表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/75

天使で気絶


結局メールはまだ何も送ってないが自分を諫め気持ちを押し殺し、今日は学校へと登校する。



はぁ…… ここ数週間僕は間宮さんの事で頭がいっぱいだ。 思えば僕がここまで行動的になった事があっただろうか? いや、ない。



こんな気持ちにさせてくれた間宮さんはまさしく天使! 僕に救いの道を指し示してくれたに違いない!



僕は少し良い方向に向かって変わってきているのかもしれない。 それはやはり間宮さんのお陰だ。 間宮さん、ああ、間宮さん!



教室に着き席に座る。 間宮さん…… 居た。 今日もお美しい、間宮さんは窓側の席だ。 対する僕は間宮さんの丁度横1列の反対側の廊下側だ。



僕は深呼吸をする。 この教室の空気を間宮さんは吸っている、そして吐いた息はこの教室に拡散する。 



言わばこれは常に間宮さんと一心同体なんだ! 間宮さんの吐いた息が僕の体内へと入る。 それはまるで心地良いスメルをも感じさせてくれるようだ。



こんな簡単な事に今まで気付かなかったなんて僕は視野が狭かったのかもしれない。 大事な事を気付かせてくれる間宮さん、僕の天使………… ん? 横から視線を感じる。



そう思い目だけ動かす。 隣の女子からだ。 僕を訝しげな目で見ている。 僕にはわかる、これは不快の表情だ。 僕に向けて……



いけない、顔に出ていたのか!? さぞかしキモかったに違いない…… また尾ひれが付いて噂を流されていじめられないように顔を引き締める。 引き締めた所で何か変わるわけでもないと思うけど。



間宮さんに集中できる分無視地獄の方が今は僕にとっては心地良い。



いいか!? 僕にとっては間宮さん以外は些末な存在なんだからな!



そうそう、例の間宮さんと一緒に居たけしからん男はひとつ上の先輩の大森先輩というらしい。 



イケメンだかつけ麺だか知らないが例の掲示板にボロクソある事ない事書いてやった。 周りからイケメンだとほざかれても間宮さんに近付く者は誰であろうと

ヘカトンケイルなのだ。 だが僕の完全大勝利だ、後は皆の裁きを受けるがいい。



これで間宮さんに近付くゴミ虫をひとつ減らせたと思いたい。



僕が顔を引き締めいつものように根暗モード全開でいると不意にそれは起こった。



「あー! 今日は来てるんだね、西野君」



な、何!? 天使の声!!? 幻聴でなければ今僕を…… 僕を呼んだのか? 一体なぜ? 今までこんな事なかったのに。



恐る恐る顔を上げるとそこには紛う事なき間宮さんのお姿が。



「具合でも悪かった? もう大丈夫?」

「え? つかさ、西野君ってそこの西野に話し掛けてるの?」



間宮さんの友達が僕なんかに話し掛けるので僕と間宮さんを見て不審な眼差しで問い掛ける。



「そうだけど? あたしが西野君に話し掛けて何か悪いの?」

「いや、悪いって事はないけど…… だって…… ねぇ?」

「だったら邪魔しないでよ。 ね? 西野君」



僕はその瞬間思いもよらぬ事態に身体の力が抜けガタンと椅子から崩れ落ちる。



「ええ!? う、嘘!? に、西野君?!」

「は!? え? こいつキモッ……」



そんな声が聞こえ隣に居た女子も僕から大きく身体を逸らして僕は床に倒れて気を失ってしまった。 







◇◇◇







知らない天井だ…… 僕は一体……?



そうだ、天使に話し掛けられて大丈夫だと思っていたつもりだったが情けなく僕は倒れてしまったんだ。



ふふふ…… キモいの烙印を天使にも押されてしまったかもしれない。 



「ようやく起きたぁ?」

「え?」



なんだ? 実はまだ僕は気を失っててまだ夢の中なのか? 今また天使の声が……  そう思い横を見ると間宮さんが居た。 だ、ダメだ……



「わああッ! ストップストップ! はい、深呼吸深呼吸!」

「うげぇッ、ゲホゲホッ!」



またしても気を失いそうになる僕を見て間宮さんは僕の肩を掴んで揺すった。 天使に触れられた…… 一度ならず二度までも。 ここは天国か?



「ぜぇぜぇッ…… おうふッ!!」

「ええ!? それはないでしょ〜!」



あまりの事に嬉しさや絶頂、様々なものを通り越し吐き気へと変換され僕が口を押さえると間宮さんは少し引きつった顔をして笑う。



「いきなり倒れるからビックリしたよ、もぉ〜」



長い前髪で目元を隠している僕のおでこに間宮さんは人差し指でツンと触れた。 僕は右手の甲を左手で抓りなんとか意識を保つ。



「こ、ここは、ここは天国なのれ?」



上手く言葉が出てこない。 天使を前にしてコミュ障全開だ。



「え? 天国? あはははッ! んなわけないでしょ? ここ保健室だよ? でもってもしかして西野君が倒れたのってあたしのせいかな? って思ってついてきたんだけど?」



天使だ、まさしく天使、そしてナイチンゲール間宮さん。 なんて慈悲深くてお優しいんだ。



「…………」

「おーい、西野くーん?」

「は、はひぃ!!」

「わッ! いきなり大きい声出さないでよ、ビックリ。 でももしかして西野君あたしの事笑わせようとしてる?」

「め、めめめ滅相もございませぬ!」

「あはははッ、ほらやっぱり〜! 西野君って面白いなぁ」



笑った顔はヴィーナスだ。 おお、神よ、今までバカにしてたけど今だけは神の存在を信じるよ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