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エッセイ関連

ゆとり教育を馬鹿にすることが、自分は馬鹿ですと言っているに等しい理由

皆さんはゆとり教育をどれだけ知っているだろうか?

実はよく知らないゆとり教育。それがどんな教育方法かをつらつらと書き連ねていきたいと思う。


ゆとり教育世代、頑張れ!あなた達は何も悪くはないし失敗などしていない!

ゆとりとバカにされる謂れはない!

このエッセイは、ゆとりという蔑称を作中でもよく使われる方の多さにあきれて執筆しました。



1:ゆとり教育とは


まず、皆さんはゆとり教育と聞いてどんなイメージを持つだろうか?


大体は「授業時間を少なくすることで子供にゆとりを与える」だろう。


実はこれは表面だけしか見ていない。


コーラを飲むためにコップを用意した。そのコップを持つ手を見て、何を盗む気だ!と言うおっさんレベルで意味不明なイメージだと言っても訳が分からないだろう。


そう、授業時間を少なくして子供たちにゆとりを作る、というのはそのレベルでの勘違いだ。


なぜこういう勘違いが広まったのは後述させていただこう。


ゆとり教育の目的は、『より体験的な学習をするために、教育の場を学校から地域に移す』というものなのだ。


だからゆとり教育とは『体験的な学習』と『地域の教育力』のセットだと言われている。


学校での教育時間を少なくし、空いた時間で『学外で』『より体験的な』勉強を行う。それがゆとり教育なのだ。


例えば、フィンランドなどでは、学校が終わったら地域のお店や会社などに社会勉強に行き、『その場に居る大人たち』に直接学ぶのだ。


こうする事でより体験的で実戦的な勉強をすることが出来、かつ自分の住む地域に誇りを抱けるようになる。


更に地域の人々との交流で、犯罪率の低下、ボランティア活動の増加、地元の会社は将来良い人材を確保する事もできると良い事づくめなのである。


親などと子どもたちが知り合いになる事で、いじめの減少も報告されている。


この様に世界的にはゆとり教育の方が主流であり最新の教育論なのである。


ゆとりを馬鹿にすると言う事は教育を知らないのと同義と言っても過言ではない。


ここでタイトルに戻ってみよう。


ゆとり教育を馬鹿にすることが、自分は馬鹿ですと言っているに等しい理由とある。


これは教育学を知らないなどという意味ではない。


単純に『自分が子供たちに何も教えられない』と宣言しているに等しいという事だ。


ゆとり教育wwなどと言っているのはすなわち、地域(自分)で教育が出来ないぜwwと言っているのだ。


ここまで見事なブーメランもなかなかないだろう。



2:なぜゆとり教育が失敗したのか


次に、ゆとり教育が失敗した理由を書いて行こうと思う。


何故か。これは簡単だ。


『誰もゆとり教育という物が何かを知らずに始めた』からだ。


欧米で流行っているという理由で表面だけなぞったからだ。


1で述べた事から大体わかると思うが、社会構造から変えなければゆとり教育は達成できない。


受け容れて授業を行ってくれる会社やお店。趣味の釣りを教えてくれる人。何でもいい。とにかく『教えてくれる人間』が居なければゆとり教育は成り立たない。


それを知らず、文科省の人間は現場の教師に全て丸投げしたのだ。


なんと呆れる事に『ゆとり教育が何か調べる』ことまで丸投げした。


東京都の事例を挙げるが、文科省と東京都教育委員会がゆとり教育に関する講義を開いた数は、10年間でわずか『3回』なのだ。しかも十数人しか入らない個室で行われていた。


これでゆとり教育が何かなどと誰も分かるはずがない。


知っているのは当時大学で学んだ学生くらいのもので、彼らは社会を改革する力など持ち合わせていない。


失敗して当然なのだ。



3:世間の評価


知っての通り、ゆとり教育に対する世間の評価は散々なものだ。


テレビで擁護していたのは池上彰くらいのものだが、彼も授業内容は減っていないよ。円周率が3というのは間違いだよ。程度の物で、ゆとり教育そのものについてはまったく調べていないようだ。


話は逸れるが、円周率3というのは、計算がまったくできない子供は仕方ないから3で教えてもよい。もしくはとても計算が出来る子に、大まかに暗算による実践的な利用(例えば校庭の面積を暗算で算出する際)に3を使っても良いと指導するという部分を塾が大々的に取り上げてCMで流したことに端を発する。


