第30話
「あ!? 弥生から写真、届いたばい」
「どれどれ……アハハ。クラーク博士と同じポーズ」
秋が訪れた。
修学旅行のこの期間、私は病欠ということで北海道へは行かなかった。
数週間前、鴨志田先生にそのことについて伝えようと職員室へ向かうと、廊下でバッタリ出会したので、「修学旅行のことで……」と、直ぐに話しを切り出した。
すると先生は、「あ~中牟田さん、そのころ風邪を引きますねぇ。ゆっくり『二人で』安静にしていてくださいねぇ」と、そう告げてくれた。
「――ありがとうございます」
私は先生の優しさに、深々と頭を下げた。
「……行かなくてよかったの?」
ベットの上で上体を起こす彼が、申し訳なさそうに上目遣いでイスに腰掛ける私に訊く。
「それより、君とデートしとった方がよかよ」
「これ、デートだったんだ」
「当たり前やん」
体重も、大幅に減ってしまったようだ。今では体の線に厚みというものが無くなってしまっている。
それに最近では、調子次第で車椅子移動もままあった。
「そういえば写真撮ったのって、これだけだったね……」
サイドテーブルに飾ってある、写真立てに収まるチェキへ、頬を緩めて彼は視線を預けた。
「……そういえば、そうやね」
私も部屋にある同じ物を同じようにして眺める。
「せっかくやけん、撮ろっか?」
「え!?」
「なん?」
「だって……」
「よかろうもん! 撮るばいっ!!」
「わっ!?」
そうして私は、スマホの画面を撮影モードに切り替えて、彼のベットに腰かけ頭がくっ付くほどに寄る。
(壊れそう、やね……)
触れ合うその肩が、山笠を一緒に見た時と比べると、遥かに弱々しくて、私の心を激しく揺さぶる。けれど私は直ぐにこれからを想った。
「弥生のあの言葉……なんやったっけ?」
「あー、確か萌え萌えなんとか……」
「そうだ! いくばい……萌え萌えキュンキュン、はい、チーズ――!」
カシャリと鳴ったその音に、私達の明日への願いを込めた。




