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盗賊狩り 2

自分で言うのもなんですが、この主人公、気持ち悪いですね。

それでも、私の望む結末のためにもこの主人公には、哀れに、愚かになって貰います。

「お、おい…。

お前…。」



クロの声がする。

なぜか少し震えていて、距離をとられていた。


「どうしたの?」



…。ベタベタするなぁ、さっきの男二人の返り血をまともに受けちゃったからかな。



それにしても、「喜び」の感情というのは凄い。

全く未知の感覚だった。

一度知ったらもう二度と手離したくなくなってしまうほどに。


今もあの感覚が忘れられない。

この焦がれるような感覚も今までに無いものだった。


普通の人間はいつもこんな感覚を持っているのか、いいなぁ。

とても、羨ましいよ。



羨まし過ぎて、殺したくなる。




あ、そうだ、剣も手に入れたことだしこの際、この先の人間二人も殺してしまおう。



考えるだけでヨダレが止まらなくなりそうだ。



「ねぇ、クロ」



「なんだ…。」


「この先にあと二人いたよね。

今どこにいる?」



「さっきの場所から離れてねーよ。

どうするつもりだ。」


「勿論、殺しにいくんだよ。

この通り、剣も手に入れたしね。」


「だが…。」


クロはなにか迷っているらしかった。

もともとこういうつもりだったんだし、迷う事ないのに…

変なやつだね。


「んー、移動手段は…。

コイツらの馬を貰っていこうかな。」


そう思って男達が乗っていた馬を探す。


すぐそこに1頭見つけた。

たぶん痩せぎみの男が乗っていた馬だろう。


小太りの男が乗っていただろう馬は小太りの男が切りつけられた時のショックで既に遠くに逃げてしまっていた。


とりあえず馬を捕まえるために近寄っていく。


馬はビクリと反応すると視線をこちらにやり、あからさまに威嚇し始めた。


あれ?こんなに嫌われるとは思ってもみなかった。

僕は動物に好かれるほうでもなかったけど、嫌われるほうでも無かったのに。


ともかく、あの状態じゃ乗馬は無理かな…。

蹴られて骨折するのは嫌だし。


差し出しかけていた手を引っ込めるとそのまま歩を返した。


やっぱり歩くしかないのかな…。


再びクロを見るとまだ同じ場所にいた。


「馬は無理みたいだから、また歩きだね。

早く行こうよ。」


「あ、ああ。」


なんだか歯切れの悪い返事をするなぁ。


クロも罪人なんだから、それなりに非人道的な経験もしてるはずなのに、もしかして僕がさっき二人殺したことに怯んじゃった?


まぁ、いいか。

でも、もしそうなら面倒だな。


そう思いながらも歩き出した。


あと二人がいるだろう方向へ。


たしか、3キロ先とか言ってたな。

走れば10分でつくだろうか。

妙に待ち遠しい。


期待しているのかもしれない。

とてもドキドキしている。

胸が高鳴るとはこういうことなんだろうか。


よし、走ろう!


全力の60%くらいの速度で走り出す。


クロも速度を上げたようだ。

少し後ろを一定の間隔を空けて着いてくる。


速度を抑えて走ること15分。


視線の先で一台馬車を発見した。


抑えて走ったこともあって、さほど疲れていない。

いい準備運動になった程度だ。


馬車には二人の人影があって、何やら話し込んでいるようだ。



はやる気持ちを抑えながら二人にバレないように死角から回り込んで近付いていく。


距離が10メートル前後になった頃から、少しずつ二人の会話が聞き取れるようになった。


男二人かぁ…。

さっきのやつの仲間だよね?


もうすでに血の匂いがするなぁ、そういえばここにくる前にクロが一人死んだって言ってたっけ。



「商人つーから期待したのに期待ハズレだったな」


「だな。まぁ、あの商人、奴隷商人だったみてぇだったから金はたんまり手にはいって良かったじゃねぇか。

今頃村じゃ、その商品も取っ捕まってる頃だろうよ。」


「まぁ、そうだな。

それだけでもよしとすっか。

ジョニーが帰ってきたらこの金もって引き上げよう。」


「へぇ。あいつジョニーって言うんだ。」



ゆっくり近付いていったら話に夢中で気づかなかったみたいだから声を掛けてあげた。


それと同時に向かって右側の男を切りつける。

悲鳴も上げずに崩れ落ちる男。

その隣で慌てて剣を抜こうとする左の男。




あ、来た。

この感じ。

そうだ、僕は「嬉しい」んだ。


ついさっきの出来事だったのにもう随分焦がれていたように感じる。

ああ、さっきから笑いが止まらない。

口元がつり上がる。

気分がいい。


なんだか、とても調子がいい。

頭が研ぎ澄まされたみたいに、冴え渡っている気さえする。


目の前の男さえもスローモーションで見えた。


さっきはそんな余裕も持てなかったけど、今なら何だって出来そうな気さえする。


最高に気分がいい。


男が振り上げる。降り下ろされる軌道をみて、剣の腹で受け流した。

男がバランスを崩して前のめりになる。

それを半身になってかわして、横から切りつけた。


「ぎゃっ」


男は小さく悲鳴を上げると、そのまま倒れこんだ。

僕はそれをみて、とどめに心臓をひとつきする。


「あぁ、いいね。」


男から止めどなく流れる血を見て、にんまり笑う。


読んでいただきありがとうございました。

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