そんなの間違いだろ、というのは学習指導要領をめくるか文科省のサイトに行くだけで否定できるのだが、マスコミやテレビに出る自称知識人たちはそれすらしなかったようである。知識人は字が読めなくて出来るのかと当時心配になったものだ。


現在ではゆとり世代、ゆとり、などと蔑称に使われているのだが、これについてもやや面白い誤解があるので後述させていただこう。


このような世代に対する悪口という物は、実はいつの時代にもある。


いまゆとり世代と言われている世代の前の世代がなんと言われていたのか知っているだろうか。


『落ちこぼれ』である。(スプートニクショックが起こって1971年に学習指導要領が大きく変更されてからゆとり教育世代までの事を言う。ちなみに筆者もその世代に当たる)


ゆとりよりなお酷い。まあ、自分の世代が言われた意趣返しを次の世代にしているのだろう。


頭のいいゆとり世代の諸君はこのような無様な真似をしない事を期待する。



4:学力が下がったわけ


当時を知る人であればマスコミが散々国際的な順位が下がった!ゆとり教育のせいだ!と騒いでいたのを覚えているだろう。


何故下がったのか。


非常に簡単である。


テスト問題が大きく変更になったのだ。


日本人が得意とするのは単純な数式や問題である。(例えば3+3=?などの問題が多数羅列される方式が得意)


その問題が大きく削除されたのだ。


そして文章題などが追加され、点数配分もそちらが大きくなったのだ。


これは当時の主流が『考える力』を大切にすることだったからなのだが、欧米はこういう文章題に強く、日本は弱かった。


しかもこれだけではない。


日本の行っていた教育が世界に比べて早すぎると一学年下の内容がテストとしてだされて児童生徒が大きく混乱したのだ。


小学4年生のテストを例に挙げよう。


問、縦4㎝、横3㎝の長方形があります。この外周の和を求めよ。


この様な問題が、当時最も不正解が多かった問題だ。


何故?と思われるだろう。理由は簡単だ。当時の小学四年生は『面積』の勉強をしていた。


なので答えに『12平方㎝』と書いてしまったのだ。


しかも塾に行く子どもほどこのように間違えてしまう傾向が多かった。


テスト対策で素早く問題を解くには問題を読まずに○○と書いてしまえなどと指導する事が多いからだろう。


ちなみに日本では外周の学習は三年生で行う。


これを受けて問題をしっかり読めよと指導したので後半じょじょに順位も回復していった。



5:ゆとり教育の歴史


ゆとり教育は昨日今日始まったわけではない。


実は戦後からすでに始まっていたのだ。


体験的な学習の方が、詰込み型の教育よりも良いというのは戦前から言われ始めていた。


そして戦後『ゆとり教育が導入され』、スプートニクショックが起こるまで戦後の人々は『ゆとり教育で育った』


川口プランなどで検索して貰えばわかるが、体験的な学習というものは当時から色々と試行錯誤が行われていたのだ。


ゆとり世代wwと言ったら、今の50~70代も入ってしまうというわけだ。


ちなみにこの後スプートニクショックが起こり、詰込み型教育へと舵を切り、教育格差を生み出して『落ちこぼれ』などと言われるようになってしまい、再びゆとり教育へと戻ったと思ったらマスコミが騒いで詰込み教育となってしまっている。


この迷走っぷりはもはや何も言えない。




以上でゆとり教育について軽く触ってきたが、ゆとりwとバカにする者は教育を知らないものだと思って心の中で馬鹿だなと思っておけばよいだろう。


話し合う機会があるのならば『体験的な学習』と『地域の教育力』の二本柱で構成されてるけど知ってる?とでも言えば相手は返す事すらできないだろう。


以上、落ちこぼれ世代からのゆとり世代擁護のエッセイでした。


読了ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 外周の答え14だぞ 義務教育からやり直せ
[一言] というかゆとり時代を馬鹿にできる世代の年齢を考えると悲しくなる。そんな年齢になってまでもそんなことしてるなんてなんて立派な老害になったんだって
[一言] 2008年に発表された井尻麻衣子のゆとり教育に関する論文だと普通に試験内容の変わらない国際機関のOECDの学力調査でも順位落ちてるって報告されてる筈何だけど? フィンランドと一緒にな。 …
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