僕の間宮さん
倉石に告白された次の日学校へ行くと倉石は前より僕に積極的に接するようになっていた。
「西野おはよ!」
「お、おはよう…… なんか今日は元気?なんだね」
「うん? 当たり前じゃん! 西野に言いたい事言えた分スッキリしたし」
僕が自分の席に座ると倉石はまだ空いてる僕の前の席に座って僕と向かい合う。
「な、何?」
「別に何か悪い? つかさも居ないんだしいいじゃない」
「ねぇ……」
そんな様子を見て僕の先の隣の女子が倉石に話し掛けた。
「ん? 何?」
「雫って西野とそんな仲良かった? つかさが西野に仲良くするのはもういつもの事みたいな感じだったけど」
「まぁ私もよくつかさと一緒にこいつと居たじゃん? 私だってこれくらいはこいつと仲良いよ?」
「へ、へぇ。 西野ってモテ期でも来てるの?」
いや知らないけど……
「確かにモテ期は来てるかもねぇ」
ずっと休み時間や昼休みに至るまで倉石はほとんど僕の所へ来て話をしていた。
「いやー、今日はずっと西野のとこ行ってた気がするよ」
「気がするじゃなくて実際そうだったよ」
「ん、そうだね。 じゃあ今日こそつかさのお見舞い行こっか?」
「へぇ、行く気あったんだ?」
「あるわよそりゃ。 言ったでしょ? あんたに言いたい事言ったからスッキリしたって、それにこれはこれ、それはそれ!」
なぁんだ、じゃあやっぱ僕は何も気にする事なくて助かる。 倉石と居るのもそんな悪くないなって思えるようになってきたし。
学校が終わり間宮さんの家に着いた。 窓を見れば今日は開かれている。 良かった、間宮さんも昨日は元気だったし覗き見し放題だ。
インターホンを鳴らすと間宮さんが慌てて玄関から出て来た。
「はいはーい! って西野君に雫じゃん!」
驚くのも無理ないな。 倉石は連絡しないで直で行っちゃおうとか言うんだもん。 少し寝癖が付いてる間宮さんも良いなぁ。
「もぉー、来るなら最初に言ってよぉ? びっくりしちゃうじゃん!」
「あはは、ごめんごめん。 元気そうだね?」
「うん、もう元気元気! あ、上がって上がって!」
「つかさのお母さんも仕事?」
「そうだよ、もうこの通りだし。 今日はどっちも遅くなるみたい」
間宮さんが僕達を部屋に連れて行く時僕はこの前間宮さんを怒らせた部屋を見ると今日は閉じられていた。 今度は迂闊なマネはしない方がいいだろう。
「つかさ髪梳かしてあげるよ」
「ありがとー、お見舞いに来たんなら看病でもされようかなぁ」
「何か食べたい物でもあるの?」
「じゃあ…… パスタ!」
「パスタって…… 一応病人っぽいの食べなよ。 おかゆだと思ってたのに」
「あはは、でもパスタな気分なんだなぁ」
「仕方ないわね、じゃあ作ってあげる。 西野も食べる?」
「え?」
「あ、そうだね、西野君も食べてきなよ?」
「じゃあお言葉に甘えて」
やったー! 間宮さんの家で間宮さんの口に入る物と同じ物を食べれるなんてついてるぞ!
「よーし! なら私頑張っちゃう! キッチン借りるよ」
「はーい!」
倉石は部屋から出て行き間宮さんと2人きりになる。
「なんか雫と西野君前よりずっと仲良くなった気がするなぁ。 あたしの気のせい?」
「え? そ、そうかな?」
「あー、なんかその顔は隠しているねぇ?」
間宮さんは僕の両頬を掴んで顔を近付けた。 ち、近い…… 口付けが出来そうなほどに。
「あたしには内緒? 雫と恋人になったから?」
間宮さんの甘い吐息が僕に吐きかかる。
「ま、まだそこまでは……」
「そこまで? てことはかなり近いところまでいったのかな? ん?」
間宮さんのエンジェルフェイスをこんな間近で見せられてはもう僕は堪らない。
「好きだって…… 言われた」
「ふぅん? それで西野君はなんて?」
「ぼ、僕は…… 僕は間宮さんがの事があるから…… でも倉石にも好きでいてもらいたいって」
「そっか」
そう言った途端間宮さんは僕をベッドにどんと突き飛ばして僕に重なるように覆い被さる。
「え?」
「あたしは西野君の?」
「天使です」
「うん、だからそんな西野君の事を尊重してあげます。 雫に好きでいてもらいたいならあたしはそれを認めてあげるしあたしが居なくて寂しい時は木ノ下さんをあたしに変装させて気を紛らわすのも認めてあげる。 でもね、最初に西野君に無償の優しさをあげたのは誰? 答えはあたし。 あたしが居て雫も木ノ下さんも今があるんだよ? そう思わない?」
間宮さんは僕の手に手を重ねギュッと握った。
「うん…… 全部間宮さんのお陰、僕の天使……」
「そうだよ、あなたの天使だよ。 あたしが付いていれば西野君にはハッピーエンドが待ってるよ」




