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キス


今日は終業式だ。 ついに夏休み…… なんだけどなんだかなぁ。 間宮さんは僕と夏休みに会ってくれるんだろうか? そりゃあ間宮さんは会いたいって言えば会ってくれるんだろうけど学校みたいに毎日とはいかないだろうし。



もうあらかた済んで帰ろうとしていた。 てか間宮さんは急いで帰ってしまった。



「何しょぼくれてんのよ? まぁ理由は大方想像つくけど」

「あ、倉石」



倉石がムスッとした顔で僕に詰め寄る。



「つかさにあまり会えなくなるからって落ち込んでたんでしょ? 私は?」

「あー、倉石もだね」

「ついでみたいに言うな! なんだと思ってるのよ」

「なんだとって……倉石は僕の事が好き」

「ぶッ!! そ、そう…… そうなんですけど!? だから私があんたが寂しくならないように思ってるんだから私と遊ぼう。 ね?」



倉石がそう言うと僕の隣の席の女子はなんで僕なんかにそんな熱を入れているんだろう? という顔で倉石を見ていた。



「な、何よ?」

「雫って西野にぞっこんじゃん」

「は、はぁ!? なんでそうなるわけ?」

「誰が見てもそう思うけど?」

「なんでよ! あッ、西野! 別にあんたとそういう目で見られて恥ずかしいとかじゃないからね!」



僕は何も言ってないのに僕にフォローを入れてきた。 大変だなこいつも。



「あ、今日さ、西野家に行ってみたいんだけど?」

「え!? 僕の家?」

「だって今日早く学校終わったじゃん? それにつかさも帰っちゃったしいいじゃん?」



こいつ…… 僕の家なんかに来てどうするつもりだ? ハッ! もしや僕の弱みを握って僕を意のままにしようと!?



「…… なんか私に対して変な事思ってるようだけどただ単純に行ってみたいだけだよ。 す、好きな人の家とかに行ってみたい気持ちは西野もわかるだろ?」

「………… 言ってて恥ずかしくない?」

「こ、このヤロー!」

「やっぱ好きなんじゃん?」



隣で聞いていた女子は呆れて倉石を見ながらそう言った。



そして僕は倉石と一緒に僕の家に向かっているが本当に来てしまうのか……



間宮さんにもまだ来た事ないのに最初に倉石が来るなんて。 まぁちょっと前の僕からしてみれば考えられないような事なんだけど。



「ここだよ」

「へぇ、つかさの部屋覗けるだけあってつかさの家から割と近いんだなぁ。 お邪魔しまーす!」

「あ、ちょっと待てって!」



なんて図々しい奴だ……



「あれ? 誰も居ないの?」

「どっちも仕事だよまったく…… 遠慮はないのか?」

「だって西野相手に遠慮してたら何も始まらないじゃん? ねぇ! 西野の部屋どこ?」

「お前なぁ……」



まぁどうせここまで来たら行かないはずないので仕方なく倉石を部屋に連れて行った。



「ここが西野の部屋か。 思ったより汚くないのね」

「僕をなんだと思ってるんだ?」

「えへへーッ! あ、それでつかさを覗いてたわけね。 今も堂々とそんな所に置いてるなんて本当変態よねぇ」



倉石は窓にセットしていた望遠鏡から間宮さんの部屋を覗いてみた。



「あははッ! つかさの部屋丸見え! あいつ覗かれてるの知っててカーテン閉めないってどういう神経してんのなぁ?」

「間宮さんはそこらの凡人と違うんだよ、むしろ僕のためにそうしてるんだ」



倉石はレンズに目を向けたまま言った。



「…… でもつかさ何か隠してるよね?」

「え?」

「なんかおかしいじゃん、つかさって。 つかさがあんたの事気になりだしてから私はそう思うようになったんだけどさ…… 今日だってさっさと帰っちゃうしさ」



おかしいだって? 間宮さんが? そんなわけあるか! 僕の天使だぞ! それに友達であるお前が愚弄するのか!?



「あッ! つかさの事悪く言ってるんじゃないよ? ただ…… 何かあるなら話して欲しいなって。 困ってるとかだったら尚更ね」

「困るって…… 間宮さんは困ってるかな?」

「いーや、私もよくわかんないけどね。 …… ってせっかくあんたと一緒にいるのにつかさの事ばっかだと意味ないわ! ところで気になってたんだけどなんで紅茶の紙パックなんてショーケースに入れてるわけ?」



あ! がめたい奴だ、それは間宮さんの聖杯だ。 もう僕がその上から間接キス済みだけど。



「あ、おい! 開けるなって!」

「いいじゃん! …… なんの変哲もないゴミじゃない」

「ゴミじゃない! それは間宮さんが飲んだジュースだ! あ…………」

「つかさが飲んだジュース…… あんたってやっぱり本物の変態だわ」

「うるさい」

「ああ、でも私がしてあげよっか?」



倉石はそう言って僕に腰を屈めて詰め寄る。 な、何をする気なんだ!?



「あんた経験ないでしょ? だったら私でしてみない? 免疫なくてまた気絶とかしたくないでしょ?」

「わからない話でもないけどさ、倉石そんなんでいいの?」

「まぁ本意じゃないけど私が最初の人になってあげる」



その瞬間僕は倉石にキスされていた……




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