木ノ下 歩美
僕は今見知らぬ地味な女の子と一緒に歩いている、なんなんだこれは?
僕と同じで見た目こそ地味なもののこの子は少し僕とは違った、今もそう……
「それでですね、あたしったら…… あ、すいません、ペラペラとどうでもいい事を」
「別にいいよ」
「え? あ、はい! この前もそうだったんですが度が合ってないのかなぁこれ? 後で買い替えようかなって」
「ふぅん」
本当にペラペラとよく喋る子だ、僕はこんななのに楽しいのかな? 女の子と男じゃやっぱ似たような人種でも違うのかな?
僕が適当にあしらってもニコニコとこの子は話し掛けてくる。
コンビニへと行き、彼女がダメにした物を買い直す。 別にもうどうでもいいってのに。 それより早く帰って間宮さんを覗きたい。
こんな子に構ってる暇なんて僕にはないのだ。 今この瞬間だって間宮さんが何をしているか…… でも間宮さんの他にも僕にこんなに話してくれる子も居るんだな、根暗全開話し掛けてもつまんないですよみたいな雰囲気の僕に。
「今回は本当にすみませんでした」
「わざわざ買いなおして貰ってありがとう」
ようし、これでこの子から解放されて間宮さんに集中出来ると思いきや……
「あ…… ああッ!!」
おさげの子が慌てふためく。 な、何かあったのかな? 僕はなんだか嫌な予感がした。
「ど、どうかした?」
「な、ない…… ないんです!」
「…… 何が?」
早く帰りたい時にこの子の要領の得ない会話に若干イラッとした。 でもあっちが悪いとはいえ買い直してもらったので無下にも出来ないし……
「おじいちゃんに買ってもらったお花のブローチが…… どこ行ったんだろう??」
余程大切なものなのかその子は地面をキョロキョロと見つめ探し出す。 そんなん落ちてたらすぐわかりそうなものだしここら辺にはないな。 さてと、用も済んだし……
「僕も探すよ」
「え? ほ、本当?」
「ああ、大切な物なんでしょ?」
「あ…… ありがとうございます!」
僕はお節介を焼いた。 本来だったらこんなの放り出して間宮さんの所へ行くべきなんだろうけどおじいちゃんに買ってもらった大切な物なら仕方ないな。
僕は親よりもおじいちゃん、おばあちゃん子だった。 学校でいじめられて帰ってくるといつも2人に泣きついていた。
そんな僕の事を優しく頭を撫でてくれて慰めてくれたおじいちゃんおばあちゃんは今でも大好きだ、そんな2人も僕が中学2年の頃におじいちゃんが死んでその半年後におばあちゃんも死んでしまった。 今でも生きていてくれたらと思う。
そしてこの子も今必死になっておじいちゃんから買ってもらったブローチを探している、てことはこの子もおじいちゃんやおばあちゃんの事が大好きなのかなって思って僕は手伝う事にした。 間宮さんの所へは早く行きたいけど……
無視しようにもおじいちゃんとおばあちゃんの顔がチラつくから放っておけない。
「どうしよう…… どこいったんだろう」
「来た道戻ってみようよ?」
「はい……」
とりあえず戻りながら探してみる、もしかすると僕とぶつかった拍子にどっかいっちゃった可能性もあるしな。 ていうか大事な物ならしっかり持っていろよな。
ぶつかった曲がり角まで地面をくまなく見ながら歩いていると思った通りブローチが落ちていた。
「これじゃないの?」
「あ! そうです! よ、良かったぁ」
「誰にも取られてなくて良かったね」
「はい!」
ブローチを握りしめてその子は明るくニッコリと笑うと間宮さんがニコッと笑う姿に重なる。 ああ、僕にそんな表情を見せてくれるのは間宮さんとこの子くらいだな。
そんな表情を見ると探してあげて良かったなと思う、時間は無駄にしたしこの子には特になんの感情も湧かないけど、嫌ってわけではなかった。
「あー、あれってカップルって言うんだよー!」
「へぇー」
そんな時後ろから幼稚園児くらいの子供が僕達を見てそう呟く。 はぁ? と怪訝な顔をしてその子達を見た。
ふ、ふざけんなよ!! 僕には愛しの間宮さんがいるんだ! それなのにこんな奴が僕の彼女だと!?
「はわわわ…… ご、ごめんなさい!」
「ん? え?」
そんな子供の戯言におさげの子は何故か真っ赤になっていた……
「い、嫌ですよね、私みたいなのとそんな風に勘違いされるの」
「いや、僕もこんなだし。 てか君ってどこか行くんじゃないの? 僕の用足しに付き合ってもらってなんだけど」
「あ! そうでした!」
やれやれ、やっと帰れると思うと……
「あ、あの…… そういえば自己紹介がまだでした。 あたし木ノ下 歩美って言います」
なんだ? 急に自己紹介始めちゃったこの子…… もう会わないと思うけど。
「…… 僕は西野 勉」
「西野君…… ですか」
するとおさげの子こと木ノ下はモジモジとし始める。 なんなんだよ、なんかあるなら早くしてくれよ。
「ええと…… 連絡先交換してくれませんか?」
「は?」
「お、お願いします!」
「………… わかった」
あーだこーだ言うのも面倒なので連絡先を教えた。 なんで僕となんか…… 間宮さんで忙しいんだよ僕は。
「今日は本当にありがとうございます。 改めてこのお礼をさせてもらいます」
「んー、気にしなくていいのに」
だが木ノ下はまた今度と言ってその場から足早に去っていった、変な子だよなぁと思ったけど間宮さんを見るために僕も足早に家に帰った。




