ケイドロ久しぶりにやると結構ハマる。
「見つけた」
俺たちは今ケイドロをやっている。
今おこっていることを簡単に説明するなら大島くんが屋上から飛び降りて、怪我もなくピンピンしてて、そのあまりの驚愕に思考が追いついていないのが今だ。
「うおーー!!逃げるぞ優哉、佐倉!」
最初に動き出したのは達久だった。
「あ、ああ!」
俺も無理やり思考を戻し、先に逃げる達久に追おうと足を出すが、
「きゃっ!」
その声に俺は足を止め、声のした方に振り向く。どうやら佐倉さんあまりの驚きにしりもちをついてしまったようだ。
「佐倉さん!」
くそっ!助けるか?・・・いや助けなくてどうすんだよ俺は!そう思い佐倉さんを助けるため走り出そうとしたら、後ろから達久に腕をつかまれる。
「逃げるぞ!」
「なにいってんだよ!佐倉さんを助けないと!」
「俺は!佐倉の死を無駄にするなと言ってるんだ!」
「いや、大島くんにつかまっても佐倉さんは死なねーし、勝手に殺すな」
冷たいツッコミをいれてやると、冷静なツッコミがとんできてびっくりする達久。どうやら激しくツッコんでくれると思っていたらしい。少し寂しそうな顔をしている。どうでもいいわ!!
それにしても達久が言っていた無駄にするなとはどういう意味なんだ?
じゃない!はやく助けないと!
「待てって言ってるだろうが!」
「かばってでも助けてやらねーと!」
「さっきお前が言ってただろ、別に佐倉は死ぬわけじゃねえ、優哉ケイドロのルールを思い出せ!付け加えがあってもルールは全体的に変わってねーんだ。後から助けにいってやればいい!」
「でも、でも!」
「今はお前の出る幕じゃねーんだよ、行ったらむなしくなるだけだぞ。おっ、始まったみたいだな見てみろよ。」
間に合わなかったらしい、せめて達久がなにを伝えたかったのかを見ることにした。
俺は今から起こることにむなしくなって、さっきまであんなに熱つくなっていたのに、いっきに冷めました。
「あ、碧ちゃんごめん!大丈夫?」
「う、うんちょっとビックリしてしりもちついただけだから。怪我もないから大丈夫だよ」
「よかった本当にごめんね、立てる?手かそうか?」
「ありがとう。迷惑かけてごめんね」
「気にしないで」
「えへへ、本当に大島くんは優しいね、あっ」
「ど、ど、どうしたの?やっぱり怪我してたの?いたむの?」
「違うの、ほら私捕まっちゃった。」
「あー!ごめんね!」
「捕まったら牢屋に行かなきゃね、場所教えて?」
「あっ、俺送ってくよ!」
「ありがとう、じゃあお願いします。け、警官さん」
「う、うん」
冷めた熱はあとかたもなく消え今は逃げるんじゃなく、手で顔をかくし後悔してます。恥ずかしー!
後ろから達久が「一番楽しんでんのもしかしたら優哉かもな」とか聞こえたが無視する。
「な?お前の出る幕は無かっただろ?」
「そうだな、あの二人いつもあんな感じなの?背景に花が出てなかったか?」
「あぁ普段からあいつらはあんな感じだ。佐倉はさぁあれ天然でやってんだぜ、しかも大島にだけ」
天然か、そう言われればすごくしっかりくるな。
「ほら、今のうちに逃げようぜ」
「そうだ・・・」
「そうはさせないわ」
二人して背筋をビクつかせる、忘れてたそういえば大島くんが来る前先に一人の女性から逃げようとしていたんだった。
陰谷 鳴美さんからだ。
「捕まえたわダーリン!」
「そうはいくか!」
と、達久は陰谷さんが伸ばしてきた右手を一歩後ろにさがって右にサイドステップをして、さらに体を捻ることでなんとかかわせた。かなり陰谷さんとの距離が近かったはずなんだが人間技じゃないな。
「どうしてよけるの?ダーリン」
「いや今そういう遊びをしてんだよ!それにいつものお前のことだからハサミとか持ってるとおもったんだよ!」
「大好きなダーリンにハサミを向けるなんてしないわ!」
「いつもなにかあったら向けてくるだろうが!」
「もういいわ!なにがなんでも捕まえてあげる」
「「ひっ!」」
彼女の目のハイライトがオフした瞬間に俺と達久は同じに恐怖する。
ハイライトが消えたとともに彼女は気づけば達久との距離をつめていた。たんだよ能力解放でもしたのか?
陰谷さんは達久の顔めがけて左手をのばしてきている。さすがに反応できないかと思ったが、達久はなんと頭を下げてそれを回避、俺も目で追うのがやっとなくらいだった。いや、すごすぎだろ!
捕まれなかった陰谷さんは悔しいのか舌打ちをする。
達久々はなんとか陰谷さんから距離をとって、右へ回れをしてそのまま全力疾走する。彼は一度顔をこちらに向けて、
「優哉!俺はこいつから逃げなきゃなんねー!すまねぇが一人で逃げてくれやー!1つ監視カメおわーー!!」
「あ、ああ」
最後なんて言ったんだ?いいか。
陰谷さんっていったい何者なんだよ、確か元陸上部の達久によくついていけるな元美術部。
「これからどうしよう」
俺は今大島くんに追われている。達久とは別れて5分くらいたったはず、さっきから大島くんとは逃げきっては、見つかっての繰り返しをしている。
なんだこれはたまたまか?
