と恐怖にまみれている。


「アイレ! キリが――ないぞ!」 「ど―――するの! グラース ・フレッシュ


 周りと見ると、アイレ達以外にも大勢の人間が魔物と対峙していた。


「冒険者ギルドま――でいこう! あそこ――なら何かわかるかもしれない! 遅れる――なよ!」


 アイレとシェルとアクアは走りながら魔物を切り付けて地を蹴り走った。


 「くそぉおお!」


 少なくはない人間の死体が魔物にやられて道端で無残にも倒れている。イザームが言っていた30年前の世界を思い出した。これが血まみれの世界。


 アイレの目線の先に小さな子供が全身口のような魔物に食われそうになっていた。

 どれだけ急いでも間に合う距離ではなかったが、アイレは諦めずに一生懸命に走った。しかし


―――――――――ダメだ。間に合わな――


 そのアイレの顔の横のギリギリを掠めるようにアクアの魔法が光の様な速さでその魔物に直撃して悲鳴をあげた。

 「さすが――アクアだ!」アイレはそのまま物凄い威力で一刀両断にして子供を助け手を差し伸べた


「大丈夫か?」 


「お母さんがお母さんがああああああああああああ――」


 子供は横にいる母親の死体を見ながら泣いた。 アイレは無言で唇を嚙みながら子供を抱きかかえると冒険者ギルドに引き続き向かった。



―――――――――なんなんだこれは。どうしたらいいんだよぉぉ! アイレは心の中で叫んでいた。悔しいと大声で。



 走って子供を抱きかかえるアイレに対して横からミニコカトリスが猛スピードで嘴を突っ込ませてきた。


 これにはシェルもアクアも間に合わない速度だった。 「くそぉっ!」アイレは気付いたが子供を庇うように背を向けた。



 「アイレ危ない!」 「アイレくん!!!!」



その瞬間、横から現れた大柄の男が鉄拳でその嘴を粉砕してミニコカトリスを吹っ飛ばした。



「子供は夜出歩くなっていわれなかったか?」



―――――――――「アンガルト!」 アイレが振り向いて大柄の男を見て叫んだ。



「そのガキを安全な所まで連れていけ!」


 鉄拳のアンガルトはそのあたりの魔物達を駆逐しようと走り回っていた。


「おっさん! 後でお礼させろ!」


 アイレはにそう言うと冒険者ギルドに向かって再び走った。

 その間も街の悲鳴は止まらなかった。 アイレ達は出来る事をしようとした。


 冒険者ギルドに近づくにつれ魔物の数は大幅に減っていった。

 その途中の広場でフェローの姿があった。


 フェローは2本の鞭を両手で持ちながら目にも止まらぬ速さで手を交差して

自身を囲みながら円のような範囲を作り進みながら敵をなぎ倒していた。 魔物は少しでも触れるとその鞭で切り刻まれて粉々になっていた。


「あれが狂気……」 


 アイレは走りながらフェローを横目に冒険者ギルドに入ろうとした。

 入口にはアイレの入場を拒んだ門兵がいた。


「お前! ……よくやったな。 魔物は突然城内に現れた。外からじゃない! 気を付けてくれ!」


 門兵はそういうとアイレから子供を預かって冒険者ギルドの中に入れた。


「わかった。子供を頼んだ! シェル! アクア! 俺達もまだ動けるはずだ!」


「わかった!」「はい!」


 アイレは子供を預けると再び魔物を駆逐するために駆け回った。

 冒険者ギルドのテストの日だったのが幸いだったのか、こちら側に手練れが多く集まっていたらしく

アイレが見た事がない魔法を使っている人間も大勢いた。魔物は少しずつだが明らかに減っていった。


「はぁっはぁっ……だいぶ減ってきたな」


 冒険者ギルドのテストが終わってそのまま戦闘を続けていたアイレとシェルとアクアには

明らかに疲労が蓄積されていた。


「はぁっ……これ以上は……」 「私も……魔力が切れかけ……」


 その時、アイレ達の上空を赤い炎の物体が横切った。建物を燃やしながら移動している。


「―――な!? なんだあれは!?」


「あれは……もしかして―――いやそんなわけない」「 ”あれが”建物を燃やしてるんだ……」


 シェルがその炎の物体の存在を知っているように囁いた。


「確かあそこはフェローのいる場所だ! 俺は行く!! 二人とも無理はするな!」


「……まだやれる!」「……私も!」


 先ほどの広場に向かうと、フェローが炎の物体と対峙していた。

 それをみて、シェルが


「あれは……イ……イフリートだと思う……」 「イフリートって……30年前に死んだんじゃなかったの?」


「イフリート……あれが……」


「そうだよ! ヴェルネル様とレムリ様に倒されたはずだ! でも……見た目が人間みたいだ」「凄い……ここまで熱が…‥」


 シェルとアクアが困惑していた。


「俺はフェローの援護に向かう! 二人はそこで待っててくれ!」


 アイレは急いでフェローの広場まで走った。



 アイレよりまだ遠い場所で

 フェローはイフリートと「会話」をしていた。


「随分とまぁ 人間とそっくりじゃないか」 フェローが言った。


