加速する想いは重い
「西野君携帯見つめて幸せそうな顔してるけどどうしたの? あたしにも見せて見せて!」
し、しまった!! 人の携帯見たいとかって間宮さんにはプライバシーの侵害という言葉はないのだろうか? でも天使だから許す。 なんて思ってる場合ではない。
僕は慌てて持っている携帯を高く上げた。 そしてメールの画面を消す。
「えー、見せてくれないの? ケチー!」
「み、見てもつまらないから」
「そうかなぁ? 西野君口元が緩んでたから何か面白いものでも見てたんじゃないかなって思ったけど」
そうは言っているが疑っているかもしれない、何せ間宮さんがメールを送信した後に僕は携帯を見た、これは何かに繋げようと思えばすぐにでもどこぞの知らない奴とメールが思い付く。 当事者の僕だから余計にそう感じてしまう。
てか僕が居るのになんで他の男なんかにメールしてんだ間宮さん…… いや、僕本人なんだけどなんか癪だ。 僕より僕が作り出した相手の方がいいのか? いや、それは後だ。 今は話題を逸らそう、まともに話せないけど。
「ま、間宮さんって…… 僕と居て恥ずかしくない?」
「え? 何? 唐突だね?」
僕が変な質問をしたせいか間宮さんは僕をジーッと見た。 でもこれって前々から気になっていた事なのだ、間宮さんは天使だから僕みたいなのでも優しく接してくれるが間宮さんの口から聞きたい、出来れば僕を肯定してくれるような優しいお言葉を。
「まぁよく知りもしないで判断するのは早計だよね。 西野君って話してみると面白いし、それに意外な共通点とかあるかもしれないじゃん? 西野君も少しは周りと打ち解けてみてもいいと思うけど?」
僕の事よく知ってもらえたら間宮さんはどう思うかな? 毎日間宮さんの事を考えてるんだよ僕は。 間宮さんの物だったら排泄物だって僕は平気で食べれちゃうくらい僕は間宮さんに想いを寄せているんだ。
最初は僕なんか間宮さんの事を好きになってはいけないなんて思っていたけど今はいろんな事をしているうちにどんどん間宮さんの事が欲しくなっていく。
「西野君今はちょっと周りから変な目で見られてるかもしれないけどやろうと思えば変われるよ!」
うん、間宮さんのお陰で僕は変われたよ、こんなに間宮さんのためにアクティブに動いているのもちょっと前の僕じゃ考えられなかった。
全部間宮さんのお陰だ。 こうして今一緒に歩いているのも間宮さんが天使で僕が努力してきたからだ。 間宮さんは僕に対してクラスの俗物どもみたいな目では見ていない。
も、もしだ、もし僕がここで間宮さんに抱きついても彼女は許してくれるよね?
やめろ! いきなりそんな事したら嫌われるぞ? どうせ想いは届かないかもしれないならやりたい事やっちゃえと葛藤が始まる。
ほうら、今間宮さんはそっちを向いている、その隙にガバッと! いくら僕が貧弱でも女の子1人くらい抑え込むなんて造作もないだろ? やっちゃえやっちゃえ! こんなチャンス二度とないかもだ。
でも人目につきそうだし…… なんて間宮さんの後頭部に向かって手を伸ばしていた。 振り向くな…… 振り向くな、あと数センチという所で彼女がパッとこっちを向いた。
「あッ!!」
「え?? 何?」
間宮さんが手を伸ばしている僕を不思議そうに見た。
しまった…… どうしよう……
「なんかあたしに付いてた?」
「ッ!? え? あ、うん、髪の毛に虫が」
「うそ!? 取って!」
「ええ!?」
「え〜ん、は、早く取ってよぉ」
間宮さんは足をジタバタさせて後ろを向いた。
これは…… 触れるチャンスだ! 思いもよらない展開になってしまった。 い、行くぞ……
間宮さんの髪の毛に触れる。 なんて柔らかい毛質なんだ。 僕のじっとりと汗で湿った手が間宮さんの髪の毛を汚しているかと思うと何か一種の快感を覚えてしまう。
そして僕は暴走する手の動きを止められずに間宮さんの髪の毛深くに更に手を潜り込ませる。
「え!? そんなとこに虫入っていったの?」
思わず間宮さんが僕の手の上に手を重ねた。
あ…… ヤバい。 僕は今あの間宮さんと…………
クルッとまた間宮さんが振り向いた。
「取れた?」
「え? あ? うん…… 取れた」
「はぁ〜、良かったぁ」
間宮さんのホッとした顔を見て少し冷静になる。 迂闊だった…… いくらなんでも考えなさ過ぎた。
…… これもこんな状況に急になったからだ、そうだ! もしかすると本番までこうした事がまたあるかもしれない。 何も今じゃなくてもいい。 ふふふふ。
「あ、ここだよ」
間宮さんは公園を指差して笑顔で俺に向く。 ああ、やはり天使だ。 この笑顔が今俺のためだけに向けられていると思うと欲情してしまいそうだ……