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君のままに美しく  作者: そら
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第8話 戦いの始まり

透子の一日。

 私の毎日は結構ハードだと思うんだ、何だろ、これ?自分でも不思議だ。


 まず朝は日の出前に起きて、寥先生からの朝練をこなし、体がほぐれた所で大好きなジャグジーで汗を流す。


 そして「しゃん!」とした所で、そのまま新しく設置されたエステ室に直行する。


 初めはちゃんとした高級エステサロンにいってたんだけど、そこに通う叔母様方の視線が痛い、痛い。


 そりゃそうよね、子供の分際で高級エステは毎日ないわ、あたしもそう思うもの。


 浮かない顔の私の為に、ならば、とエステを勉強するといったヨウちゃんは「エステを極めた」と豪語するだけあって、その極上のマッサージやお肌や髪のお手入れは決して付け焼刃に見えないほどプロってる。


 毎回1時間ほど丹念に受けるエステは、もう本当に天国だとしか言えないくらいでいつもウトウトしちゃう。


「最高だよ、ヨウちゃん、グッジョブだ、ありがて~」心の中でナンマイダブと手を合わせてみる。


 その後は、だいたい徹夜のままが多いテイちゃんやガンちゃん、キョーちゃんの気怠そうな大人の男、って感じの色気を一身に浴びてついでにいらぬ甘い言葉も受けつつめざめのお茶をいただく。


 運がよければ、いっつも忙しいレイちゃんを見送るなんてオプションがつく時もある。


 本当に二十四時間戦う男だよ、レイちゃんは。誰とは言わないけど「夜の男」を豪語してる君ら、爪の垢を飲み給えね。


 爪の垢その1、テイちゃんは本当にお金の無駄っていうか趣味が、頭が悪いとしかいえない「俺にしか似合わねえ、ゴージャスで俺のオーラー満載の金のアクセサリー」をじゃらじゃらさせて夜の匂いをいつもぷんぷんさせたままだ・・・切り替えのできない馬鹿と呼ぼう。


 爪の垢その2、ガンちゃんは朝早くはボヤンボヤンしてる只のただれた気配の恐いおっさんになっているので、あまり害はなくそこだけは褒めてあげていいかもしれない。



 一部の人間から漂うドドメ色の気配をキッと睨みつけその冷たい視線の後ニンマリと微かに笑い、えっ何する気?と二人と一匹の夜組が自分らなりに姿勢を正すのを視線の片隅で確認し、そのまま彼らを切り捨てると私に優しく微笑みながら何時間もかけて作った「本日のスープ」を私の前に出してくれる。


 私の食べる食事には一切の妥協を許さない「ユキちゃん特製朝食」を食べて、ユキちゃんが病院に出勤するのに合わせてユキちゃんの車で学校まで送ってもらう。


 他のみんなは自分でよそって食べているので、いってきますの挨拶をして、入れ代わりに眠る夜組には「お休みなさい」の挨拶をしてね、その瞬間大型犬がしっぽをふってる図になるけど、どこが夜の帝王?闇の王?。




 登校すれば1学年が短期間で驚くほどの一枚岩の組織を作り上げたものだから、いらん注目が私にふりそそぐ。


 そして、一番重要なのは、ここ。


 私が普通の家庭出身なので、入らぬ火の粉がおもしろいほど飛んでくる、飛んでくる。最初のうちの大騒ぎをホント見せたかったよ。


 それを委員長を中心に、我が黒ユリ会のメンバーがこれでもかというくらい私におかまいなく勝手に返していく。


 本当に只者じゃないよね、黒ユリ会の執行部は。


 その一連の動きをみると、これが今になって準備されたもんじゃないことぐらいわかるってもんよ。


 要は「頭の飾り」を待っていた状態だったわけね。


 私をていのいいお飾りにするつもりだったのかは知らないけれど、残念ながら現在ぼうぼうと燃える火の粉は綺麗に委員長たち黒ユリ執行部に丸投げしてやった。


 私はキョーちゃんじゃないけど遊ばれるつもりは全然ないから、私にケンカを売る先輩方には、庶民の秘儀「ちゃぶ台返し」できっちりと倍返しで答えているし、その私の相手の一番痛い所をつくやり方は「えげつないなあ」と、ガンちゃんからおほめに預かるほどだ。


 ぶっちゃけ成績も悪くないし、運動もお手の物。


 だってこの人たち「まともな運動してるの?」ってレベルで、毎日未だ青あざ作って鍛えてる私の敵じゃない。


 そういう単純なわかりやすい所での事は鵜の目鷹の目の先輩方に、綺麗なルージュを塗った嘴でつっつかれるような隙は絶対つくらない、反対に余裕を持って微笑んでやる。


 そのネチネチ大会では今の所、1年が優勢。それでも黙れないお馬鹿な先輩は、1年の力の結束で別名、親の力とも言うけれどそれで黙らせている。


 そりゃあ親の仕事がらみになれば黙らざるをえないよね、伊達にお嬢様じゃない。


 まっ、私といえばとりあえず直接こない人間のものはスルースキルを絶賛発動してる。


 私の関知しない所で動くそれらを、レイちゃんが緻密に作成してくれた「各学年の権力相関図」更に「学校全体の権力相関図」をみながら、「なるほどなあ、こうくるのか、結構お嬢様もえぐいよね」って感じで寝る前に確認して、つぶれた先輩方の名前にバッツケをつけるのも今の私の密かな楽しみの一つになっている。


 リアルパワーゲームだもの、斜め横から見る分にはすごい面白いよね。


 そしてそのパワーゲームが大きく行われはじめた私の通う高校が、いわゆる上流社会でも注目を浴びつつあるのをレイちゃんから教えてもらった。


 注目を浴びる理由が、黒ユリ会にあまりに執拗に攻撃をかけた幾人かのお姉さま方の親の会社があっという間に業績が悪化し綺麗につぶされたのも原因かもしれない。


 犯人は聞かないし考えない、大事だよここ。


 詳しく話してないのにどこで私の高校の情報を得ているのか不思議だけど。


 私に懲りずに突っかかる人が一人、二人と消えていくんだもの私だって「あれっ?あれれ」って気が付いた。


 それを興味深々でみている周りが気が付かないわけないもの。


 私的には面倒な人が学園から去ってくれて楽ちんだし、実際彼女やその会社がどうなろうと知ったことじゃないからそれはそれは綺麗に笑って知らないふりをしてる。


 一般家庭の私に何もできるはずがないから、私をかつぎあげた黒ユリ会メンバーたちがそれはそれは恐れられはじめている。


 ふふっ、いい気味よね、これで仲間同士、疑心暗鬼でつぶれてくれてもいいわぁ、おもしろいかも。


 現在我が黒ユリ会の特に執行部の人間は見せものパンダ状態。


 こんな感じで学校では前代未聞のパワーゲームがぼうぼうと燃え上がっている。


 失敗すれば、自分も親もパー、凄いゲームだよね。


 今はそれに黙ってられぬとばかりに、学園の安寧を揺さぶるとは何事かとカメリアメンバーズの動きも活発になってきた。


 実際現状ではわずか入学して数か月で、黒ユリ会の勢いが凄い事になっているから微妙なバランスでカメリアとの対峙の姿勢はどう転んでいくのかは私にもわからない。


 夜組が仕事にいく前なんて、最近みんなでノリノリでこのVSカメリアメンバーズとのシュミレーションで一緒に遊ぶようになった。


 彼らの言ってくることは相変わらず物騒だけど「本気でまさかちょっかいかける気じゃあないよね、遊びだよね、これっ!」って何度もひきつり笑いしながら疑いの眼差しを向ける私に、一番ノリノリで攻撃をしかけるのは何と以外にもレイちゃんだったりする。


 今我が家ではパソコンを使った手作りの本格的シュミレーションゲームが、それも実名いりのね、これ大事!が、はやっている。




 私がそんな状況の学校から帰ると、まずレイちゃんからの宿題がたんまりある。


 華道、香道、日舞と日替わりでこなし、それらに加え毎日例によって歩き方やら何やらも先生がきて厳しいチェックが入る。


 そして、待ち構えてる寥先生との護身訓練。


 そこに時々、絶対いらない例のおバカさんたち推奨の実戦訓練も混じる。


 汗を一度流してから学校の予習、復習もこれも毎日やってる、女の見栄は凄いってことね。


 そして、いる人間だけで一緒に夕食を取るのが九時くらい。


 ちょっと皆で軽く遊んで、夜組のガンちゃんたちの見送りをする。


 やっとゆっくりお風呂につかり、寝る前のエステの時間が私の1番の楽しみ。


 この合間合間に、構え構えと騒ぐみんなの相手もそれぞれ入ってくるんだよ、えらくね私。


 そりゃあ、夜寝る前のエステ中にいつのまにかいつも寝ちゃうわけよ、私は悪くないよね。





 今はまだはじまったばかりの学園のパワーゲームを茶番として楽しみはじめたって所かな。


 おもしろい遊び場所だって喜ぶ私を、特にレイちゃんがいろいろ資料という名の各人の弱みや、その会社の弱みを嬉々として差し出すのはずるかな?どうなんだろう?


 レイちゃん、本気でカメリアメンバーズ潰す気かしら?レイちゃんが怒らせたら1番怖いかもって最近思うの。


「まだどうなるかわからないのに」って私があきれて言ったら、「透子の前にある邪魔なものはきちっと潰すのは俺たちの仕事だ、当たり前だろ」とガンちゃんが、こわ~い目をしてひどく冷たい笑顔で言った。


 こんな感じで私の一日は過ぎていく。









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