メールが返ってきた!
間宮さんとの保健室での奇跡はあまりにも僕にとって突然の事だったので記憶が曖昧だ。 意識を保つだけでも精一杯だった。
その後クラスに戻ると間宮さん以外は倒れた事を見ていた者やそれを聞いたであろう者が僕に向けて蔑みの眼差しを向けていた。 ……まぁそうだろう。
まさか僕の救い主である間宮さんに足元をすくわれるとは思いもよらなかったが
それを補って余りあるほどの絶頂を与えられたのでヌフフフ…… 冷静になれ、また顔に出てしまう。
学校が終わり今日も間宮さんの安全の為に尾行する。
今日は間宮さん1人のようだ。 他の男が付いているのは許せないが間宮さんほど見た目麗しく性格も良しな女の子が一人歩きしていると僕は心配だよ。
間宮さんの両親に代わって僕が間宮さんの安全を保証しなければならないようだ。
間宮さんは家の近くの公園に寄った。 今はベンチに座り本を読んでいる。 そんな間宮さんを僕は影から見守る。
間宮さんはやっぱり美しい。 保健室で間宮さんに急接近された時、フワッと髪からとてもいい匂いがして近くで見れば見るほど…… 思い出しただけで気絶しそうになる。
30分くらい見守っていると間宮さんは本を閉じて自宅に帰って行った。
僕も急いで自宅に帰り間宮さんの部屋を覗く。
いつも思うが間宮さんは結構開放的な性格なのかもしれない。 薄いカーテンくらい掛ければいいのにもし覗かれていたらどうするんだ? 僕は毎日覗いてますけど。
そうだ、いい頃合いだ! 間宮さんにメールを送ってみよう、携帯を取り出すとまたも緊張してきた。
サブアドだからスルーされるかもしれない。 てかどこぞの誰からかわからないメールなんて結局スルーかな? なんて思っても緊張する。
なんて打とう? そのまま考えていると夕飯の時間になり食べて部屋に戻り再び考える。 間宮さんの部屋を覗けばベッドに座り携帯を弄っている。
反応も見れそうだしやるなら今しかない! そして打った内容が……
『あなたは純潔を証明出来ますか?』 だった。 あまりにも…… あまりにもあんまりだ。 やはりやめとこうと思ったが緊張して携帯から手が滑り持ち直したと同時に送信を押してしまった。
しまった!! そう思い間宮さんをすかさず見る。 届いたかな? 届いたよな? いまだに掲示板のアドレスは有効なようだった。
間宮さん見ただろうか? 間宮さんはベッドに座り携帯を見続けているが反応がいまいちわからない。 ダメか。 そう思った時携帯にメールが来た音がした。
『誰ですか?』
へ、返信が来た!! まさか返ってくるんなんて…… これは奇跡だ! 普通なら無視するよね? てかなんて返そう? メールならなんて事ないと思うけど相手があの間宮さんだ、ガタブルと指が震える。
『そもそもどうしてこっちの連絡先知っているんですか?』
迷っているうちにまた間宮さんからメールが来てしまう。
『適当に打ったら君に当たった、おめでとう』
もうやぶれかぶれだと思い返したのがこれ…… んなわけあるか! 絶対にこれはありえないので流石にスルーさせるかと思いきや……
『へぇ、そんな事ってあるんですね』
なん…… だと? 納得したのか!? いや、そんなはずあるか! 僕の推測だとこうだ、間宮さんも掲示板(裏)の存在は知ってると思うのでそこに自分の連絡先が記載されていて誰かが悪戯半分でメールして来たと。 そして間宮さんの気分で返信しているんだ。
間宮さんの部屋を覗くと心なしかキョロキョロと辺りを見回しているような気がする。 距離もあるし僕の存在には気付けないとは思うけど……
『それでさっきの質問はなんですか?』
また返信が返ってくる。 思いの外間宮さんノリノリ? でも間宮さんがこんな質問にノリノリなんて。 でも……
『証明出来るか?』
僕も自分の好奇心には抗えなかった。 面と向かって言えないしメールなら間宮さんでもこんな事を聞けるってのはデカい。
『んー、範囲がどこまでかはわからないけど純潔?なんじゃないかなぁ?』
なんだそのボカした返答は…… でもこの感じだとあの男とはそこまでの仲ではないのかもしれない。
僕の天使の間宮さんが僕に嘘偽りを語るなんてありえないし。 あ、この段階だと僕だとわからないか。
『趣味は?』
『えー? 質問の答えに対して無反応でいきなり関係ない事聞きます? 趣味? 趣味は強いて言えば読書?』
そうと解釈すれば僕は間宮さんに対して聞きたい事を聞いていた。 だが間宮さんも律儀に答えてくれる。 やはり間宮さんはお優しい。
『今何してる?』
『あなたとメールしてます』
『最近気になる事は?』
『あなたは誰だろって事ですかね』
『ただの名無し』
『ふぅん、名無しさんよろしくね』
な、なんだこれは? 間宮さん怪しいメールに普通に返信してるじゃないか、しかもよろしくだと!? これはスルーされるかもしれないと思っていた僕的には嬉しいが来る者拒まずなこの対応は如何なものか? これはますます僕がしっかりと間宮さんを見張らねばなるまい。
それよりも間宮さん誰とでもこんな事…… いやいや、それはない。 僕にあんなに優しくしてくれた間宮さんは天使だ、それと同じようにどこぞの知らないメールでも残材に扱わない彼女の優しさだ。 ならば疑うなど天使に失礼だ。
望遠鏡で覗くと彼女は脚を組んで携帯を見つめていた。 ああ、やっぱり綺麗だ……
『名無しさん、あたしお風呂に入ってくるね』
覗いているとそんなメールが届き彼女に目をやれば部屋から出て行った。
ふぅ…… 本当にお風呂に入りに行ったようだ。 適当にそう言って後は切るなんて事ではないか。 いや、だがお風呂から上がったら結局もうメールは来なかったりして?
『上がったら返信求む』
僕は間宮さんとまだ話がしたくてそう返していた。 話したいのモロバレじゃないかと思ったが間宮さんならそれでも構ってくれそうだと思ったからだ。
しばらく待っていると僕の期待通り間宮さんは返事を返してくれた。 ふふふふ…… これならいつも間宮さんと繋がっていられるかもしれない。