虫の声

　「おい、スズムシ、お前はゴキブリのような奴だな。触角が長くて色がどす黒い」

　「何だと、コオロギ。お前なんてこげたなすびみたいに真っ黒な上にお腹はぶよぶよ。まるで顔色の悪いミミズじゃないか」

　「まあまあ、けんかはやめなよ。目くそ鼻くそを笑うって言うじゃないか」

　「何だ、キリギリスの分際で偉そうに！お前なんか足だけ大きいバッタのなりそこないだろ」

　秋の夜長、今日もうちの虫かごからは心に届く美しい歌声が響いている。