後悔の渦
僕は未だにあの時の様子が頭から離れない。
「美咲スカートめくれてるよ」
「えっ、嘘」
「大丈夫、あたししか見てないから美咲の苺パンツ」
「ちょっと!」
僕の目の前にいたあの2人の会話を思い出しては、それはそれは海のように深く溜息をつく。
あの時、僕は彼女のパンツを見ることは出来なかった。
愛しの美咲ちゃんのパンツを見ることが出来なかった。
苺パンツ。
美咲ちゃんの苺柄のパンツ。
何故僕は彼女達のすぐ後ろにいたにも関わらず見れなかった、いや違う見ていなかったんだろうか。
それ以降はというと2度目のチャンスなどあるわけもなく、どんなにあの時の僕の行動を思い返し悔やんでみても無駄で、今さら美咲ちゃんの苺パンツを見られるわけではない。
でも現在の僕の頭の中には苺パンツしかなくて、もう授業も集中出来ないくらいに美咲ちゃんへの思いが溢れ出ていた。
自分の容姿のレベルは普通、美咲ちゃんとの接点もあまりない。きっと同じ学年の男子生徒A、せいぜいただの鈴木くんと思われているくらいだろう。
どこかのアニメ、ドラマのようにうまくいくわけないし、そこまで僕も馬鹿でもないから期待もしていない。
もちろん、ストーカーみたいな犯罪まがいのことをするつもりもない。
だからこそ僕にとって彼女のパンツを見てしまうということは唯一の希望であり、ロマンだったのだ。
そのチャンスを逃してしまった僕はこの先幸せになれるだろうか。
苺パンツ苺パンツ苺パンツ苺パンツ苺パンツ…
学校が終わり、僕は相変わらず自転車をこぎながら苺パンツのことだけを考えていた、ら。
しまった、赤信号で渡ってしまった。
しかしそれも気づいたころには遅かった。