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豹変


「あんた普通にキモすぎ、こっそり女子の制服の匂い嗅ぐなんて」

「まぁまぁ…… いいじゃん」

「つかさ…… どういう神経してんの?」

「あはは、これくらいで驚いてちゃダメだよ西野君だし」

「つい…… 魔が差して」

「それ犯罪者がよく言う台詞だわ」

「そうだと思ってちゃんと洗濯したから臭くなかったでしょ?」

「あ、うん」

「いや、そうだと思ってたのかよ!?」



なんだ間宮さん、最初から僕に嗅がせるつもりだったのか。



「ていうかこの制服の量は何?」

「あー、あたしよく汚してたからそれくらい必要だったの。 ほら、あたしって運動音痴でしょ?」

「えー? そうだとしてもこんなに必要? 2人分くらいはあるわよ?」



倉石は間宮さんの制服を広げた。



「あ、お菓子とか持ってくるね? 雫も西野君もゆっくり寛いでて?」

「はーい、ありがとー」



間宮さんが部屋から出て行くとジロッと倉石が僕を睨んだ。



「西野、つかさがあんなんだから許してくれるけど普通にこんな事他の女子にしたらあんたは変態の烙印を押されて卒業するまでずーっと言われるんだからね? わかってんの?」

「べ、別に間宮さんにしかこんな事するつもりないし」

「そういう問題じゃないでしょうが! ってつかさがあーだからくどくど言うのがバカらしくなってきた、はぁー」



溜め息を吐く倉石の事は放っておき僕は間宮さんの部屋をグルリとよく見渡す。



間宮さんはいつもこのベッドで寝ているのか。 僕もこのベッドに入りたい、真谷さんの枕に顔を埋めたい……



「ちょっと待て」



倉石にグイッと肩を掴まれた。



「よくもまぁ私が居るのにつかさのベッドにダイブしようなんて思うわね?」

「だってもう倉石にはバレてるし」

「いやまぁ別にそうなんだけどさ、こうも堂々と私の居る前でこんな背徳行為されるとこっちも見ちゃいられないわよ」

「間宮さんは許してくれるよ」

「つかさが許しても私が許せないの!」



倉石にあーだこーだ言われているとガチャっとドアが開いて間宮さんが入ってきた。



「わぁー、雫が西野君を押し倒してる。 過激……」

「え? あ、違うよ! これはこいつがつかさのベッドになんか変な事しようとしたから止めてたの!」

「へぇー、ベッド使いたくなったら使ってていいよ?」



ほら見ろ、間宮さんは許してくれるだろ? 



「つかさが甘やかすからこいつはどんどんダメ人間になってく…… 」

「あははッ、雫は西野君に立派になってもらいたいんだねぇ」

「別に…… こいつが立派になっても私になんの得もないでしょうが」



あ、そうだ! ここに来た目的はもうひとつ、今より幼い間宮さんを見たかったんだ。 



「間宮さん」

「なぁに?」

「ええと…… 間宮さんの中学生の時とか小学生のアルバムないかな?」

「あっ! 私も見てみたいな、その辺りのつかさを」

「あー…… ごめん。 ないんだ」

「「え?」」



ない? ないなんてあるのか? 僕だって最低な思い出しかないけど小中のアルバムはあるぞ? 



「引越す時探したんだけどなぁ、見つからなくて…… あ、でもその代わり卒業近くに個人的に撮った奴とかはあるよ?」



間宮さんは机の引き出しから写真を数枚僕に見せた。 間宮さんと間宮さんの見知らぬ友達らしき人物との写真。 



なんだ、他の子より圧倒的に可愛いじゃないか、自分より可愛い子いっぱい居たからとか言ってたけど間宮さん謙遜してたな。 



「へぇ、やっぱつかさ可愛いわねぇ。 ただやっぱりアルバムで見たいわね」

「見付けたら見せてあげるよ。 逆にあたしは西野君と雫のアルバム見たいんだけど?」

「あー、私の? つまんないからやめとけやめとけ」

「僕もそう思う」

「なんであんたに言われなきゃいけないわけ?」

「い、いや、僕のだよ僕の」

「じゃあ後で2人のもあたしに見せてよ」



間宮さんはそう言ってニッコリ笑うと僕から写真をスッと取った。 



「てか西野の小中なんて凄く想像つくわ。 なんか見る前からわかっちゃう」

「その通りだから見ない方がいいよ」



その後間宮さんの部屋でしばらく雑談していたらトイレに行きたくなったので部屋から出た。



ん? 間宮さんの隣の部屋のドアがほんの少し、3センチくらい開いている。 僕は興味本位で中を覗こうとした時だった。



乱暴に肩を引っ張られ床に倒された。 そこには鬼気迫る表情の間宮さんが…… え? 



その物音に倉石も出てくる。 



「は!? 西野大丈夫? 結構な音したけど怪我してない? 何してるのよ!! つかさ!」

「………… あッ、ごめんごめん。 その部屋汚いから恥ずかしくて…… ごめんね西野君。 大丈夫?」



いつの間にかいつもの優しい表情に戻っていた間宮さんはしゃがみ込んで僕の心配をしていた。



「それくらいで…… まぁいいわ。 西野、これに懲りたら女の子の家で勝手しちゃダメだからね?」

「…………」

「あ、トイレの場所わかる?」



間宮さんはさり気なく開き掛けのドアを閉めた。 だが僕は先程の間宮さんの顔が忘れられなくてしばらく放心状態だった。



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