夢
「ブッ…… ははははッ! 何その頭!?」
「つかさ酷い寝癖じゃんウケる!」
「…………」
「ごめんつかさ」
笑い者にされている理由は夜中あたしの頭を琴にわしゃわしゃしされ過ぎてこうなってしまった。
「ボンバーヘッド……」
◇◇◇
「なんだお前? 寝癖直ってないぞ」
「え!? ほんと?」
「ほら、後ろだよここ」
「ふへへ…… ありがと、こうちゃん!」
「見た目変わってまだ間もないから慣れてないんだろ? 歩美なんてすぐ元通りになったのにさ」
「うるさいな! なんか恥ずかしくなるからやめてよ、慣れないのは否定はしないけど」
「あれ、来てたんだ?」
「おはよう歩美」
「おはよ……」
「とっとと学校行かないと遅刻するぞ?」
「あ、走らないでよッ!」
「お姉ちゃん運動音痴だもんね」
◇◇◇
鏡の前に行って自分のぐちゃぐちゃな髪の毛を見て思い出してしまった。 なんで思い出したんだろう? まぁいいか。
「雫ー、直して」
「言うと思った。 はいはい」
「あ、私もやる!」
「いつもみたいにゆるふわに巻いとく?」
「うーん、今日はやめとく」
「あら、珍しい」
雫と琴に髪を直してもらってまだ眠いのでベッドに寝転がる。 ふと麗華を見ると化粧をしていた。
あたしもしようかな。 そう思ったけど瞼が重くなってきたのでやめた。
「えー? つかさまた寝ちゃうの? 朝ご飯は?」
「眠いからいらない」
「じゃあ私達朝ご飯の準備するからね。 一応あんたの分作っとくから起きたら食べなよ?」
「はーい。 ありがと」
◇◇◇
「つかさ! あんた私の彼取ったでしょ!?」
「え? なんの事?」
「とぼけんじゃないわよ! 告白されてたでしょ!?」
「あ…… あれってもしかして。 で、でもあたし全然興味ないから」
「バカにしてんの!? ブスだったくせにちょっと変わったからって調子に乗ってんじゃないわよ!」
「い、痛い…… やめてよ」
「うるさい!」
「それで? 誰にやられたんだ?」
「…………」
「だんまりかよ。 お前無理に変わろうとしてるようだけど合ってねぇんじゃねぇの?」
「え?」
「それに前のつかさの方が見慣れてるしな」
「なんでこうちゃんがそんな事言うの? あたし…… バカみたいじゃん」
誰のために変わろうって思ったと思ってるの? こうちゃん…… あなたのためなんだよ? 歩美がした時は可愛いって言ってたのにあたしじゃダメなの? 同じ顔なんだよ? あたしもこうちゃんに可愛いって言ってもらいたい、好きになってもらいたい!
あたしは普段お姉ちゃんぶっていてけど歩美には全て負けているような気がした。 歩美もこうちゃんの事が好きなんだよね? だから…… こうちゃんだけは歩美にとられたくない!
なのにどうでもいい人達から告白されてそれがたまに誰かの好きな人だったりして、いきなり変わったあたしは他の女子から顰蹙を買い嫌われていく。
「そろそろ卒業式だね。 いろいろあったけど楽しかったね!」
「そうだな……」
「あたしね、言っておきたい事があったの。 ………… こうちゃんの事が好き」
言ってしまった。 あたし死ぬほど恥ずかしい。 だけどこうちゃんは沈黙………… どうして? あたし勇気を出して言ったんだよ? そして……
「ごめん」
こうちゃんが言ったごめんであたしは何かがガラガラと崩れていく感覚に襲われる。 ごめん…… ごめん…… ごめん……
「俺は歩美の事が好きなんだ」
「泥棒! なんで…… なんで歩美なのよ!?」
「お、お姉ちゃん!?」
「こうちゃんに何したの? ねぇ?」
「な、何って…… 」
「とぼけんじゃないわよ! あたしをバカにしてるの!?」
気付けばあたしがいつも言われていた事を歩美に言っていた。 ああ、こんな気持ちなんだ…… そりゃ憎くなるよね。
歩美にこんな事言ってもこうちゃんの気持ちが変わるわけないのに。 でも言わずにはいられない。
なんで? なんでなの? あれ?
なんだ夢か。 考えてたからこんな夢見たのかな? 時計を見ると午後になっていた。 そんなに寝てたんだ、起こしてくれてもいいのに。
リビングに行くとツー君1人だけ居た。 みんなは?
「あ、間宮さんおはよう」
「おはようかな? みんなは?」
「今日キャンプファイヤーするって。 それで外に出てるよ」
「ふぅん…… なんでツー君は行かないの?」
「間宮さん何も食べてないっていうから待ってたんだ、これ……」
ツー君はサンドイッチをあたしの前に置いたてたんだ」
魔が刺したのかな。 夢を見たせいかあたしは……
「ツー君、みんなとは別にあたしと2人でキャンプファイヤーしてみない?」
「え…… ? 2人で?」
「そう、2人」




