第16話
「甘露寺くん、よう似合うとるね!」
「ありがとう。何にする?」
まだまだ夏が季節を譲ろうとしない九月。
今日からの三日間、私達の学校では文化祭が催される。
「私は鮭のおにぎりと豚汁。弥生は?」
「梅のおにぎりと、アサリのお味噌汁お願いします」
おにぎりと汁ものをメインとする彼のクラスの入りは、上々のようだ。廊下まで漂う香りに素通りする生徒は少ないように映る
「古賀原さん達は、アニメイドカフェだっけ?」
メモ用紙に素早くペンを走らせると、対面で腰掛ける私達を交互に見ながら彼は言った。檸檬色のエプロンは、彼女が言ったように確かによく似合っている。
「甘露寺君も遊びに来てん。サービスばするよ」
「うん。もう少ししたら交代の時間になるから、そしたら行くね」
「え1? 君くると!」
彼は「もちろん」と言って、調理場としている教室の後ろへと戻っていきクラスメートに注文を伝え始める。すると、それを聞く内気そうな彼女の頬が赤くなっていくことに私は気付いて、何やら申し訳ない気持ちと見たくなさで視線を逸らしていた。
アニメイドカフェ。
話し合いの結果……というよりも、男子の熱量と低頭平身で決まった出し物。
まさか自分の人生でメイド服を着る機会がやってくるなんて思いもしなかった。ソックスはブラックのニーハイで問題ないし、レンタルの為の試着ではウキウキしていた。だけど、その姿を彼に見られることが恥ずかしい……と同時に見せたいという思いも湧いてきて複雑だった。
「栞、顔赤いばい。どうしたと?」
「へ!? 何もなかよ! ただちょっと恥ずかしい気がしただけっちゃんね!」
「……ん?」
「な、なんでもなかって……」
火照る顔のまま、(あの娘とどっちが赤いやろう)と、そんなことを考えた――。
「えーーっ!?」
私達は今、女子トイレへとやって来ていた。
「大丈夫ね?」
仕切りの向こうから、弥生が声だけを落としてくる。
(ちかっぱ薄か!?)
衣装のソックスは、まとめ買いをしていた。担当の女子から受け取って来たのだけれども、目にした瞬間から私は凍り付いていた。咄嗟にメイド中の女子を確認したものの、ハンマーで頭をかち割られたような気分になっていた。
発送ミスがあったそうで、ホワイトソックスなのだ。致し方なく履いてみたものの、(バリ見えとおやん!!)と、私は震えを起こしている。
体を九の字に見てみれば、くっきりとした歪なラインが現実逃避はさせまいと前側と外側に広がって見える。
数秒、ガン見すれば分かる……。
数センチ単位の痕が三ヶ所の膝の部分は、ピンク色のテーピングをその日の気分に合わせて貼っているので問題ないとしても、脛は到底カバー仕切れない。それに、そもそもテープを持ってきてないし、こんなの貼ったとしたら返って目立つ。
(重ねるかな……)
便座の蓋に置いたスクールソックスを睨む。
「栞?」
トーンの引く弥生の声がした。
「今でる!」と言って、数分後に私はドアを開けて出た。