「ふむ。本位ではないが、悪くはない」


「化け物風情が流暢に喋るようになりやがって、誰の差し金だ?」


「そう吠えるな。これは挨拶だよ。 お前ら人間もするだろう? 」


 イフリートは人間の様な見た目をしていて体格がいい大柄の男に見える。赤羽がちらりと見える。


「あれが……魔族の魔力か……」


 アイレは少し遠くでイフリートを見ながら驚きを隠せなかった。高い魔力を有していて

あのルチルの時を思い出すような汗を流した。今のアイレでは勝てる気はしなかった。





「お前は30年前に死んだんじゃないのか?」


 フェローがイフリートと対峙しながら言った


「……転生だよ。素晴らしい気持ちだ。頭が冴えてこんなにも物事がハッキリとわかるとは」


「答えになってねえな」


「貴様に答える義務もない。 これ以上対話する意味もな」


 そう言うとイフリートは右手に巨大な炎を宿すとフェローに投げつけた。

 フェローはそれを手に持っている2本の鞭に魔力を込めながら炎を粉々に切り刻んで消滅させた。


「ほう。 なかなかやるじゃないか」


「クソみたいな火を投げるだけがお前の特技か?」


「まだ体に慣れてないんだ。 これはどうだ?」


 イフリートは先ほどよりも巨大な炎をフェローに再び投げつけた。

 フェローはそれを同じように鞭で切り刻んで消滅させると

そのままイフリートの懐まで飛び込んだが、イフリートは炎をまとった赤い羽根を広げて飛びながらそれを回避した。


「逃げるな。 お前に聞きたい事があるんだよ!」


 フェローは近くにいるアイレも驚く程の殺気を出した。アイレを威嚇した時とは比較にならない。


「……最後の花火の灯といこうか」


 イフリートがそう言うと奇声をあげた。すると残っていた魔物が広場に集まってきた。ものすごい数だった。

ゴブリンにオーガに、サイクロプスにミニコカトリスに見たこともない魔物がうようよいる。



 フェローは鞭を構えて一人でそれを駆逐しようとした。


 アイレ、シェル、アクアがそれに続いてフェローの近くに立った。


「ひよっこ共は下がってろ」


「俺達も戦う」 「僕もだ」 「私も戦う」


「”あいつ”はあたしがやる。手を出すなよ」


 そういうとフェローは向かってくる魔物をなぎ倒しながらイフリートを狙って突っ込んだ。アイレよりも遥かに速い。


「俺達は周りの魔物をやるぞ! それぞれカバーできるように動け!」 「わかった!」 「はい!」



 アイレはまるで回転するかのように魔物の首を切断しながら駆逐していった。シェルもアクアもそれをカバーするかのように

無駄なく3人で動いてどんどん魔物を倒していった。 それでもキリがないほどの魔物が集まってきた。


 しかし、段々とアンガルトやその他の冒険者や手練れも広場に集まり、全員が魔物と戦いはじめた。


 フェローはもの凄い速度でイフリートと戦っていた。 誰もその勝負には入れないほどの攻撃速度と魔力で。

 遠くでその戦い見ながらアイレは唇を強く噛みしめていた。フェローとイフリートの戦いを眺める事しかできなかった。

 それでも今できる事を最大限するためにがむしゃらに魔物を駆逐し続けた。




「人間の癖になかなかやるじゃないか」 イフリートがフェローに言った。


「なぜ本気をださない? ちゃんとしやがれ!」 フェローはイフリートに恫喝して大声を出した。


「目的は達した。 貴様とやるのは楽しかったぞ」


 建物の屋根の上に二人は乗りながら会話をしていた。

 最後にイフリートは捨て台詞と共に両手で炎を作るとそれをフェローに投げた。

 フェローは難なく避けたが、炎は矢となり、とんでもない数の複数の炎の矢に変化して後ろにいるアイレ達や全員に降りかかった。


「狙いは――そっちか―――おまえら―――――――――逃げろ!」


 フェローが広場にいる全員に叫んだ。だが炎の矢は数多くの人に突き刺さった。

 大勢の悲鳴が広場を覆った。


「魔王様の初誕生だ!」


 そう言うと笑いながら、イフリートは炎の羽をまとって消えていった。

 フェローは最後に鞭で一撃を狙おうとおもったが、イフリートには届かなかった。



 イフリートが最後に放った炎の矢は大勢の命を奪った。



 アイレとシェルの大事な人も。




「アクア……アクア!!!!」


 シェルが倒れているアクアを抱きかかえながら叫んだ。


「うそだろ……」


 アイレもすぐに駆け寄ったがアクアの心臓にはイフリートが残した炎の矢が突き刺さっていた。

 すぐにその火を消すと矢は消えたが、アクアはピクリとも動かなかった。



 アクアはイフリートの炎の矢に心臓を刺されて死亡した。




「アクアぁあああああああああああああああああああああああああ」





 シェルの悲痛の叫び声がアイレの耳に鳴り響いた。

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