芸能事務所
もう歌手なんて…。
どうでもいいの。…どうでも…。
「ねぇ、初音。
お父さんの友人がね、
芸能関係のお仕事しているんだけど…
今度、オーディション受けないかって」
「…だからもういいってば!!」
「本当にそれは初音の気持ちなの?」
…カンナと一緒の事言ってる…。
「どうせ…もう無理なんだもん。」
「一度、芸能事務所行ってみる?
お父さんになんとかお願いしてもらって」
「…。」
――芸能事務所に行くことに――
「うちでは、
アイドル、歌手、女優、俳優、
タレント、芸人、アナウンサーの卵を
3歳から面倒を見ています。
また、合宿なども行っており、
最善を尽くしております。
この事務所に所属するには、
3つの方法があります。
1、スカウトされる。
2、オーディションに合格する。
3、レッスンを積み重ね、昇格し、
この事務所に所属する。
以上の3つでございます。」
はぁ…。なんかすごい。
「ちなみに
稲田初音様は、
歌手希望でございますね。」
「は…はい
そうですけど…。」
「でしたら、
ボイストレーニングや
少しだけダンスレッスン。
そしてメンタルトレーニング
などを行っていただきます」
「…それは大変なんですか。」
「はい…。
女優の桐川ハルカ様も
レッスンを重ね、3年で合格しました」
「…やっぱり、無理です。
私は、向いてないんです。」
「初音!いつまで弱気なの?
やってみないとわからないのよ!」
「そんなのもうきまってんじゃん。」
「うちの初音をお願いします!」
「何、勝手にしてんの!?」
「わかりました。
では、こちらの書類と、
初音様のプロフィールを
お書きしていただきます。
えぇ、嘘厳禁でお願いいたします」
「わかりました。」
――帰宅し…―――
「ねぇ、初音。
ちょっと来て??
ウエスト測らせて」
もう歌手は諦めたのに。
「もう勝手にはかるからね」
勝手にしろって話よ。
「ウエストは…えーと
58?あら?細すぎるんじゃない?」
「そんなことない。」
「そう?」
断食してるなんて言えない…。
お母さんのお弁当捨ててるなんて
絶対に言えない…。