第2章 第4話 相変わらずの人達②
ずるい、ずるいと連呼するテイちゃんに、はい、はい、と言って頬にキスしてそのまま送り出す私。
テイちゃんは、何か温度差を感じるだのブツブツ文句を言っていたが、
「頑張ってお仕事いってきて。」
の私の言葉ともう一度そっと送るキスに、急に仕事モードの大人の男になった。
その妖しいと紙一重の爛れた色気を全開にダダもれさせて、レイちゃんに抱かれたままの私をレイちゃんごと抱きしめて、レイちゃんにそれはもう氷のような視線に貫かれながらも、露ほども気にせずに、
「行ってくる。」
と私の耳元にそっと囁く。
たった一言なんだけど、その声の甘さと、そのありえないほどの半端ない色気ってば、これぞビフォー・アフターって感じで、やる気モードのテイちゃんはすさまじいくらいだ。
これじゃあテイちゃんに狂って破滅する男や女が腐るほどいるって、嘘じゃないかも。
でもねぇ、テイちゃん、残念だけど、本当に残念なんだけど無理、ごめんねぇ、私には効かないよ、それ。
私はヒラヒラと早くいけとばかりに手を振ると、せっかくの仕事モードがあっさりと崩れ、
「透子ぉ~。」
と情けないヘタレ大型わんこに逆戻りした。
レイちゃんにもさっさといけとばかりに追い払われながら、テイちゃんは、
「頑張って今日も透子のために稼いでくんよ!」と、店の迎えの車に乗り込んでいった。
「うん、貢いでねぇ~。」
と見送った私に、私をだっこしていたレイちゃんの瞳がキランと光った気がしたのは気のせいじゃなかった。
後日、レイちゃんはテイちゃんが私に買うもの、買うもの、同じ品のそれ以上のものを私に買い与えた。
テイちゃんが、頭をかきむしってウォーと唸って落ち込んだのも無理はない。
落ち込むテイちゃんに、ヤサシイ私は、今度レイちゃんごと抱きしめるのは止めるんだよ、って教えてあげた。