表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/75

戻ってきた天使


間宮さんと手を繋いで一緒に地面へ落ちるまで身を任せている最中に走馬灯が見えた。



良いも悪いも今まであった事が僕の頭の中へ映像として再生される、物凄い速さで。 いじめられてボロクソにされる僕の歴史…… そして間宮さんに会ってからの僕。



「あたしがついていればハッピーエンドだよ」



僕は間宮さんのその言葉が最後に頭の中で響いていた。 



ハッピーエンド? これがハッピーエンドなのか? 違う! 僕は生まれ変わってではなく今間宮さんと結ばれたいんだ、そんないつかの話じゃない!



それに僕がそう感じてしまったら間宮さんが言った言葉が嘘になる。 ダメだ、こんな所で死なない! 僕も間宮さんも。 間宮さんをなんとか助けて僕も出来れば……



そう思い間宮さんを見る刹那の状況、間宮さんは僕の視線に気付いてニコッと笑うと間宮さんの身体が傾いていたのが急に立ち直る。



あれ? と思って間宮さんの方をよく見ると……



間宮さんの左手にはちょうど手を掛けられそうな支柱が飛び出していた。 あー、だから僕が気付かないうちにダッシュでここまで来て身体で隠してたのか。



ふふふ…… 間宮さんに殺されるならいいか。 仮に僕が死んでしまっても間宮さんの心の中には僕が生き続ける、それはある意味永遠に間宮さんと一緒に居れるという事なんだから。



そう思った時握っていた手を痛いくらい間宮さんは締めた。



「んん〜ッ!!」



間宮さんは歯を食いしばって僕の身体を支えた。 僕はそのお陰で落ちなくて済んだ……



だけど身体がガクガクと震えていた。 怖かったんだ。 やっぱりいくらなんでも死ぬっていうのはなんと理由を付けようと怖い。



「間宮さんありがとう。 …… え?」



間宮さんはヘタリと座り込んで…… 泣いている?



「本当救いようないバカじゃん! ありえないでしょ! あたしが支えてなかったら死んでたんだよ!?」



間宮さんは僕に何発もビンタを浴びせた。 痛い、痛いけど至福…… 間宮さんが僕を心配してくれてる?



「いくらなんでも死んでくれって言って死ぬ!? 止めなさいよ!」

「止めようとしたんだけど間に合わなくて。 でも間宮さんに救われた。 やっぱり間宮さんは僕の天使だ、救世主だ!」

「はぁ、なんで助けちゃったんだろ。 西野君に泣かされちゃったよぉ」



顔を落として間宮さんは目を押さえてシクシクと泣いていたように見えたが……



「それに童貞のまま死ぬ気だったの?」

「え?」

「なんてね! あー、本当西野君には参ったよ、見てらんない。 あたしの負け。 西野君はあたしがついていないとダメみたいだね?」

「間宮さん…… うん!」

「おいで西野君」



間宮さんは僕を優しく抱きしめてくれた。



「本当は少し嬉しかったよ。 あたしのために死のうとしてくれるなんて西野君くらいだもの。 それにあたしがしっかりしてないと西野君はヤバい人になっちゃうから」

「ヤバい人?」

「あんな臭いを纏ってる人なんてなかなかいないよ。 あたしを監視するのも限度ってのがあるでしょ?」

「つい夢中で。 気をつけるよ」

「そうだよ? じゃあ帰ろう」



間宮さんは何か憑き物が落ちたように笑顔になっていた。 



「そうだなぁ、西野君とは友達からかな」

「え? 僕とっくにそういうの……」

「西野君がいきなり天使とか言い出すから悪いんでしょ? だからちゃんと友達からね」



友達から…… その言い方だとそれ以上あるような伏線。



「なんかいろいろ吹っ切れたような気がするよ、それは良くも悪くも西野君のお陰だね」

「間宮さん、夏休み僕と遊んでくれる?」

「え? うん、いいよ! いっぱい遊ぼう、雫も誘ってね。 あたし雫の事かなり怒らせちゃった、一緒に謝ってくれる?」



僕はそんな甘えてくるような間宮さんが可愛くて頭を撫でたくなり手を伸ばしたが一瞬躊躇った。 間宮さんはそれに気付いて僕の手に自ら頭を当てて擦り擦りしてきたのだ、なんたる進展。



「うふふ、西野君にはあたし天使なんでしょ?」

「うん」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 不覚にも感動したwwww どんな姿であれ艱難辛苦を超越し覇業を成す姿は崇高で美しい・・・・。 [一言] >「西野君はあたしがついていないとダメみたいだね?」 あんたはのび太くんとの結婚…
2019/11/27 16:57 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