もっと2人きりで居ても良かったな
「暑いけど火があるとなんか安心するね、蚊も心なしか減った気がするし」
「火があるのとないのでは文明と未開の差があるって聞いたしそうだね、それもこれも間宮さんが頑張ってくれたお陰だよ」
「ありがとう! これはいい思い出になるね!」
メラメラと萌える火を見て間宮さんが凄く喜んでる、一緒に座ってるんだけどピッタリ僕にくっついてきている。 僕は自分の理性を保つのに今は必死だ。
「あたしバカだからまだ迷ってたんだね。 誰かと自分を比べてみたり他人と誰かを比べてみたり違ってて当たり前でこんなんだから自分はとか見劣りして見えるから踏み出せてなかったとか、なんでこの人と居ると楽しいんだろとかホッとするんだろとか凄く単純。 それを認められないのは自分の事を認められないから。 しっかりと自分自身を持ってなかったから」
「う、うん? うん、そうなんだ?」
「だからさ! ツー君……」
だがその時物音がして何事かと思って燃えた木の棒を持ち警戒すると……
「居た! この野郎居やがった!」
「マジか!?」
熊のように太った何かが言葉を発すると大吉だった。 僕達発見してもらったのか!?
「お前らぁーーッ! ありえねぇほど心配させやがって! どんだけ…… どんだけ気が気じゃなかったか」
「ご、ごめん、こんなつもりはなくて……」
「つかさちゃんはともかく危うく親父にぶっ殺されるところだったじゃねぇか!!」
「ちッ、本当に人騒がせしやがって西野」
ははは…… 大吉に佐伯。 でもまぁそうだろうな。 間宮さんが1番だ。
「西野大丈夫だったか!?」
「坂田……」
「この野郎! 心配したんだぞ!!」
坂田は俺の肩を掴んでゆさゆさ振ってなんだか本当に心配していた。 あれ? 僕の心配してるの?
「この大バカ!!」
「痛い!」
「痛い! じゃない! 足りないこのバカアホドジつかさ!」
「いたーーい! 何回ゲンコツするの!?」
「し、雫ダメだよ! つかさ怪我してなさそうなのにそれじゃあ怪我しちゃうよ?」
「琴! あんたは甘い! こいつは痛い目見ないと懲りないの! いや、それでも懲りないかもしれない!」
「まぁまぁ見つかってよかったじゃん? 雫と琴も私も心配したんだからね、まったく」
倉石がとんでもないくらい間宮さんに怒っていた光景を見て坂田はポカンとしている。
「間宮があんなにいいようにされてるなんて……」
ああ、こいつからはあの時の間宮さんが印象に強く残っているからそうなんだな。
「…… 本当に心配したんだから。 バカつかさ」
「うん…… うん、ごめんねみんな。 ううッ…… うわぁーーん、ごめんなさぁーい!!」
「え?」
間宮さんは大声で泣き出して雫に抱きついた。 いきなりの事なので雫も驚いていた。
「つかさ、大丈夫? 怖かったんだね、よしよし」
「あ…… だから甘やかすなって琴。 まったく」
泣いている間宮さんを見ていると目が合った。 だけど目が合った瞬間間宮さんは僕に向かってニコッと笑って舌を出していた。 ありゃりゃ、可愛い……
「それにしても火を起こしててくれて良かったな。 それでなんとか見つけられたし」
「ああ。 間宮さんが火を起こしてくれたお陰だよ」
「え? これつかさがやったわけ? 火つける物何も持ってなさそうなのに」
「ううん、あたしツー君を手伝っただけでほとんどツー君のお陰なんだよ、だからこうして見つけてもらったのもツー君のお陰」
「ふぅん、なかなかやるじゃん西野! 私は西野が頼りになるとこはあるってわかってるからさ!」
倉石が僕の肩に手を置いて僕の頭に自分の頭をくっ付けた。
「ん? あんた煙臭い」
「蚊がいっぱい居たからさ、刺されないようにしてたんだ」
「いやーん、つかさも煙臭い。 帰ってお風呂入ろ? 一緒にさ」
「琴はただつかさと入りたいだけだよね…… それよりつかさ達ってなんでこんなとこに来たわけ?」
そりゃ聞かれるよなと思っていた事を麗華が訪ねてきた。
「起きた時みんなが外でキャンプファイヤーの準備してるの見えたんだけどそれまであたし何もしてなかったから何か役に立ちたくて旬な山の幸でもとってこようと思ったんだけど1人で森に入るのは流石に怖くてちょうどツー君が居たから誘ったの、ツー君は危ないって言ったんだけどあたしが強引に誘ってさ。 それで森に入ってしばらくして道わかんなくなって携帯見たら電波入らない事に気付いたの、それで」
間宮さんの咄嗟の嘘に間宮さんを見ると合わせてと言った感じにウインクされる。 その瞬間倉石にまた間宮さんはゲンコツされた。
「しょーもなッ! あんたってばやっぱりお仕置きが必要なようね!」
「だから痛いってば。 もう雫に何回もお仕置きされてるでしょ?」
「よぉーし、一件落着したところで帰ろうぜ? そんで仕切り直しだ!」
そして火の始末をして別荘へと戻った。 いやー、とりあえず無事に戻れてよかった…… のか? もう少し2人きりで居たかったってのもあったな。




