間宮さんを追う
「ちゃんと身体洗いなよ? 不潔は本当勘弁だから。 服はそこに置いておいて」
「うん」
ま、真谷さんの家のお風呂を使わせていただく事になるなんて…… 間宮さんが毎日使ってるお風呂。 ああ、嬉しいけど今は浮かれるな。 身体を洗い終わったらまた間宮さんに気持ちを伝えなくては……
「じゃあごゆっくり」
「ありがとう間宮さん」
シャワーで身体を洗っていると間宮さんが扉越しに声を掛けてきた。
「西野君の服洗濯しちゃうね!」
「うん、なんかいろいろ借りちゃってごめん」
「気にしなくていーよ、んふふッ」
あれ? 間宮さんの雰囲気が変わった? さっきまであんなにツンツンしてたのに。 僕の説得が効いたんだろうか?
僕はなんだか嬉しくなった。 身体をゴシゴシと洗い、髪の毛を洗った。 これは間宮さんの匂いだ、僕は今間宮さんと同じ匂いになっているのか!?
そんな事を考えながらお風呂場から出ようと思った時気付いた。
あれ? 洗濯しちゃうねって間宮さん…… それは僕の下着もでしょうか? 間宮さんに僕の下着を触らせてしまった罪悪感と嬉しさが両方駆け巡る中、これって僕お風呂場からどうやって出て行けば良いのか気になった。
扉から顔を出し辺りを見ると服がない。 これは一体?
困り果てた僕はお風呂場からこっそり出ると……
「ひええええええッ!!」
「へ?」
「に、にに西野君! な、なんて格好してるんですか!?」
「あ、服がなくて…… あれ? なんで木ノ下? 間宮さんは?」
木ノ下は両手で顔を隠して指の隙間からこちらを見ていた。 それって顔隠す意味あるの?
「と、とりあえず何か着て下さい!」
「そんな事言われたって服がないんだ」
「…… ちょっと待ってて下さい!」
木ノ下は2階の方へ上がって行ったので僕はお風呂場に戻った。 すると程なくしてドアがノックされた。
「木ノ下?」
「ひええええええッ!! な、なんで出てくるんですか!? こ、これパパの服ですけどこれでとりあえず……」
木ノ下はドアの隙間に服を投げ入れた。
どうしようもないので僕は間宮さんの親の服を着てお風呂場から出ると木ノ下はホッとしたような顔をしていた。 僕もようやく出れてホッとしたよ……
「西野君一体何が?」
「間宮さんに僕の気持ちを伝えてたら臭くて全然頭に入ってこないからお風呂に入ってみたいな感じになって」
「ああ、それで…… お姉ちゃん笑いながら外に出てったからどうしたんだろう?って。 そういう事ですか」
「え? 間宮さん出掛けたの?」
「多分お姉ちゃんにしてやられましたね」
な、なんて事だ…… 間宮さんの手の平で弄ばれたのか。 でもなんかそれもいい! とか思ってる場合じゃない、間宮さんを追い掛けないと。
「それで? 間宮さんはどこ行った?」
「ええと…… ごめんなさい、あたしもわかりません」
だと思った、間宮さんが言う通り木ノ下は使えないなぁ。
「ならいいや。 僕一旦帰って着替えてくるから。 それまでこの服借りとく」
「はい、それは構いませんけど……」
急いで自宅に戻り部屋に入った。
「ううッ…… な、なんだこの部屋!? 臭い……」
間宮さんに夢中になっていたのですっかり忘れてた。 僕はこんな所で1週間も引きこもっていたのか。 僕が部屋から出てきた時の親の顔が目に浮かんだ。
でもこんなになるまで僕が間宮さんに本気なんてな。 狂ってこそのなんとやらだ。 おっといけない、そんな事考えているなら動かなきゃ。
僕は着替えて間宮さんの家に行って木ノ下に借りた服を返した。
「あ…… 洗うの忘れてた」
「大丈夫です、あたしが洗濯しときますので」
「下着もあるんだった」
「ひゃあッ! そ、そうでした……」
「でもごめん、僕間宮さん追い掛けたいから」
「あ、はい…… あの、お姉ちゃんって本当は結構めちゃくちゃな人だと思います。 あたしにも原因がありますけどあたしじゃ何も解決出来ませんでした、でも同じくらいめちゃくちゃな西野君ならお姉ちゃんの事わかってもらえると思います。 だからお姉ちゃんの事お願いします」
サラッと僕の事バカにしてない? でも木ノ下なんかに付き合ってる暇はないので僕は先を急ぐ事にした。
間宮さんにこんな画を描かれていたのは別にいいけど木ノ下如きになんか騙されてたのは癪だけど間宮さんの妹じゃあな……
僕は間宮さんが行きそうな場所なんてわからないけど人の多い駅周辺へと向かった。
キョロキョロと辺りを探して30分くらい彷徨いたろうか? とあるゲーセンの目の前を通り掛かると……
「あ、西野じゃん! おーい!」
「え? 倉石。 あ……」
「バカ雫! あー、もう!」
間宮さんは倉石に何故か捕まっていた。
「西野の家に行こうとしたら偶然つかさと会ってさ、見掛けちゃったからにはつかさもって言ったんだけど」
「あたしは忙しいの! 西野君なんかに構ってる時間はないし待ち合わせしてるのよ!」
「誰とだよ?」
そんなやり取りをしていると……
「つかさちゃん待った?」
聞き覚えのある声そいつは……
「佐伯君! もう遅いよぉ」
「ごめんごめん、あれ? 西野に倉石じゃん。 奇遇だな」
間宮さんは佐伯の腕を掴んで僕にベッと舌を出して微笑んだ。
さ…… 佐伯の奴!




