うたひめ
「ママ!私お歌うたうのすき!
アイドルのまおちゃんみたいになりたい!」
「頑張れ。ママは応援するよ。」
「ありがとうっ!ママのためにアイドルになる!
そしたら私のコンサート来てね!」
はっ…―――!?
バサッ
「夢か…。」
何で昔の事なんか…。昨日あんなことがあったからか…。
嫌なこと思い出しちゃったなぁ。
何がアイドルよ。なれっこないのに。
「初音!朝だよー!」
わかってるっての…。
「起きてる。」
カンナに会うの…気まずいな…。
「朝ごはんはしっかり食べて体力付けないと、
キレイな歌声が出せないよ。」
「だから歌なんてどうでもいいの
お母さんはしつこいんだよ。いってきます」
「ちょっ…」
バタン…。
「初音~?おはよ」
「…カンナおはよ」
「元気ないね。朝ごはん食べた?」
「…先行く…」
カンナにもあんな態度とっちゃった。
嫌われてもしょうがないよ。
「あ~♪あああ~♪」
これは…誰の歌声?
すごくきれい…。なんだか…体が引き寄せられる…。
私の体は屋上へと向かう。
「あなたは誰!?」
「…おはようございます?」
「…あなたは?」
「あ、上島歌奈です。
1年生です。2年生ですよね?センパイ」
「今のうたは歌奈さんなの?」
「はい!歌うのが昔から好きで…。合唱部に入ってます」
「素敵な歌声だった…。」
今の私の心に響く歌声…。心ふるえる。
「ありがとうございますッ」
「か、歌手になりたいとかある?」
「ありません…。
どうせなろうとしたところで親に反対されるし…。
店は誰が継ぐんだって怒られちゃいますしね。」
「お店やってるの?」
「はい。ひぃおじいちゃんからの代で、
兄弟もいないから、お母さんたちが50になったら
私が継ぐことになっています。
でも歌いたい。歌って居たいって思って…。
学校で歌ってるんです。50になるまでにあと4年。
大学もいけないんです。」
「そ、そうなの…。
私は歌手になりたくて必死に努力して
オーディションも受けてきた。
でも…受かることなんてなくて、
書類審査はとおっても歌の審査で落ちる…。
私には歌の才能がないんだって…。そう思い始めたの」
…初対面の後輩に何言ってんだろう…。
「先輩!歌って!」
「えっ!」
「歌ってください!
歌手になりたい、っていう思いを込めて!」
「……あ…あ~♪
ああああ♪あああああ♪」
なんか声が出る!
私は歌手になりたい!歌うのが大好き!
「今の先輩ならオーディション受かりますよ!
先輩に足りないのは気持ち。
歌に込める気持ち。それが大事ですよ」
…もっかいがんばってみようかな。