彼女の優しさに罪悪感が半端ない!!
最後の部員の登場です!!
「ワイの名はな、牧島 華芦、よろしーくっねニヒー」
礼から徐々に顔を上げる彼、牧島 華芦さん。
彼が少しずつ見せる顔は、歪んだ笑顔。少し引いた。
引いていた俺の横から、ヒソヒソと綾瀬さんが声をかけてくる。
「やっぱり、わかってたけどあなた、彼の笑顔に引いたでしょ」
「い、いや引いてないよ」
いきなりの図星に、つい嘘をついてしまう。
「うっそ、鈴峰君、おもいっきり『引くわー』って顔してたもん」
嘘ばれた。俺は分かりやすいくらいに顔に出していたらしい。
「まぁ、しかたないわよねぇ・・・・私も最初らへんは引いたし」
「ひっど!人んの笑いかたをバカにせーなんで!」
「「うわっ!・・・・いつのまに」」
そろった!そろった!
いつのまにか近づいていた牧島さん。
思ったんだが彼のしゃべり方誰かを思わせる。
誰だっけ?
まぁいいや。
「んにゃぁ~?どなかしたん?」
考え込む俺に顔をよせて伺ってくる牧島さん。
近い近い近いっ!!
彼は天然パーマ?で片目を隠し、出ている目は鋭い目つきだが下まつげが長いせいなのか少し柔らかさが出ている。鼻はスッと通っていて口角はニタニタと持ち上げている、少し面長の顔だがカッコいい部類だと思う。
服装は学生、ブレザーを着ないで白衣を上から着ている。袖は白衣ごと、ズボンの裾も雑にまくっている。
背負っているのは黒色で小さめのリュックサックだ。
いまさらなのだが、俺の学校は顔のレベルが高い人が多い。
男子は大島くんや牧島さん・・・・達久もか?などなど
女子は綾瀬さんや雪子さん、などだ。
俺は漫画やアニメの世界に迷い混んでしまったのだろうか!
再び考え込む俺に心配でもしてくたのか牧島さんがさらに顔を近づけてくる。
うわっなぜかいい匂い! お花の匂い!
「すっ、すいません!なんでも無いんで、離れてもらえましぇんか?」
噛んだ、あわてたから噛んだ。くそっ!妹の前でしか噛んだことなかったのに!!
「あっはっは~、そうかい、ならいいさ~」
あっこの人いい人だわ。噛んだことに気づいてないフリしてくれてるわー、綾瀬さんとかなら、
『今噛んだわよね、プッ噛んだわよね~』
とか言いそ────、
「今噛んだわよね、プッ噛んだわよね~」
言ったよ。本当に言ったよ、泣いちゃうぞ~!
「イヤイヤ~今んのは気づいてないフリしだんだ、ふれたんらダメやろんが」
「いいのよ、あーゆうのにはストレス発散に使わないと」
「ひどいっ!!」
彼女にとっては人の失敗は密の味とか言うやつか!んだよ!
もう、帰りたい!
「まぁどうでもいいけど行きましょ」
「はぁーあ、そうやんな行こ行こ」
そうだね、綾瀬さんにとってはどうでもいいことですよね~。
でも少しは慰めて。
「慰めてって顔してもしないわよ」
「俺ってそんなに顔にでてるの!?」
「出てるわよ、わっかりやすいくらいに」
「そ、そうですか」
前に妹もそんなこと言っていたな。
でもあのときは、兄妹だから~って思っていたんだが、他人でも気づけるらしい。
誰かっ!!教えてくださぁい!!顔に感情を出さない方法をっ!!お願いしまぁーす!
牧島さんの家から何分か歩き学校の校門をぬけた辺りで、
「そう言えば鈴峰君、あなた昨日姉さんを怒らせたらしいじゃない」
唐突に今ふれられたくたい話題を振られた。びっくりだ。
「ほぉ~おう、あの雪子ちゃんをね~」
牧島さんの鋭い目つきがよりいっそう鋭くなり睨み付けられ、背筋に一筋の汗が流れる。
「はい、綾瀬さんのお姉さんを怒らせてすいま────」
「すごいわね」
と、俺の謝罪を遮ったのは綾瀬さんだった。
「えっ?」
「いやあなた鈴峰君凄すぎるわね、あの姉さんのツッコミを回避するだけじゃなくて、怒らせるなんて」
「はっ?」
「そ~だね、雪子ちゃ~んは怒らなん人で学校じぁ~有名人なんやんよ」
「へ、へぇー、そうなんだ」
「うん、家でも怒らないし、最後に怒ったのはいつだったかしら?まぁそれでもかなりすごいわよ」
「うんむ凄いよ、凄いよ~」
へー知らなかった、そんな有名人だったんだ。俺はそんな人を怒らせてしまったんだ。
少しどころか、心が重く苦しくなる。
「本当すいません」
俺は少しでも重さをはらうために、謝罪の言葉をもらす。
「そうね、あなたのが謝る気持ち全然分からないけど分かるわ」
分からないけど分かるってどういう意味っすか?
