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間宮さんを巡って


「何? なんで浩人がつかさと一緒にいるわけ?」

「なんでって? つかさちゃんにお呼ばれされたからに決まってるだろ?」

「そうだよ。 ねー? 佐伯君!」



間宮さんは佐伯の腕に頭を擦り付けそれに佐伯は気分を良くしたように頷いた。 



佐伯の奴…… 間宮さんに好き勝手しやがって。



「随分つかさと仲良くなったじゃない浩人。 まぁつかさもだけど」

「あたし達元から仲良しだもん!」

「そう言うお前らこそ仲良いじゃないか? てか倉石そんな奴と居て恥ずかしくないか?」

「ああん? なんで恥ずかしいわけ? それよりつかさはいいんだ? 西野の事」



そんな倉石の言葉に間宮さんはキョトンとした顔をした。



「うん? なんの事? あたし西野君なんて別にどうでもいいんだけど? ちょっと優しくしてあげたら何か勘違いしちゃったみたいだね」



倉石はそれを聞いて間宮さんの胸倉を掴んだ。 おい、やめろ。 間宮さんは今ちょっと心が病んでるだけなんだ。



「あんたッ…… 薄々気付いちゃいたけどそういう事ね」

「いやんッ! 雫怖〜い」

「こんな所でキャットファイトはよしてくれよ、つかさちゃん怖がってるだろ?」

「つかさ! 西野の気持ち散々弄んで最終的にポイとかってクズみたいな事してんじゃないわよ!」

「えー? いいじゃん? 雫は西野君と仲良くやれて結果オーライのハッピーエンドじゃん?」

「そういう事言ってんじゃないわよ! あんたのしてる事が許せないの!」



倉石が怒気を強めて言うと佐伯は間宮さんを掴んでいた倉石の手を強引に振り解いた。



「いったッ…… 浩人!」

「よくわかんないけど俺達これからデートなんだ。 行っていいか?」

「そう、あたし達これから『デート』なの!」



間宮さんはデートを強調するように言った。



「ダメだ間宮さん。 そんな奴と居たら間宮さんは堕天使になってしまうよ」

「堕天使って…… 西野、こいつ最初から堕天使だったようだけど?」

「違うんだ倉石、間宮さんは心に傷を負っているんだ。 本当の間宮さんはまぎれもなく天使なんだ。 こんな事したくてしているわけじゃない、だから僕が支えなきゃいけないんだ」

「意味不明なんですけどぉ?」

「ぷ…… くくく、何? 天使とか堕天使とかお前何言ってんの?」



佐伯は笑いを堪えてバカにしたような目で僕を見下している。



「ねぇ、気持ち悪いよね西野君って。 あたし嫌になっちゃった」

「つかさ! あんたみたいなのがどれだけ西野をバカにできるの? あんたの方がッ…… 西野?」



僕は倉石を制して間宮さんに詰め寄った。



「間宮さん、僕の事はどう言ってくれたっていい。 それで間宮さんの気が済むのなら詰ってくれ、煽ってくれ、コケにしてくれ。 だけどそいつはダメだ」

「はぁ? おい西野のくせに調子乗ってんじゃねぇぞ!」

「お前は間宮さんの全てを受け入れるのか?」

「ああ!?」

「受け入れられるのかって聞いてるんだ?」

「なんだこいつ? 本当に気持ち悪ぃな……」

「僕は間宮さんの全てを受け入れる。 間宮さんがそうしてくれたように」

「は? 西野君にそうしたのは……」

「わかってるよ間宮さん。 でもそうやって昔の事に囚われているなんて間宮さんらしくないよ、僕に言ってくれたように見方を変えてみようよ? 僕は今の間宮さんも僕に優しく話し掛けてくれた間宮さんどっちも大好きだ。 裏も表も間宮さんなら僕からしてみればどっちだって間宮さんに変わりないんだ」

「西野…… 」



なんだかよくわからない状況に佐伯は間宮さんと僕を交互に見ている。



「浩人、あんた邪魔なのよ。 こっち来なよ」

「あ、おい! 俺はつかさちゃんに呼ばれたんだぞ!? つかさちゃん!」

「なんかしらけた。 ごめん佐伯君帰っていいよ」

「え? ええ!?」



佐伯は倉石に引っ張っられそのまま僕達の前から消えた。



「間宮さん……」



僕は間宮さんに手を伸ばした。



「何それ?」

「行こう」

「どこに?」

「…… どこかに」



僕はそのまま動こうとしない間宮さんの手を掴んで歩き出した。 間宮さんは逃げるでもなく僕に引っ張られるまま無言で歩いていた。 そして人気のない住宅街まで行くと……



「西野君ってあたしをどうしたいの? 口ではあんな事言ってて本当は騙してた仕返し?」

「そんな事あるはずないよ。 間宮さんは僕の天使なんだから」

「まだそんな事言ってるんだ? バッカらしい。 騙しやすいったらありゃしない」



いつの間にか夕暮れ時になっていた。


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