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倉石の事が……


「西野…… あんたの事が好き」

「…… 好き? 好きってLIKEの好き? LOVEの好き?」

「LOVE寄りの好きよ」

「そ、そんな……」



初めてだ。 初めてだ…… 僕がこんなに真っ正面で、しかも絶対ありえないと思っていた倉石から。 友達だったんじゃ?



「僕にそんな事言われても……」

「わかってるよ、西野はつかさの事が好きで私にこんな事言われたって困るって事…… でも伝えたかった」

「そ、そう、僕には間宮さんがいる。 間宮さんが居たから僕は今に至ってそこに倉石は。 ……あ」



でも倉石だって間宮さんほどじゃないにしろ僕に干渉しているのは事実だ、間宮さんだって僕の事を倉石にも頼ったりした。 そうだ、間宮さんと倉石ありきで僕は今に至る。 目を背けてはいたけど1ピコグラム程度なんかじゃない……



「…………」

「困ってるよね? ごめんなさい。 私これじゃつかさだって困らせちゃうかもしれない」

「なんで僕?」

「最初は…… あんたの事嫌いだったってのは感じてたよね? でもつかさの隣で西野を見ていて西野ってバカでアホで気持ち悪くて、なのにつかさに対する想いは凄くて放って置けなくなくてほんの少し手助けしようとしたら傷付いてちゃんとあんたと話して友達になって……」



バカでアホで気持ち悪くて悪かったな!



「私西野とつかさの間に居るうちにあんたを応援してやりたくなってさ、結構おせっかいだから私…… でも不思議だよね、そんなあんたに助けてもらったからかな? 私ってあんたの事好きだわ」



倉石はそう言うと黙って僕を見つめた、僕の反応を待っているのか? 



僕は間宮さんが好きだ、だけど倉石にそんな事を言われて困るけどどこか嬉しいと思っている? なんで?



僕は嫌われいるのが当然で、そんな僕に間宮さんや木ノ下、倉石にこれまでにないほど仲良く優しく接してもらった。 そしてそんな倉石からこんなにハッキリと好きと言われた。 



それは僕が今までずっといじめられたり無視されたりした中で絶対無理だと思っていても誰かにそうしてもらいたいってずっと願っていた事なんじゃないのか? だからこんなにも嬉しいって気持ちが湧いてくるのか?



でもどうしよう? そんな願いが叶ってしまったのに僕は間宮さんが好きだ、そして僕をそんな風に想ってくれた倉石も聞いた途端意識し始めている。



あんな事言われたから、告白されたから倉石の事も手放してはいけないんじゃないか? なんて思っている。 



「倉石…… 僕は倉石にそう言われて嬉しいって感じた」

「うん」

「言われて僕は倉石の事が気になった」

「…… うん」

「でも間宮さんも好きなんだ、ただそれでも倉石にも好きって思ってもらいたい自分がいる」



つまり僕は間宮さんの事が好きだけど倉石は僕の事を好きでいてもらいたい、僕の率直な気持ちを言った。 



「告白された相手に他に好きな子いるから二股してくれって言ってるようなものよそれ」

「…… そうなのか。 でも僕はそう思ったんだ」

「私の事つかさの腰巾着とか友達Aみたいに見てた西野が私をそう意識してくれたって事ね、なんか大昇格しちゃったんだ? やったね私」

「え……?」



僕は倉石に抱き寄せられた。 今日は暑いせいか倉石の体は汗をかいたのかほんの少ししっとりとしていた。



「いつもは変態とか言って突き飛ばすくせに……」

「いつもとは違うし。 はぁ、本当に緊張した。 私って振られたばかりなのになんでまたこんなに可能性低そうなあんたを選んじゃったんだろ」

「僕に言われても知らないよ」

「そうだね、でもいいんだ。 まだ決まったわけじゃないし西野の中で私がランクアップしたみたいだし。 それにコミュ障なあんたに今すぐ答えを求めてないよ?」



倉石は僕が苦しくなるくらい自分の体に僕を押し付けた。 間宮さんとは違う匂い、だけど女の子特有の甘くいい匂いだ。



そしてゆっくりと僕を離して僕を見た。



「あんたとはもうただの友達じゃないね」

「え? だったら何?」

「友達以上恋人未満かな? つかさと同じ!」

「いや、間宮さんとはそんな俗っぽい関係では……」

「あー、はいはい。 まったくややこしいんだから!」



倉石は僕の手を引いて歩き出したと思ったらすぐに立ち止まった。



「あんまり緊張し過ぎて忘れてた」



ガサゴソと鞄を漁りラッピングされた小さな袋を僕に渡した。 なんだこれ?



「それね、私が作ったの。 開けてみて?」

「…… あ、クッキー?」

「うん、昨日作ったんだ、この前の埋め合わせとして…… あと西野に食べてもらいたくて」



ああ、これが埋め合わせか…… でもこんな事いわれた倉石の前ではもう間宮さんに対する何かは厳しいかもしれない。 それに僕ももう倉石に対して埋め合わせしてくれとかそんな気持ちはなくなっていた。



「美味しいと思うから食べて?」

「…… 倉石が作ったのに美味しい」

「なッ!! 失礼でしょ! 私を見た目だけで判断するな! ちゃんとこういう事も出来るんだからね?」

「そうみたいだね。 意外だけど」



倉石は僕の背中をバシッと叩いてコンビニに戻ろうと言った。 



「でも倉石は間宮さんの友達だろ? いいの?」

「うん。 わかってるよ、でもつかさの恋愛感はよくわかんないしそれにつかさの奴…… あ、ううん、それはまぁいいや、何も変わらないよ? あんたは何も心配する事ないわ」

「そっか。 えっとよくわかんないけど……」



その後少し倉石と話して帰った。 まさか倉石が僕を好きだったなんて思わなかったし告白されて僕が曖昧な解答をしたのに受け入れてもらったようだ。 





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