今は西棟2階から階段を二つ飛ばしでのぼり左に曲がって東棟の3階来ている。東棟はクラス教室のある場所だ、ここは三年生の教室がある階だ。
もう大島くんは階段をのぼってきたようだ。。近くにあった教室にしずかに入り、教壇に隠れる。
「ちくしょ!なんだってんだよ!?」
大島くんが俺のいる教室の前まで来ると扉の前に止まるがすぐに移動する。
逃げきれた。大島くん身長でかすぎるから迫力半端ねぇーんだよな。なんとか大島くんの追跡から逃れることができ安堵する。
本当になんでこんなに大島くんと会うんだよ!俺は教室からでて廊下に出る。
「・・・!」
まただ、人に見られている気がする。
ゆっくり目線だけを後ろに向けるが後ろには誰もいない。
誰もいない、だがこれは気のせいじゃないことを俺は知っている。最初に見られている感じがしたのは5分前くらいからだ。
達久と別れて一人になってからだ。
それにこの目線を感じたあと必ずと言っていいほど大島くんと出会う。
綾瀬さんでも見ているのかと思うが、それは無いだろう。今陰谷さんは達久とラブラブおいかけっこをしている。それにさっきから俺を追いかけるのは大島くんばかり、なら綾瀬さんは?もう牢番しかない。
今は牢屋に佐倉さんがいる。誰も捕まっていないのなら分かるが、今は佐倉さんが捕まっているのに俺を監視して・・・そういえばあいつらケイドロで何を持ってるんだっけ?
イヤホンマイクと、パソコン・・・!いやっでも。
そういえば達久のやつ最後らへんになんか言ってたな~、なんだっけ?確か、
『優哉!俺はこいつから逃げなきゃなんねー!すまねぇが一人で逃げてくれやー!1つ監視カメおわーー!!』
監視カメ・・・監視カメ・・・監視カメラか?そういえばこの学校監視カメラ多いな~・・・!!
パソコンに監視カメラ!おいおいまさかだろ?でも同じチームなのにわざわざ嘘をいう意味あんのか、それにこの学校はネット環境だってあるって、朝自己紹介のあともみくちゃにされながら誰かが言ってた。
だが、綾瀬さんならやりかねないな。
本当にそんな事ができるのか?あー!もう!悩んでるくらいならためしてやらー!!
俺は東棟3階の長い廊下には3つの監視カメラがある。その内の真ん中にあるカメラの前に立つ。もし俺の考えが当たっているとしたら大島くんが来る、すぐに逃げれるように腰を低く構える。
「頼む!俺の考え当たるなよ!」
待つこと2分大島くんは現れない。
視線は感じる。いつもなら視線を感じて最低でも30秒で大島くんが来るのに、やっぱり気のせいだったのだろうか。
腰をあげ、とりあえず移動しようと動き出そうとした時だった。
窓が開いている。
気づかなかった。まぁ仕方ないか気をはってたからな。俺は窓を閉めに近づく。
この行動に俺は後々後悔する。
俺は窓の前に立ちレールに手を乗せる。あぁ今日も綺麗だ。俺は朝、夕方、夜の中でどれが一番好きかを聞かれたら即答で夕方がと言うだろう。
昼はいつも清々しいくらいに青い空なのに、夕方違う当たり前だが、綺麗に空一面に茜色が広がり短い間その姿をうつし儚く日は沈む。沈む姿に俺はいつも心を奪われる。はずもない。
俺はそんな人間じゃないからね。でも、夜はすきだけど。
窓から入る風は涼しく、ケイドロでほてった体を冷やす。
そして黒い影は俺のさっきまで見ていた景色を遮り下へと落下していく。ん?黒い影?
下を向くと、大きな右手は窓のレール、俺の手と手の間にある。
手?・・・!!ここは3階で上は屋上だ。屋上から飛び降りることの出きるやつはこの学校に一人だけ。
今の俺は凄い汗だろう。ここではやく逃げればいいものを俺は。
下を覗く。そこにいたのは、やっぱりだ・・・
「や、やぁ大島くんうぉ!!」
大島くんは反対側の左手を伸ばし俺を捕まえようとするが、俺は後ろに頭を反らしその手を回避する。
大島くんが伸ばした手を下の窓のレールおろし、両手で体を持ち上げ窓から入ってくる。(※良い子の皆は真似しないでね)
入ってきた大島くんのあまりにも凄い迫力に俺はしりもちをつく。足は笑い立つに立てない。
くそ!立てよ!うわーなんか目までかかる前髪から覗く目が凄い怖い!彼自身も屋上から飛ぶのは緊張していたのかも。下手したらいつもなピンピンが、大ケガになるかもしれないのだから。
「た、助けてくれ。」
気づけばそんなだらしのない声でそんな事をいっていた。
「鈴峰捕まえ・・・」
「優哉ーーー!!」
捕まる寸前で、誰かが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「優哉ーー!!」
声は徐々にに近づいてくる。が俺はその声の主を知っている。
俺にとっての最初の友達────。
「優哉ーー!!」
夏目達久だ。達久がきた。
まだケイドロおわらない!
ですが、次回でさいご!ケイドロが!