第90話 心地良い場所
ここで第1部最終話になります。
第2部は少しだけ時間が飛ぶ予定です。
私のいつも何か足らないと訴える怪物が咆哮をやめた。
それは、まるで自分のオイタを知っているかのように。
それとも王様と人魚姫を呑みこんで、充足して微睡んでいるのだろうか。
あれから数日たった。
あの日帰ってから、私はお風呂にわしゃわしゃと入れられ、ヨウちゃんに半端じゃない強さで体中を洗われた。
そこにみんなが加わり、何だろ?シリアスムードはどこか吹っ飛んでいくくらい、わあわあ騒いで。
ユキちゃんの顔には濃いクマができていて、ガンちゃんたら無精ひげだし。
キョーちゃんたらいつ松葉づえとったの?
そんな感じに私はわあわあ騒ぎながらも、みんなにもゴメンと心の中であやまった。
テイちゃんは・・・別。
だって、テイちゃんたら、テイちゃんたら・・・。
みんなでお風呂場でぎゃあぎゃあして、み~んないろいろな事呑みこんで、それをあえて、お風呂場で騒ぐ事で暗黙の了解で昇華しあって、泣く代わりに笑って笑い合って、みんなとの絆確かめ合っていたのに、あろうことか、この乙女が口にするのもあれな、あの器官をもっこりとさせちゃて・・・・・。
みんなにフルぼっこされたテイちゃんを、これっぽっちも同情なんてしなかったのは言っておこうと思う。
その夜、顔中を腫らしたテイちゃんをいじりつつ、酒飲み会を行った。
私に鎖をかけたいという彼らに、私は特大のおねだりをした。
私以外見ちゃダメ、鎖はバッチコイ!と。
少しでも隙があるのなら、私はまたさまようのだから。
この隙には、王様と人魚姫だけがいい。
だからこの隙を広げさせるな、と。
わがまま、そんなのどうでもいい。
私の飢えはこのままおさまるのだろうか?
隙にいる王様がうっそりと笑い、私に口づける。
チィちゃんがそばに控える気配がする。
そうね、あなたたちがいれば隙は満たされる。
ならば私はこの世界で、この保護者ズにくるまれて今はいよう。
ここはこんなに心地良い。
ヨウちゃんが私をトロリと濡れた目でみる。
ガンちゃんが今にも喰いつきそうに私を見る。
ユキちゃんがまるで迷子になった子供みたいに私を見る。
キョーちゃんが蕩ける瞳で私を見る。
レイちゃんが冷えたその癖熱い瞳で私をみる。
テイちゃんは・・・・うん、早くその顔の腫れ引くよう祈るよ。
私はその男達の視線をこの身に受けて、それがさも当たり前だと笑う。
その私の微笑みを受けて、この極上の男達がなおさらそれをきつくする。
ああ、それでいい。
それこそが自分の望みとばかりに、私の指先に、足先に無数のキスの雨をグラス片手に浴びせてくる男達。
私はゆったりと笑いながら、隙で悔しがる私の王様に流し目を送る。
今宵の月は美しいだろう、と思いながら。