4月17日(日) その3
たかの湯へ着くと夜8時過ぎであったが、かなり長蛇の列…。遅く行けば、多少は空いているだろうと思っていたが、甘い考えであった。
ここでもスマホが暇つぶしに大活躍である。ライングループでのやり取りやゲーム、ネット検索などをして、ひたすら順番を待つ。
たかの湯の営業時間は夜11時までなので、大丈夫かな…と思っていたら、9時過ぎに職員の人が「ここで終了です」と書かれた札を持って列の最後尾へと向かっておられた。
よし、次は一人ではなく誰かと一緒に来よう。それでも、男性は早く風呂から上がる人が多いので、女性よりも早く風呂に入る事ができた。最初は一列だった列が銭湯の手前で、男女別に分かれる仕組みである。
女性は
「髪を洗うのに時間がかかるし、子どもも見らんといかんからね…」
とつぶやくのが聞こえた。
私は独身だから、その辺り事はよく分からない部分もあるが、震災時の女性への配慮は至る所で必要だと感じた。
久々の風呂は実に気持ちよかった。髪や体を洗う事がこんなに気持ちいいとは…。当たり前の生活を失ってから、改めて気付く日常生活のありがたみである。
大きな湯船に浸かると、実に心地よい。湯船につかっている間だけは震災の事を忘れる事ができた。
「男性の皆様、申し訳ありませんが、あと10分ほどで、こちらも女性に開放します。準備できた方から上がって下さい」
店主の一言で現実へ引き戻される。男性は全員風呂へ入れたが、女性はまだたくさんの人々が外で待っていた。私は急いで脱衣場を後にする。
「ありがとうございました!」
そう言って、銭湯の方にねぎらいと感謝の言葉をかけてから外に出る。外に出ると、女性の列はまだまだ続いていた。
「大変お待たせ致しました。今から男風呂も女性の皆様に開放致しますので、前の方から順番にお入り下さい」
店主の声が外に響いた。それを聞きながら、私はたかの湯を後にする。帰り道、電灯が壊れているのか暗い所がたくさんあった。
何より、至る所にあるコンビニが全て閉まっている。コンビニはいつも開いているのが当たり前になっていて全く気付かなかったが、コンビニの明かりがないと辺りがこんなにも暗くなるなんて…。
地震がなかったら、知る事も無かっただろう現実がここにある。