お姉ちゃんと聖君
「本当に来る気? 聖君」
「いい機会だしいいじゃないか?」
「まぁもういいとは思うけど」
彼は南雲 聖、あたしの彼氏…… お姉ちゃんが好きだった人。 中学までの幼馴染の男の子。 このタイミングで会いに行くなんて大丈夫かなぁ?
お姉ちゃんが西野君とその友達とキャンプに行ってからあたしはアパートに帰っていた。 だけど聖君があたしのお姉ちゃんが住んでいるところに行きたいと言い出した。
前から行きたいって言ってたんだけども。 聖君もあたしとお姉ちゃんの仲がおかしくなったのは当然知っていてそれが自分のせいと少し責任を感じていた。 だからなんだろうけど。
「でもお姉ちゃん大丈夫かな?」
「つかさと仲直り出来たんだろ?」
「うん、出来たは出来たけど」
「今の歩美って見た目はつかさだな、何かあったんだろうと思ったけど仲直り出来たみたいで良かったよ」
「これは…… お姉ちゃんがいつまでも芋臭い格好はやめてあたしみたいになりなさいって半ば強制で。 これで学校行ったらみんな驚くだろうね? 不安……」
「あはは、見た目良くなって不安とかはないだろ。 逆に俺の方が不安だよ、歩美モテちゃうから」
「モテるだなんてそんな……」
あたしそんなの全然わからないし…… 性格はお姉ちゃんにはなれないし。 お姉ちゃんみたく要領よく出来たら。
「歩美は前と今でもどっちでも可愛いよ。 変につかさみたいになろうとしなくても歩美は歩美だよ。 つかさもつかさだ。 それでいいんじゃない?」
「…… 恥ずかしい」
それはそうとお姉ちゃんに連絡したら「全然いーよ、連れて来れば?」って簡単な感じに答えたから逆に怖い。
そして家に着いてしまった。
「ただいまぁ」
「お邪魔します」
「おかえり歩美、それにこうちゃん久し振り!」
「久し振りつかさ」
まだ両親は仕事中なのでお姉ちゃんはあたし達をリビングへ連れて行った。
「お菓子か何か食べる? あれぇ? この辺だったと思うけど…… あ、あたし全部食べちゃったんだった」
「ははッ、相変わらずだなつかさは」
「えへへ、お恥ずかしい。 ジュースならあるから」
「つかさ……」
「ん?」
「あ、いやなんでもない」
「?? 変なの」
お姉ちゃん…… なんか全然平気そう。 もうなんとも思ってないのかな?
「じゃあ後は2人でごゆっくり! あたしは部屋に戻ってるから。 あ! でも壁薄いから2人きりだからってエッチとかしないよーに!」
「し、しないもん! 何言ってるのお姉ちゃん!?」
「あははッ、なんてね!」
あたし達をからかってあっさりとお姉ちゃんは部屋へと行ってしまった。
「ね、ねぇ? お姉ちゃんすっかり元気でしょ?」
「ああ、なんか前のつかさみたいだ、少し安心したよ。 なんかキラキラしてるっていうか…… あいつ好きな奴とか出来たのか?」
「好きな人?」
好きな人?? あたしはそう言われてパッと西野君を思い浮かべたけど…… 確かにお姉ちゃんと西野君は凄く仲良くなったけど好きな人と言われると微妙だ。
お姉ちゃんの好きなタイプって聖君だよね? でも西野君は全然違うし。 だけど聖君が言う通りお姉ちゃんはキラキラしてた、まるで誰かに恋してるよう。
聖君と部屋へ行きしばらくお話しした後そろそろいい時間なので聖君はお姉ちゃんの所へ行ってちょっとして帰る事にした。
「こうちゃんもう帰るの? もう少しゆっくりしていってもいいのに。 パパとママ帰ってくるまで居れば?」
「そうしたいけど明日部活あるからさ、よろしく言っといてくれ」
「そっか。 じゃあまた来なよ? こうちゃんだったら歓迎!」
「そうだよ聖君、あたしとまた一緒に来よう?」
「ああ。 それとつかさ」
「ん? なぁに?」
「お前のそういう顔また見れて良かったよ。 ずっと気になってたんだ、前はあんまり……」
「ああ…… まぁあたしも少しは反省したんだよ! それに今は好きな人も居るし」
「え? お姉ちゃんそれって……」
「まぁいいからいいから! じゃあまたね、こうちゃん、歩美!」
あたし達は家を後にした。
お姉ちゃんが好きな人って西野君だよね…… そっか、お姉ちゃん西野君の事。
「嬉しそうだな歩美」
「え? ああ、うん。 わかった?」
「つかさの好きな奴ってお前わかる?」
「うん、なんとなく」
「どんな奴?」
「えーと…… ちょっと変わった人。 ちょっとかなぁ?」
「変わった人ってどんなんだ?」
「あはは、なんか我が道を行くと言うかひたすらお姉ちゃんの事ばっかり考えてる人だよ。 お姉ちゃんと仲直り出来たのもその人のお陰みたいなところあるし。 だからお姉ちゃんも……」
「そうか、なら安心だな。 つかさってああ見えて傷付きやすい所とか考え込んで自分を追い詰めるような所あったからそいつが居れば安心だな」
「聖君ってあたし達と幼馴染だけあってよく見てるね」
「ああ、そうだよ。 歩美はこう見えて意外とつかさよりもしっかりしてるし芯が強いってのもな」
「そ、そうかな?」
「ああ、それにお姉ちゃん思いだもんな」
そうなんだろうか? あたしはああなる前はお姉ちゃんによく助けてもらってたしよくわからないけど。
でも今日は聖君を連れて来て良かったと思った。 聖君も安心したみたいだし何よりお姉ちゃんが本当に元気になったみたいで。




