間宮さんとその友達2
「えー! 本日のスーパーサプライヤー雫ちゃんです!」
「あはは、誕生日おめでとう琴」
「雫まで来てくれるなんて嬉しいよ」
「最初からくれば良かったのに」
大吉君は盛り上げ役で途中から来た倉石を歓迎していた。 僕はというと……
何故か隅っこに居た。 誰に言われるでもなく隅に退散。 隅っこが1番落ち着く。
「美女四姉妹で何をしてくれるのかなぁー!?」
「何もしねぇよ! デブ!」
「いやん! 雫ちゃん相変わらず毒舌」
「あははははッ」
他の連中は僕を取り残して会話が弾む。 やっぱり僕は場違いだ、間宮さんは時折り僕をチラチラと気にしていたが佐伯と河野とやらに絡まれており忙しそうだ。
本当くだらない奴らだ。 こんなの何が楽しいのかわからない。 かと言って、もし僕に話し掛けてこられても何を話していいのかわからないしこのまま早く時間が過ぎればいい。
「西野だっけ? つまんなそうだな? ほれ」
そう思ってる矢先から話し掛けられた。 そいつは紙コップに入ったジュースを僕に手渡した。
「どうも。 ええと……」
「俺? 俺は大城 真だ」
「あ…… 」
「お前さ、何しに来たの?」
ありがとうと言おうとしたら大城から冷たい口調で言われた。
「な、何しにって…… 僕はたまたま倉石と途中で会っただけで………… 間宮さんも居るから行ってみない? って言われてここに」
「ふーん。 お前さ、友達いないだろ?」
「え?」
なんでお前にそんな事言われなきゃいけないんだ? てかなんでわかった?なんでわかった?
「お前みたいなネチネチした奴ってさ孤立して自分に関わるなオーラ出してるくせに寂しがり屋でさ。 本当惨めだよな」
「…………」
「あれ? 図星? はははッ、マジかぁ。 悪い悪い。 つかさと仲良いんだろ? 話してくれば?」
「…………」
「おーい、だんまりかよ? それ得意技か?」
この野郎…… 僕だって好きでこうなったんじゃないんだ。 だけどどこでどう間違ったのか知らないけどこうなっちまったんだよ! 最初から恵まれてるような連中と僕は違うんだ!
僕が何も言い返せないでいると僕と大城の目の前に影が掛かる。
ま、間宮さん!? 助けに来てくれたの? と思ったら顔をしかめた倉石だった。
「真、西野でもいじめてた? あんた趣味悪いよ?」
「違うって。 楽しく話してただけだよ。 なぁ西野」
「…………」
「西野はそんな感じじゃなさそうだけど?」
「あれ〜? こいつってつかさと仲良いと思ってたんだけど案外雫とも仲良いんだな?」
「はぁ? 私はつかさと友達だからそいつの事も見てたしなんとなくわかるだけよ」
「へぇ、そうですか」
大城も倉石も黙れよ! お前らなんかに僕の何がわかるんだ? 僕を本当にわかってくれるのは間宮さんだけなんだ。
「あれれ、いつの間にか雫ちゃんそっちに行っちゃって〜。 大城と新入りの西野の歓迎式かなぁ?」
「まぁそんなとこ」
大吉君が余計な事に僕にスポットライトを浴びせてしまった……
「よっしゃ! 任せとけ! 俺が西野を男にしてやるぜウェーイッ!!」
「おお! 男にしてやれ大吉!」
「へい! 西野カマァーンッ!」
「ちょ、ちょっと大吉、悪ノリやめろよ」
倉石の言葉も聞かず大吉が僕をみんなの前に立たせる。 何をさせようってんだ……
ま、間宮さん助けてくれ。 間宮さんに視線を送ると間宮さんはウインクをした。 え? それはどういう意味?
「フィヤウィゴッ!! ヘイ! セイッ!!」
大吉は僕に何かを求めた。 な、何をしろってんだ!? 僕に好奇の視線が集まりそれによって心臓がバクバク動き汗が出てくる。
「あ…… あの…… その……」
「えー、聞こえなーい。 なぁに?」
「麗華静かに。 西野君が何か言おうとしてるでしょ?」
間宮さんがそう言うと「チェッ」と言って黙る。 その沈黙が更に僕の心臓を高鳴らせる。 ヤバいヤバい、何か言わなきゃ……
「ぼ、ぼぼぼ僕は…… 西野勉です……」
「え?」
「は?」
「自己紹介?」
「ぷッ……」
「はははははッ! おまッ…… ぼぼぼ僕は…… 西野勉です…… だって! ははははッ、振り絞ってそれかよ、あははは」
1人が笑い出すとつられて笑いが起きた。 なんて仕打ちだ、間宮さんの言う通りだった。 僕がこんな所に来たら吊し上げされるに決まってたじゃないか!
僕はその場に居られなくなって鞄を持ってコンテナハウスから飛び出した。
「ちょっと西野!」
倉石が呼ぶ声が聞こえたがお前じゃない! 僕は間宮さんじゃなきゃ嫌なんだ、てかなんでお前?
コンテナから飛び出して少し走り電柱に寄り添った。 僕にとって地獄だあそこは……
「西野ーッ!」
振り返ると倉石が追って来ていた、だからなんでお前なんだよ!
「いきなり飛び出すなよ、ビックリしたじゃん。 まぁあいつらが100パー悪いけどさ、つかさもなんなのよ? いつも西野気にしてるくせに」
「間宮さんは悪くない。 もとあと言えば間宮さんはこうなるって言ってたのに黙ってついてきた僕が悪いんだし」
「それは…… そうかもしんないけどなんでこうなる前につかさは助けないんだか。 はぁ〜、あんたもバカだね」
「倉石は戻れば?」
「いーや、戻らない。 私もあんたを追って飛び出して来たんだよ? そんな空気じゃないわ」
「そっか、ごめん」
「…… 帰ろっか? つかさには私が後で連絡するから。 それとはい」
倉石は僕に僕の携帯を渡した。
「飛び出した時忘れてたよ? つかさが渡してくれたの」
「間宮さんが……」
ほら、やっぱり間宮さんは僕の事を見ていた。 それだけで少し救われて顔が綻ぶ。
「見てらんないよ今日のあんた。 だから帰るわよ、ほら」
「は?」
倉石は僕の肩を掴んで歩き出した。




