佐伯再び
間宮さんのあの表情…… 凄く怒っていた。 すぐに元の間宮さんに戻っていたけどあの引き倒された瞬間は僕に怒りの眼差しを向けていた。
あんな表情をしたのは真下と坂田が僕に対して悪口を言った時でそれは2人に向けられていたのに今度は僕に向けていた……
なんで? あの部屋に何があったんだろう? 一瞬見えた感じでは普通の部屋だったような。
「西野君? ボーッとしてたよ」
「ふえ?」
目の前に間宮さんが出てきてビックリした。
「つかさが目の前に居たのに何ボーッとしてんの?」
ああ、そうだ今は学校だった。 間宮さんは打って変わっていつもの天使のような間宮さんだ。 僕の考え過ぎかな?
「それでどうすんのさ? 行くの? 行かないの?」
「あーん、どうしよぉ? 西野君が目
付けられるのは嫌だしなぁ」
「そん時は私が付いてるよ。 西野をぼっちにさせなければいいんでしょ?」
「西野君はどうしたい? 行きたい?」
あー、例のこの前のお詫びを兼ねたDQNどもの巣窟にまた行く話かぁ。 僕のライフは行く前からゼロになりそうだ。
「やっぱ断ろうかな。 そこまでして行くほどでもないしねぇ」
「まぁそうだわね、西野をダシにしてたけどまた集まって騒ぎたいだけだろうし」
「だね! よし、今回は断ろう!」
「じゃーさ、私らで遊ばない? もちろん西野もね」
「あー、いいねぇ。 行くでしょ西野君? もうあたしら3人気心知れてるし遠慮いらないからさ」
間宮さんと倉石…… 確かにもう2人に僕はカミングアウトしてるし。 間宮さんは是非もなく、倉石にはあまり気を遣わなくて良いし。
「ほら、どうすんの西野?」
「西野君!」
なんか最近の僕って間宮さんと倉石との付き合いでぼっちと空気から脱却出来ているような気がする。 友達ってこういう事なのか?
間宮さんとは友達以上恋人以上だと思ってもいいのかな?
「うん、行く」
「やったね雫!」
「いや、私に何故振るわけ? こいつが私のタイプだと思う?」
「えー? 違うの?」
「違うっしょ!!」
ありゃ…… あれか? これは間宮さんの照れ隠しなんだろうか? そもそも照れてるの? うーん、間宮さんの心は謎が多いけどそこは天使だからなぁ。
「あー、西野君の好みは木ノ下さん?」
な、何故だ…… 何故いつもいつも木ノ下なんだよぉおおおおッ!!
「つかさ、西野は木ノ下とはそんなんじゃなくてただの友達なのよ?」
「ちぇーッ、木ノ下さん可哀想」
「私は西野が可哀想になってきたわ。 あ、でもこいつはやっぱ同情の余地はないわね」
間宮さんと倉石は佐伯の所へ行き行かないと断りを入れに行った。 佐伯がチラッと僕を見たが佐伯はニコッと笑って間宮さんの方へ視線を戻す。
「あー、良かった。 大丈夫だよ西野君」
「じゃあ今日は学校終わったら私ら3人でどっか遊ぼう?」
そして放課後になり間宮さんと倉石は僕でモールに行く。 僕はまったく興味はないが間宮さんが見る物触れる物には興味はある。
「だからーッ! なんでそんな小学生が着るようなものばっかりチョイスするの?」
「えー? あたし的にはいいと思ったんだけどなぁ。 西野君どう思う?」
「間宮さんがいいと思った物がいい」
「ほらーッ」
「この2人クソダサコンビだったわ」
ふと間宮さんは歩みを止めた。
「ん? どうしたつかさ」
「なんであそこに佐伯君達いるんだろうって思って」
「え?」
その時僕にもプライズコーナーのUFOキャッチャーで一際大きい声でリアクションする大吉君の声が聞こえた。
あいつの姿を見るとあの時のトラウマが蘇る。 倉石が僕と間宮さんの肩を掴んで引き返そうとするのも虚しく背を向けた時大吉君は当然のように僕らに気付き声を掛けてきた。
「あ? あれれー? つかさちゃんに雫ちゃんじゃん!」
「あ、本当だ。 偶然だね」
倉石は舌打ちをして溜め息を吐く。
「ひっそりあたし達の後をつけてきたのかな?」
「かもねぇ、タイミング良過ぎでしょ」
後をつけてきたって? ストーカーみたいな事しやがって! そこまでして間宮さんに構ってもらいたいのか? ←(自分も似たような事してたのは西野の頭にはない)
「…………」
「西野安心しなよ? 今度は私がしっかり断ってやるからさ」
振り返ると大城と琴を抜かした以外は前と同じ連中だった。
「雫ちゃーん! この前雫ちゃんまで抜けてさびしかったよぉー」
大吉が重そうな体をドスドス揺らして走って来た。
「あんたらの煽りが過ぎるからでしょ? 少しは西野のキャラの事も考えなさいよ」
「西野? おうッ! そこに居たのか!? つかさちゃんと雫ちゃんの後ろに隠れてて存在感ゼロ!」
「つかさちゃん、こんな所に3人で来るなら俺らも誘えば良かったのに」
「ごめんね佐伯君。 この3人で遊びたかったからさ」
話の途中で倉石は間宮さんと僕を掴んで後ろに下がらせた。
「ごめんねぇ、今回あんたらの誘い断ろうって決めたの私でさ、もともとこの3人で遊ぼうって決めてたしどっち道無理だわ、だからもうついてくんなよ?」
「え、うそん!? 雫ちゃーん!」
「だからついてくんなデブ!」
「んー、雫の言う通り。 そっちはそっちで遊んでね? 行こう西野君」
間宮さんと倉石は僕の腕を掴んで走ってモールから出た。
「ふー、あいつらもういないよね?」
「あんだけはっきり雫が言ったんだからもうついてこないでしょ? 大丈夫西野君?」
「あ…… うん」
「まったく! お前はヒロインか西野!」
「あははッ、本当にねぇ。 なんかお腹空いちゃった。 どっかで食べよう?」
間宮さんと倉石が今回はハッキリと拒んだお陰で再び悲劇が起こる事はなかった。 僕は大吉君みたいなキャラはめちゃくちゃ苦手なんだと再確認した。




