テスト勉強のお誘い
「ああ〜ん! 西野君助けてぇ!」
ある日の昼休み僕はトイレから出て教室に向かう途中角を曲がった途端……
「ま、間宮さん!?」
間宮さんは僕を見つけると僕の後ろに隠れる。 僕の背中にピタッと張り付き身を屈める。
う、うひゃーッ! な、なんとういう至福…… でも一体どうしたんだ? と思うと曲がり角から倉石が飛び出してきた。
「つかさーーッ!!」
倉石は僕の後ろの間宮さんを見つけると掴みかかろうとするも間宮さんは僕を巧みに動かしてディフェンスする。
「西野! つかさから離れろ!」
「いや、無茶言うなよ、わふッ!」
「いやーッ! 雫あっち行って!」
しかし倉石は僕を挟んで間宮さんの肩を掴んだ。
「捕まえた! もう逃げられないわよ!?」
「むぐぐ…… く、苦しい」
倉石は僕より背が若干高いのでつま先立ちで間宮さんを挟むとちょうど倉石の胸が僕の顔に押し付けられる…… これが間宮さんだったら。
「観念しなさいつかさ!」
「い、いやだぁ…… って雫、西野君苦しそうだよ?」
「は? あ…… こ、この変態! 何してんのよ!!」
パッと倉石が手を離しようやく僕は解放される。 その隙に間宮さんは逃げ去ってしまった。
「く、倉石が強引に間宮さんを捕まえたのが悪いんだろ」
「うっさいわね! あんたがチビ助なのがいけないのよ! ちゃんと牛乳飲んで大きくなりなさいよ」
「てか何してんの?」
「あ…… ああ、そろそろ期末テストでしょ? 中間テストの成績つかさあんまり良くなかったから勉強教えてって私に頼んできたのにあいつったら根を上げて逃げちゃったのよ!」
なんだ、そういう事か。 そんな所もある間宮さんはやっぱり可愛いなぁ。
「何にやけてんのよ? 大方そんな所も可愛いなぁとか思ってたんでしょ? まったく」
「倉石ってそんなに頭良かったっけ?」
「はぁ? あんた私の見た目で判断してるでしょ? つかさなんかよりよっぽど私の方が成績良いんだから」
「へぇ、意外」
倉石は結構派手で遊んでそうな見た目だし間宮さんの方が頭良さそうに見えたから意外だ。
「あんたこそどうだったのよ? 中間テスト」
「確か87位」
1年生140人中だから中の下と言った所か。 まぁこれでも困る事はないから別に僕はどうだっていいけど。
「つかさとどっこいどっこいじゃない。 あんたもバカだったのね」
「え!? 間宮さんも僕と同じくらい」
「喜ぶ所じゃないと思うけど?」
「そういう倉石は何位なんだよ?」
「聞いて驚きなさい! この前の中間テストは8位だったのよ」
ドヤ顔で倉石は答えた。 こ、こいつが8位!?
「信じられない……」
「失礼よ! 私結構勉強出来るんだから。 ふん!」
まぁこいつが勉強出来ても僕にはなんの関係もないけどと思い間宮さんが走り去った方向を向いてみると角から小さく顔を出してこちらの様子を伺っている間宮さんが……
「あ! あんな所に!」
倉石もそれを見付けて走り出すと間宮さんはサッと逃げ去る。
僕はその後教室に戻り午後の授業の準備をしてボーッとしていると意気消沈した顔で倉石に捕まった間宮さんが入って来た。
そして間宮さんの席の前に倉石が座り説教をしていると間宮さんは隙を突いて僕の方へ来た。
「こら! 性懲りもなく!」
「ま、待って雫! 西野君も一緒に勉強しよう? ね?」
「はぁ〜、まったく…… 仕方ないわね。 まぁ別に後から西野も良かったら誘うつもりだったからいいけどさ」
「そうなの? だって! 良かったね西野君!」
「間宮さんが一緒なら僕もいいかな」
「決まり〜! じゃあ放課後図書室行こうね西野君!」
や、やった! 勉強はどうでもいいが間宮さんからのお誘いだ!
「つかさと一緒だから逃げないと思うけど2人で逃げるなよ!」
「あー、その手があったね西野君」
「言ってるそばから!」
「痛い!」
コツンと倉石は間宮さんにゲンコツをした。 こ、この野郎! 僕の間宮さんになんて事を!! でも両手で頭を押さえる間宮さんは可愛い……
午後の授業が終わり掃除が終わると倉石は間宮さんと僕をさっさと図書室に連れて行く。
なんでこんな連行するように? と思ったが間宮さんが逃げるんじゃないかと思ったからだろう。
「あーあ、また勉強…… 」
「当然でしょ? あんたが教えてって言い出したんだから」
「後悔してまーす! 雫スパルタなんだもん。 あ、雫が西野君に教えて西野君があたしに教えるってのはどう?」
お、おお! それいい!!
「僕もそれがいいかも」
「良くない! 2人ともバカなんだから私が2人同時に教えるわよ!」
「チーン……」
こうして倉石と間宮さんとテスト勉強を一緒にする事になった。