「でも、姉さんのいない今に気持ちを軽くしようとするその考えは気にくわない」
どうやら、わかっている、らしい。
「ここでちょっと軽くするくらいなら、姉さんに直接謝って一気に軽くしなさい、大丈夫よ姉さんは起こってしまったことに気にしてたわ、なんで怒らせたのかは聞かなかったけどちゃんと謝ってスッキリして、楽しみながら部活しなさい」
「う、うん」
「でもね、これだけは忘れないで。もう二度と姉さんを怒らせないで・・・・あの人を普通に話させないでね」
「うん、わかった」
「はい!これでこの話は終わり!私は牧島君と部室よるから、先に部室行ってて」
「ああ、了解」
そして俺は二人と別れ教室へと向かう、別れる前に牧島さんが俺の背中を叩かれ、口パクで『頑張れ』と言ってくれて少し嬉しくなった。
そして、放課後────。
授業中は全くと言っていいくらいに集中できず、達久やクラスの友達に話しかけられるが何て言っていたのか全然覚えていない。
あいつらにも明日しっかり謝ろうと、達久には今のことが終わったら謝ろうと心にとどめておく。
今は部室前にいる。これ、何回目だろ・・・・
「ふぅ~、・・・・よしっ!!」
気持ちを整えドアノブをひね、教室へと入る。
人の気配はあった弱々しかったから、佐倉さんだろうか?
あっ、別に佐倉さんが弱々しいってことじゃないよ!!本当に!
「お、お疲れ様でしゅ」
あまりの緊張に本日二度目の噛みをしてしまった。
うわー恥ずかしい!あまりの恥ずかしさに入ってすぐに目を背けてしまう。これが佐倉さんとかだったら滅茶苦茶恥ずかしい!!
だが、誰からも返事がこない、もしかして誰もいなかったのだろうか。
背けた目を前へと向ける。
「!?」
そこにあった光景は、一言で言えば『恐怖』だ。
そこは二人の姿があった。
窓側に頭を向け血を口から溢し、顔色が青白く横たわる雪子さん。
その右横に立っているのはハサミを左手に持ち静かに倒れる雪子さんをみつめる陰谷 鳴美さん。
「・・・・あっ」
あまりの驚愕と恐怖に俺は床にしりもちをつく。
俺が入ってきたことに気付かなかったのか、目を大きく見開きながらこちらに振り向く。
どうすればいいのかわからない。雪子さんを連れて逃げたくても腰がぬけたのか立てない。腰がぬけてなくても、恐怖で動けなかっただろう。
だが、これは仕方がないんだ。化け物の恐怖をあじわったことがあっても、同じ人間の恐怖はあじわったことが無いのだから。
この状況で動けるのは漫画世界の奴らくらいで、ここはそんななんでもありの世界じゃないんだ!ここは動けないのは当たり前なんだ。
「・・・・ええ~・・・・」
あまりの恐怖に情けない声が漏れる。
そして陰谷さんはハサミを持ち上げ、俺へと近寄ってくる。
一歩、一歩と近づいてくる足音が教室内に静かに響き。
そして俺の前へと立つ。
俺は頭の上で腕を交差して、涙をこらえ目を閉じ、頭の位置を低くする。
意味の無い行動だと言うのは分かっている、分かっているがついやってしまった。
これがもし、ドッキリとか言われたら窓から飛び降りたくなるだろう。
いやお願いします!ドッキリと言ってください!死にたくないんだ!
そう強く願っていると、ハサミと重たい物が床に落ちた音が聞こえ軽く目を見開く。
そこにはハサミを捨てて、俺に涙目で俺を見て座り込む陰谷さんの姿があった。
そして彼女は俺の肩を掴み、
「私は殺ってないの!本当なの!私じゃないの!!」
そう俺にうったえてくる。
「はぁ?」
最後はサスペンス風の終わりかた。
なにがあったのか!
次回もお楽しみに!!




