たまたまです。はい、たまたまです。
昨日俺は初めて会った女性を怒らせてしまったらしい。
らしいではない、怒らせてしまった。
なぜそう思うのかは綾瀬 雪子さん自身の行動でなんとなくだが気付き、出ていった彼女以外の部員である大島君、佐倉さん、そして達久の出していた空気でやっとわかった。
雪子さんって怒ったらああいう感じなんだ。
ときどきなんて言っているのかがわからない口調ではなく、普通に話していた。でも、怒っているときの彼女の顔は苦しそうに少し顔を歪ませていた。
その歪みは俺への怒りがそうさせたのかと思うと登校中の俺の周りの空気は重たくなる。たまにすれ違う人は俺を心配そうな顔で見る人や、鬱陶しそうにする人俺の顔を覗きこんでくる女性がいた。
ん?・・・・覗きこむ?
「うおっ!!?」
「やっと気付いた?」
俺の顔を覗きこんでいたのは、俺が怒らせた姉の妹である綾瀬 古町だった。
「えっなんでいんの?」
普通なら登校しかないだろと、思うところだろう。しかし、今の、現在の時刻は4時である。
学校はまだ開いてないのは当たり前で、時々すれ違う人はランニングをする人のみでサラリーマンやOLすらいないのだから制服を着た学生が歩いているはずがない。(たぶん)
この時間帯ならばクラスの知り合いなどに会わず一人でゆーっくり時間をかけて登校出来ると思って無理矢理ではあったがなんとか家から出てこれたのだが、最近の学生はこの時間にもう登校しているのは普通なのだろうか?
とりあえず俺は今思い浮かべた疑問を綾瀬さんに質問する。
「なあ綾瀬さんよ、まだ朝早すぎだと思うのだが」
綾瀬さんは、最初「ん?」と言いながら不思議そうに軽く首をかかげていたが、何かを理解したみたいに手を打ちながら答えてくれる。
「ああ、そうね。今日はたまたま早く家を出てきただけよ。よらなきゃいけないところがあったからね」
だそうだ。
知ったことではないが、来てもらう人はこんな早い時間は困るんじゃないだろうかと思うんだがな。どうでもいいけど・・・・。
「何となくで聞くが、寄るところってどこなの?」
「ん?・・・・ああいいわよ教えてあげる」
綾瀬さんの顔に少しだが影がはいる。
「・・・・お母さんの墓参りよ」
おっとやってしまった。
「す、すま────」
「なーんてね、ただの幽霊部員の家にいくだけですよー」
・・・・・・・・。
「なに固まってんのよ、あんなのジョークに決まってるでしょ、ジョーク。お母さんは今もピンピンしてるわよ、あれはまだまだ死なないわね、うん」
「いやいやジョークにしても程度があんだろ、家族になれば余計に・・・・」
「しらないわよ、他人の家のことなんて、私は常に冗談を言うときは相手が驚くものしか言わないことにしてるの、それに時々にしかいわないもの」
「はぁ分かりましたよ」
俺は額に指をたてて『頭が痛い』のポーズをとりながらため息を吐く。
「てか、こんな時間から行ったら相手に迷惑じゃないのか?」
「約束してなかったらね、私はちゃんと相手に迎えに行くって伝えてあるもの」
「ならいいけどよ」
「そういえば、まだあなたは彼に会ってなかったわよね?」
「ああ」
「ならちょうどいいわね、鈴峰君もついてきて、ついでに紹介するから」
どうやら綾瀬さんは俺に最後の部員に会わせてくれるらしい。
ここに来て初めて知る家は、俺の会ったことない人の家らしい。これはいつか笑い話に使えますか?
「で、そいつの家ってどこにあるの?」
「ここよ」
「?・・・・あぁここがそいつの家か」
「そうよ」
もうついてました。
幽霊部員の家はよく見かける普通の壁は白く屋根の赤い家だった。
綾瀬さんが幽霊部員を呼び出すためインターホンを押す。
『あいあーい?』
インターホンから男の声が聞こえる。この声の主が幽霊部員だろうか?
「わたしよ、迎えにきたから出てきなさい」
『りょーかーい』
それを最後にガチャッと切れた。
待つこと数分。
待っている間は綾瀬さんと世間話をしていた。
「いやー、ごめん、すまん、すいませんー、待たせたかーい?」
「いや、そこまでまってないわよ」
「そうかいな、そりゃあよかったんよ」
癖のあるしゃべり方の男が出てくる。
「そいつぁーは誰なんよ?」
「ああ、そうだった紹介するわ、わたしたちの新しい部員である鈴峰 優哉君よ」
「どうも」
男は右に手を顎に鞄を持った左手を腰にあてて俺を見る。
「ほーほぉーぉ、きみがか」
「・・・・えーっと」
「おお、すまんよ、ワイの自己紹介しとらんだな」
そして彼は胸に手をあて、頭を下げてこちらに徐々に顔を上げながら、
「ワイの名はな、牧島 華芦、よろしーくっねニヒー」
新キャラ牧島 華芦。
一体何者なのでしょうか?自分もわかりません。
では。




